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プロローグ
――いないほうがよかった、と思われてもいいの。
師匠はそう言って、私の虚無の目に映った。
――だって、私たちはここにいるんだもの。いなければ、なんて、たらればの話、したってどうにもならないわ。
師匠が私の体を優しく包みこむ。
長い金色の髪が、私の鼻先をかすめた。
――だからね、貴方には、いてくれてよかったって、好きになってもらえる子になってほしいの。
体を離してさし出された手に、何も感じなかったはずの心が、ふわりと温かくなった気がした。
――私と一緒にきてくれないかしら。
一緒。
たったその一言が、色のなかった世界を鮮やかに照らす。
私に、手をとらない選択肢なんてありえなかった。
今回は文字数が少なめなので、本日22時より、1話を公開します!
よければぜひ!