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出会い

フレイは町の中心部に位置する小さな図書館に入った。

「っと、飛行船か船の本ねえかなぁ。そんな簡単に見つかる訳、、、あるじゃねぇか!」


目線の先には5冊の飛行船に関する本が並んでいた。

『飛行船の起源と発祥』

『簡単!飛行船プラモデル』

『飛行船の動力の謎』

『悪魔が乗った飛行船』

『飛行船の構造』


「悪魔が乗った飛行船?なんだよこれ、おっちゃんが話してた悪魔か?まあどっちでもいい!これとこれを見ながら材料集めでもすっか。」


『飛行船の動力の謎』 

『飛行船の構造』

この2冊を手に取り、貸し出しカウンターまで足を運ぶ。


ドサッ


途中背後から音がした。

金髪の少年が本を落とした音だった。


「お前大丈夫か?ほらよ、ぼーっとすんなよ」


『悪魔が乗った飛行船』


「お前これ借りんのか?俺も興味あるから早く読めよ!」


フレイは何事も起こらなかったかの様に貸し出しカウンターまで向かう。しかしローブを被った男に警戒心を抱かない人は、余程の馬鹿かお人好しだろう。

図書館司書ももれなくローブの男に警戒心を抱いていた。


「ここで借りれんだよな」


「は、はい。身分証などはお持ちですか?」


「身分証?そんなの持ってね、、」


「彼は私の友人ですよ。」

金髪の少年が声を遮った。少し長い髪を後ろで束ねているが、後れ毛が揺れる瞬間、花の香りを放った。


「ディ、ディオラ様いらしていたのですね。この方がご友人、、でしょうか?」


「ええ。古い友人です。旅人故、身分証を紛失したのでしょう。私がまとめて借りましょう。」


「は、はい。ですが、これ等の本は元々ディオラ様の、、」


「今は皆の物です。正式に手続きをして借りましょう。」


「かしこまりました。」


ディオラと呼ばれる男は3冊の本を持ち、フレイと共に図書館を後にした。


「ディオラさまやらよ、助かったぜ。その本、俺が借りて良いんだよな?」


「……」


「おい、聞いてんのか?さっきから疲れてんのか?」


「あ、ああ。大丈夫ですよ。ところで、貴方、飛行船に興味がおありで?」


「まあ、興味っていうか、必要なんだよ」


「でしたら、私の家に招待しますよ。貴方に必要な知識の手助けができるかもしれません。」


「いいのか?」


「ええ、もちろんです。着いてきて下さい。」


ディオラは図書館から5分程歩くと見える邸宅まで歩いた。門番はいないが堂々たる佇まいの立派な門。門から5から10メートル程進んだ先の玄関扉を大きく開き、中では20前後の女性が待っていた。


「お帰りなさいませ、ディオラ様。」


「ハナ、客人を3号室にお連れしなさい。」


「かしこまりました。」


使用人と会話を終えると、振り返りフレイに対して使用人についていく様伝えた。終始笑顔を崩さないディオラは富豪として当然の事なのだろうか。


「お客人様、こちらへ」


案内されるがままに、廊下を進む。


「なあ、ディオラさまとやらは何処に行ったんだ?」


「ディオラ様は身なりを整えに自室にお戻りになりました。」


「なんか、すげぇな。」


「到着致しました。こちらの御部屋でお待ち下さい。」


「おう!ありがとな!」


案内された部屋の家具は椅子と机だけ。外観からは感じられない質素な作りに多少の違和感はあるが、気にする程でもない。


カチッ


ドアが閉まる音というよりは、鍵が閉まる音がした。


シュウーー


「なんだ、これ。ガス……か………?」


(やばい…意識が…………耐えろ…扉まで………)


ガチャガチャガチャ

ドンドンドン


(力が………入らね………トレトン…すま…ない……)


解氷の歌(グレジール)


扉が焼ける音がする。力を振り絞って掌に込めた熱は扉の一部を燃やす。できた隙間から、ガスは抜けていくが、もう遅かった。








(何か……聞こ…え…る………)


「ハッ!!!!

