表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

1


有澤裕也、28歳 独身

突然だが、俺の話を聞いてほしい。


--今見ている配信のVTuber、

  俺の妹かもしれん。



◎◎◎


テレワークが主流となったこの時代。

俺の会社は社員の八割がテレワークとなっていて、ほとんど出社することがない。

かという俺もテレワーク組で、最後に出社したのは一ヶ月ほど前だ。どうしても対面で打合わせしたいという先方の為に出社した。

テレワークの良いところ?

嫌な上司と顔を合わせなくていい、通勤しなくていいから、ギリギリまで寝てられるー、とまあこんなもんだろうか。


でも、悪いところだってある。

それこそ俺みたいな独身一人暮らしは、人と関わる機会が減ったのではないか。

会社帰りに同僚と飲みに行っていた過去がとても懐かしく感じる。あそこで愚痴を言い合う時間が、一日の中で地味に一番楽しかったのだと、今では思う。


正直、俺と同じような環境のやつは多いと思う。そいつらは同僚との飲みや、通勤にあててた時間を今どうやって使っているのか。少し気になるところだ。

意識高い系の奴らはオンライン英会話とかしてるんだろうな、尊敬する。

俺?俺は意識低い系なので、もっぱらネットサーフィンだ。しかし、誰にも会わず、かといって知識を身に付けているわけでもない、なんとなく過ごしているだけで一週間が終わってしまっている事を考えると、少しもったいない気もしてくる。かといって、行動を起こすかは別問題だ。まあ気がむいたらスポーツジムでも検討してみるよ。


ちなみに、友人は付き合いの長い恋人とこれを機に同棲を始めたらしい。まあ良いタイミングだとは思う。そういう話を聞くと俺もそろそろ彼女が欲しいとは思うのだが、いかんせん出会いがない。

自分で言うのもなんだが、別にTHEモテない男って感じではないと思う。初めて彼女ができたのは高校生の頃だし、社会人になってからも何人かと付き合った。ああ、全て俺が振られて終わっている事実には触れないでくれ。


でも、出社することもほぼなくなり、平日はスーパーと自宅の往復のみ。休日も、以前は合コンに誘ってくるやつもいたが、まあ今はいろいろあるからそういう誘いもないわけだ。かといってわざわざ街コンやら婚活パーティーに行くというのもなんだか違う気がする。そういうガツガツしたのは少し苦手だ。


とまあ、そんなこんなで今日も就業後はネットサーフィンだ。

スーパーで買った安い惣菜とビールをお供に、動画サイトを徘徊する。


アイドルの動画だったり、ゲーム実況だったり、ここ数年で動画のジャンルと本数はかなり増えたように感じる。


特にVTuberというジャンル。簡単に言うと、アバターをつかって活動をしている人たちの事だ。

特別興味があるわけではないが、TOPにあがってくることも多いから目につくことも多い。今日もランキング上位にはいくつかVTuberの動画がランクインしていた。


「あ、このVTuberめっちゃかわいい」


TOPに表示されたサムネイルにうつる、猫目で、ピンク色の髪をツインテールにしたアバターを見て、思わず呟いた。

名前は桃奈咲良。今ちょうど生配信をしていて、タイトルをみる限り初配信らしい。

いつもであればVTuberの動画をみることはほとんどないが、たまたま目についたのと、純粋にVTuberの初配信というものが少し気になった。

別に視聴自体は無料だ。つまらなかったら他のものにかえればいい。

俺はサムネイルをクリックし、動画を再生した。


開いた動画は初配信というのに、コメントがかなり賑わっていた。期待の新人VTuber!とたくさんのコメントがついているのをみて、良い配信に出会えたかもと少し嬉しくなった。彼女が有名になったとき、一部界隈にしか効果はないが、初配信を視聴したと自慢できるだろう。まだ配信を開いただけなのに、少し彼女の事を応援したくなった。


「えーっと、今日ははじめての配信なのに、たくさんの方がきてくれて本当に嬉しいですっ!ありがとうございます!」


アバターがぴょんぴょんと動くのにあわせ、女の子特有の可愛らしい声が聞こえてくる。そう、特別特徴があるわけでもない、可愛らしい女の子の声。だが、俺はなぜかその声に懐かしさを感じた。


俺がこの桃奈咲良というVTuberに出会ったのはつい先ほど。そして、桃奈咲良の配信も、これがはじめて。


-ああ。でも、他名義で活動してた子って可能性もあるよな。それをたまたま俺が見たことあった、とか。配信も手慣れている感じがするしきっとそうなのであろう。


…それにしても、懐かしいのだが、すごく聞き覚えのある声だ。俺は必死で声の主を考えた。そして、すぐに一つの結論にたどり着いた。


…この声、妹だわ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