第3話 邂逅 その2
設定上の学校制度などについてです。興味のない方は読み飛ばしていただいてかまいません。
首都ハマーショルドは王国の発展と共にその規模を拡大し続けている。ゆるやかな丘の頂点に、王とその家族らが住む巨大な城とそれと対比するように清楚な造りの神殿があり、その周りを貴族たちの広大な屋敷や庭園が囲む。そのさらに外側には広がり続ける市街地があった。
北側に一番古い城壁に囲まれた旧市街があり、その外には徐々に拡大していった庶民の住まいや商店街が整然と並び、別の区画には様々な職種の作業場があった。サーヴ王の時代、それまで無秩序に広がっていた街並みも統一され、それは今も踏襲されているため、美しい絵のような風景が広がっている。
首都の東南側は海に接している。もともと天然の良港があったため、古くから舟を操っての漁業や他の国との交易が盛んだった。特に国力が安定した後は港の整備が進んで大きな船が入るようになったので、他の大陸との貿易が発展し、国の経済を大きく支えている。船は様々なものを運んできた。外国の珍しい産物や動植物、知らない言葉を話す人々、国々の情報など、これらが運ばれる先には王宮があった。
ガイヤードは国力を上げるためにも特に子供たちへの教育に力を入れている。まず筆頭に挙げられるのは国で唯一「学園」と名付けられた主に貴族の子弟を対象とした学び舎である。その他規模が多少小さくなる「学校」が多数、国のあちらこちらに点在しており、こちらは中流階級の庶民のためのものだった。
「私塾」は学校に通うほどの時間がとれない子供たちや、忙しさや貧しさから学習の機会を失っていた大人たちが通う学び舎である。国からの補助もあるため、塾料は些少で余裕のない者でも通いやすい。すなわち豊かな者、家柄のいい者はあまり通わないということでもある。だが生活のために必要な読み書きの他、それぞれの塾で特徴のある教えがあるのでこちらを選ぶ親もいるのだった。
貴族たちの子弟は家庭教師につくか学園に学び、17~18歳で卒業する。貴族家の嫡男は卒業後そのまま家督を継ぐための教育を受けるのがほとんどである。また軍部の管轄する士官学校で学び続けるという選択肢もあり、そもそもの貴族の役割を色濃く残す家庭ではその道に進み武官や騎士となる者も多い。その他の者は適性により院で学んで国や地方の政治を支える文官となる。
貴族令嬢たちの教育は古くは各々の家庭で行われるものであったが、時代の流れと共にほとんどの令嬢が学園で学ぶようになっていた。女性ということだけで進む道は限られることが多いが、それを変えようとする動きがあるのも確かだった。
国の方針で学園は貴族だけでなく平民にもその門戸を開いている。優秀な者には奨学金が支給される制度もあり、学生である間は身分や環境に左右されず平等であれというのが、学長以下教師たちの教えであった。




