3話
⋯⋯分からないよ。
分からないから、ありのままの自分でいたのに。
やっぱり私も、レイドみたいに猫をかぶるべきだったのかなあ。
みんなが言うことに、とりあえず同意して、上辺だけの相づちを打っとくべきだったのかなあ?
「⋯⋯どうすれば、私は好きになってもらえたんだろう」
本能か、ツタが私に向かってくる。
「うざい」
私が殺気をこめてつぶやくと、ツタはおびえるようにプルプルと細かく振動し、ピュッと私から離れた。
私が前に視線を戻すと、気のせいか、一面のツタが、私をうかがっているように見える。
しかも、妙に固く感じた地面にツタはなく、私が地面を踏む直前に、左右にサッと分かれていた。
⋯⋯なんだこれ。
なんで私をさけるように動くんだろ?
植物や動物は、魔力を糧に行動しているものが多いらしく、魔力には人間よりも敏感なんだそうだ。
知能が低かろうと、少ししか魔力を練れなかろうと,本能的に自分より強い生物はさける。
だから、植物や動物の様子がおかしければ、それは、近くに強い生物がいるか、自分のほうが強いか。
例外がなければ、基本この二つにしぼられる。
そのとおりなら⋯⋯このツタより私のほうが強い?
この森は魔の森って呼ばれてて、この世界に存在する場所の中でも、二番目に危険な動植物が住んでるって、師匠が言ってたから、このツタもそれなりに強いんだろうけど⋯⋯。
でも、師匠の弟子の中で最弱に近い私が?
ゴブリンにすら命をとられそうになった私が?
⋯⋯ないない。
荒ぶっていた気持ちが少し落ちつき、私は近くの木によじ登って、枝に腰かける。
もしかしたら追いかけてきてるかも⋯⋯なんて、愚かな思考があるせいで、見つかりやすい木の根本なんかじゃ、休めない。
なんてわがままで自分勝手なんだろう。
あきれて自嘲の笑みを浮かべ、トンと木の幹にもたれかかって、目を閉じる。
ひんやりと澄んだ風が、頬をなでた。
しんと透明な空間に、軽やかな小鳥のさえずりが細く響く。
なんか⋯⋯このまま私も溶けていきそうだ。
それもいいかもしれない。
どうせ私の居場所なんてないんだから。
どこか現実離れしたような、幻想的な感覚に襲われるようにして、私は意識を手放した。
今回は文字数が少なめなので、本日22時に4話を投稿します!