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10歳の記憶

「ハァ、、20周目、、、ハァ、ハァ」

まだ日が登る前の早朝。辺りに人はいない。1周100メートル程の小さな練習場で、彼は毎日、己の願望を叶える準備をしていた。


 その日も「そこ」では授業が行われていた。各国から、特殊な力を持つ子供達が集められた隔離施設『ミクサーズ』

子供達は、「従順であること。」「己の将来に誇りを持つこと。」を求められ、日々の生活を営んでいた。


「ミズコナー、我々は将来、対宇宙戦闘員『ファイター』としてエイリアンが侵入した無法地帯での戦闘、及び宇宙調査に向かいます。そのために実技授業における実践練習もすべきだと僕は考えます。」

「ミスタートレトン、君達の年ではまだ早い。基礎があって実践が役にたつのです。だが君の使命に対する姿勢は素晴らしい。」

「………分かりました。ミズコナー。」



座学の授業が終了すると同時にトレトンの元に彼がやってきた。

「さっきの言葉、俺もそう思う!お前が実践をしてぇなら俺が相手になってやる。朝、日が登る前に練習場だ。お前は確か、、、トレトンだったな。待ってるぜ!トレトン!!」


「待ってくれ。フレイ君。自主練習は禁止されているのを知らないのか!」


「トレトン、来いよ!」


「おいっ!!!フレイ君!!!」


まだ日が登る前の早朝。辺りに人は、、、彼に向かって走ってくる1人だけ。

「おお!来たか、トレトン!実践経験は?」


「あるわけないだろ。授業で実践はしないし、自主練習は禁止されている。フレイ君、分かっているのか?」


「お前、頭良さそうなのに、頭悪いな。強くなるために、実践は必要なんだよ。行くぞっ、トレトン!」


刹那、トレトンの腹に赤く光る拳が突き付けられる。その拳は衣類を燃やし、トレトンは腹に振れる寸前、大きく後方に下がり、大火傷を回避した。


「おい、フレイ!!殺す気か!!!!確かお前は、『炎度(アブノーマルハイ)』の所持者だよな。俺はお前のせいで死ぬ所だった!!!」


「ぶはは!お前なら避けられると踏んでたんだ!良かったな!死ななくて!!本気で来い!!!」


トレトンはフレイの背後に周り、サイドから首元を狙う。防がれたが、本命の左脚を取る。フレイはぐらついた体制を立て直す。


対戦時間およそ2時間。互いに体力が尽きるまで互角に戦った。息が上がり脚も震えるが、互いの胸の高鳴りだけは治らない。フレイの短い黒髪と、トレトンの長い黒髪が日の光で茶色く染まってきた頃の話である。


「お前、やっぱ強いな。俺の思考を読まれているみたいな攻撃だったぜ!」


「ああ。思考加速でフレイ君の動きを観察して、予測したんだ。そうじゃないと、僕が君の炎に殺されてしまうからね。」


「ぶはははは!生きて良かったな!」


「フレイ君、さっきから笑い事じゃないからな!!」



「俺はここを出てファイターになる」



「フレイ君、今、、なんて??」


「だから、俺はここを出たいんだよ!この施設は信用やらねえだろ!」


「……………」


「フレイ君、場所を変えよう。君になら話しても良いのかもしれない。」


2人はトレトンの部屋に向かった。後ろから何者かが聞き耳を立てている事にも気付かずに。


「フレイ君が言っていた話、僕も同意するよ。ここはどうも信用ならない。実技の授業は少なく実践もない。飛び抜けて強い生徒は休暇も取らされる。まるで僕たちを強くさせたくないみたいに。極め付けにだ。この前、寮の管理室に生徒当ての手紙が何枚も送られているのを確認したんだ。僕宛ての手紙もあった。運良く手に入れて、その場を離れて、後日他の生徒に確認しても、手紙をもらった人は誰もいなかったんだ。」


「それで、何が書いてあったんだ?」


「特に特別な事は書いてなかったよ。おそらく僕の親からだと思う。僕に親がいたことも知らなかったが、こうして施設が外部からの交流を経っていたんだ。」


「だから僕もここを出たい。ここを出て、手紙を送ってくれた誰かに会いに行きたい。」

「フレイ君、僕とこの施設の外を、未知を、見に行かないか?」


フレイは良く言ったと言わんばかりの笑顔を放った。


「おう!見に行こうぜ!!」




 いつも通り、座学の授業が始まると思ったその少し前。

「おい!みんな聞いてくれ!!フレイとトレトンが自主練してたんだよ!それで俺聞いたんだ!フレイの奴、ここを出てファイターになるんだってよ!!ファイターになれるかも分かんねえ炎度なのによお!」



「「「ワハハハハ」」」一斉に笑いが起きる。

「フレイ、やめとけ!お前の火力じゃ話にならねえ!」


(確かにフレイ君の火力は弱い。しかし、他の人とは温度が桁違いだ。僕の腹に触れる前に服が燃えたんだ。それに身体能力も僕と互角。フレイ君も今まで手を抜いていたのか?)


隣で聞いていた教員のミズコナーが呆れたように口を開く。

「ミスターフレイ、ミスタートレトン、自主練習をした事、外に出てファイターになると発言した事は真実ですか?」 


「…………チッ」


「ミズコナー、僕から真実を話します。将来のために実践練習が必要だと思い、僕からミスターフレイを実践練習に誘いました。その後、ミスターフレイは「宇宙に出てファイターになる」という言葉を、文脈から「外に出て」と発言しただけです。禁止事項を犯したのは僕がミスターフレイを誘ったためです。罰はどうか僕に与えてください。」


「ミスタートレイン、君の意欲は素晴らしい。しかし、規則は君達の為にあるのです。破る事は許されません。よって、ミスタートレトンを1ヶ月、ミスターフレイを2週間、外出禁止とします。」


「ご配慮ありがとうございます。ミズコナー。」



トレトンの外出禁止が開けた日、フレイは真っ先にトレトンの居場所に向かった。


「トレトン、ありがとよ。かばってくれたこと。」

「そんな事より、フレイ君が僕を殺そうとした事への謝罪はないのかい?」

「ない!!お前を信頼してやった事だ!!!」

「はぁ、君は全く調子が良いよ、、」

「ありがとな!」

「褒めてない!!」


この日より、隔離施設『ミクサーズ』からの逃走計画を練るとと共に、互いの戦闘能力を高め合う日々が続いた。


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