オムライス
すっと顔を上げる里帆をみて、僕は慌てて目線を落とす。オムライスはもう4分の1程度しか残っていないのに、まだ目を合わせることができない。食べ終われば何をしようか、外はもう暗くなっているから高校生には散歩がちょうど良いのだろうか。どのくらいの距離を、どのくらいの距離感で歩こうか。わからないことが僕の頭を不安でいっぱいにしていく。いっそのこと全てを聞いてしまおうと顔を上げたところで、いつの間にか体をのけぞらせ、手でお腹をさすりながら
「お腹いっぱい」
と、柄にもないことを呟いていた。どうすることもできない僕は、高校生は割り勘でも良い、つぎ会う予定を決めるのは別れ際、告白は3回目のデートが良いから2回目では早いと、確実な情報にふれていくことで心を落ち着かせた。
「好きです」
4回目のデートになってやっと出たその言葉に、彼女はうんと頷いて顔をあげた。この人は楽しんでいるのだろうか、会い続けることはできるのだろうか、抱き続けるであろうたくさんの不安たちを、これからは今のように、彼女の透き通った目が何度でも消してくれる。