セミと人と太陽
・・・わたしは見ることしかできなかった。
・・ここはどこだろうか。
暗い、暗闇に落ちていく。
瞼を感じないほどに暗い。
外の明かりが届かないここは。
背中に感じる違和感で私は私の輪郭をとらえた。
浮かび上がる理想の私。
未来に突き進む偶像。
私が私と望むその形は徐々に形を崩した。
雨上がりの干上がった水溜に残るアメンボのような。
空からみたそれはいびつだった。
やがて闇が私を隠したとき私は光を感じた。
光を目指した私は天を知った。
私はようやく感じた。
ふかく深く沈んでいく私は同時に光を知覚していたのだ。
私はその時ようやく私のすべてを知った。
目をそらした私に、彼は的確に私をとらえた。
深まる暗闇と光。
東に進む旅人はいつ暗闇に追いつくのだろうか