おい!!!!ディオラか!!!」


「ええ。ディオラです。お早いお目覚めで。少しばかり金属具で拘束してはおりますが、お気になさらずに、僕と少しお話しましょうか。」


「良いですよね?フレイ・ディナイパーさん」


「てめぇ、俺を知ってて連れてきたんだな!施設に戻そうとしても無駄だぜ!!!力尽くでここから逃げる!」


解氷の音(グレジール)


拘束具付近に熱を溜めようとする。


その瞬間、


ドンッ!


腹を殴られる感覚。


「ディオラ様がお話をなさるのです。黙りなさい。静かに聞きなさい。」


「ん…だよ……お前」


フレイに笑みを送る。


「ええ、ええ。貴方はお強いですね。力尽くで逃げて頂いても構いません。ただ私の話を聞いた後にしませんか?」


「お前誰だよ、、」


「私はディオラ・ロム・スクワート。スクワート家の庶子です。」


「ショシ?」


「はい。庶子です。貴方と同じミックスです。」


「ミックス?」


「はい。」


「訳わかんねぇよ、何なんだよ、ショシでミックスで結局誰なんだよ!」


「庶子というのは私はスクワート家の正式な跡継ぎにはなれないという意味です。ミックスについてもご存知無いのですか?フレイ君の様な人の事ですよ。つまり、特殊な力を使える者という事です。」


「待てよ、力を使える奴はミクサーズに収容されるんじゃねぇのかよ」


「私は例外です。何せ貴族の血を引き継いでいますから。20年前の事件についてはご存知で?」


「それは知ってんぜ」


「あの事件は、世間では科学兵器を使った集団殺人事件とされている。しかし実際ののところ、君と私の様な力を持った者の犯行だと考えている。そしてその力を持った者の子供がミックスという事だと考えている。」


「それじゃあ、俺達の親は殺人犯だって言うのかよ!」


「それは無い。そんなはずは…ない……幼少期の時の記憶が微かにある。私の母親はそんな人では無かった…今は何処かに幽閉されているのか、既に殺されているのか、検討も付かない…だが、人を殺す様な人では無いことは覚えている!!」


ディオラは焦りを露わにしたが、また笑顔を作って感情を押し殺した。


「すみません、取り乱しました。おそらく、政府は何かを隠しているのでは無いか、というのが私の見解です。私は貴族の血が入った当事者として、ミクサーズの監視のために中央都市から離れたこの地に送られました。中央には私達ミックスに悟られてはいけない何かでもあるのでしょう」


「お前はそれを探ろうとしているのか?」


「いいえ、自分勝手ですが、私はミックスでありながら唯一ミクサーズに送られなかった存在です。ここで任務を全うしながらハナと穏やかに暮らします。ということで、フレイ・ディナイパーさん、明日の正午、君にはミクサーズにお戻り頂きます。」


「ハァ結局捕まえるんじゃねぇか」


「おや?また騒ぎ出すのでは無いかと思っていました。」


「別に、お前にも譲れない物があるってだけだろ。それの踏み台になるのは構わねぇ。だがな、俺にも野望がある。これぐらいで覚悟を捨てるほど俺の野望は柔じゃねぇ。悪いが、俺は明日の朝、ここを去る。」


「去る?何か方法が?」


「いいや、ない。でも決めたからにはぜってぇ逃げてやるぜ!催涙ガスでも何でも使って俺を引き留めて見ろよ!そして、もう一つ。俺はミクサーズを破壊する。そのから逃げるかはあいつらの判断に委ねるが、選択が出来ねぇ世の中では後悔すらさせてくれねぇ。これでお前が犠牲になる事は申し訳ねぇと思ってる。すまない」


フレイの謝罪の瞬間、ディオラは声を上げて笑った。


「ハハハハハ!こんなに己の野望に自信を持つ奴を見るのは久しぶりだ!!!いいだろう!協力しますよ!」


「それでお前が責任を取ることにならないのか?」


「おそらく大丈夫でしょう。私の父がスクワート家として何とかしてくれるでしょう。自惚れかもしれないが、父は私を想ってくれている。それよりも私は、貴方の野望の一端を見てみたいと思ってしまった。」


「いや、断る。」


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