6話 終わりの9人③
長い説明パートになりますが、お付き合い下さいませ。
「苦しい……」
「助けて……」
「どうして置いてったの……」
暗闇の中、声が聞こえる……
声のする方へ顔を向けると、暗闇の中クラウンが五人の子供達の生首を持ってケタケタと嗤っていた……
「うわぁッッッ!!!」
恐怖と驚きで飛び起きたソラは汗をビッショリかいてベットの上にいた。どうやら部屋へ着くや否や倒れ込むように眠ってしまったらしい……
「……ソラ?……大丈夫?」
声が聞こえた方を見ると、そこにはダイチが座りながら心配そうな顔でこちらを見ていた。
「…………ダイチ。」
少し安心した声で呟くが声は少し震えていて、目からは涙が流れていた。その様子を見て、ダイチはソラをそっと抱き締めながら優しく声をかける。
「嫌な夢、見ちゃったんだよね……。僕も同じだよ。怖い夢見て不安になっちゃったからソラの部屋に来たんだ……。心配だね、怖かったね、悲しいね……。」
自分を抱き締めたその手も震えていて、声を押し殺して泣くダイチを見てソラは声を出して泣いた…
陽が沈みかけ空が赤く染まった頃にスーザンに呼ばれ、四人はクロノスの部屋へと向かった。
四人はクロノスに促され部屋のソファに腰かける。腰かけた四人は部屋の中にいるクロノスとゼクサス以外に二人……知らない人がいる事に少し緊張した。
クロノスはロッキングチェアの様な椅子に座ると、ハッとした様子で口を開いた……
「おぉ……すまんかったね!彼らはラックとガラハド、ゼクサスと同じこの国の聖騎士じゃよ……あと三人いるんじゃが少しばかり忙しそうでのぅ……。」
ラックと呼ばれた少し軽そうな雰囲気の男はニコニコしながら軽く挨拶をした……
ガラハドと呼ばれた体格の良い男は大きな声で仰々しく挨拶をする。ゼクサスはというと、両腕を組んで壁にもたれ掛かりなが素知らぬ顔で目を瞑っていた。
「まぁの……彼らを呼んだのは、彼ら含め六人の聖騎士も君達のおかれた事情をよく知っており、今後深く関係してくるからじゃ!」
これから語られる……
9人の子供達の“宿命”と……
その先が幸せとは限らない、自分達の命の重さを……
椅子を少し揺らしながらクロノスは静かに口を開く……
「まずは、ルーインの役目じゃったの……しかしながらそこを語るには順序というものがある。シエン君、すまんが一番始めから話してもよいかね?」
少し考えたあと深く頷く。ありがとう……。そう言うとクロノスは再びゆっくりと語り始めた。
「この世界には主だって、9つの大きく栄え、強い武力を持った国があったんじゃ………長い年月、国同士での争いは絶えんかった。とにかく戦争の多い世界でのぅ……
争いが起こる度に多くの生物が死に、大地は荒れ、自然が壊された。この世界には秩序を守る存在がおっての……
“13体の神龍”と呼ばれ、世界を構成する13の属性を司る神龍達……
基本的にはワシ等の様な生物の争い事に関与する事はなかった……。
そもそもその存在自体が神話とされており、その姿を目にした者はおらんかったからの……
20年程前の話じゃ……。とある一番の武力と権力を持つ国が、戦争の際に多くの命……自然や大地を破壊した。
それはとても悲惨なものじゃった……。それによって消滅した精霊、拠り所を失った神獣も少なくはなかった。
その最中じゃ、神話とされておった“13体の神龍”が姿を現しその国を焼き付くした。
神龍達は残った八つの国の王達を呼び集め、こう告げた……
『生物間の争いには興味はない……
自然を侵す存在を我らは許さぬ……
争いが続く限り貴殿らは秩序を乱すだろう……
新しく産まれる八つの国の子を差し出せ……
全てをやり直す機会を与えてやろう……』と。
偶然と言うのか、必然と言うのか、はたまた運命なのか
その時八つの国の王妃達は赤子を宿しておった……それがお前さん達じゃ。
神龍達は、力に溺れ、決して道を外さぬ心を持った三名の者を選び“管理者”とさせた……その内の二人が、ワシとルーインじゃ。
三人の管理者は強い力を与えられた……。力を与えると、神龍達は姿を消した。
ワシら三人は話し合った……
子供達を邪魔の入らぬ場所で育て、その歳が二十になった時に八つの国に返し王とさせようと……
一つの絆で結ばれた王達に国を治めてもらおうと。それまでの世話役がルーインじゃった。
ルーインの力で空間を隔離し結界を張った。外側からは決して干渉する事のできない、完全隔離結界を……。
ワシともう一人は子供らが育つまでの間、国同士の均衡が崩れぬよう立ち回った……。ある時、国の均衡を守るもう一人の管理者と連絡がとれなくなった……
少ししてから、また戦争が起こる様になった……
戦争が起きても神龍が現れる事はなく、次第にその争いの規模は大きくなっていった。
争いが起こる所には、必ず七人の“大罪”と名乗る存在が関与しておった……
七人の“大罪”達に、もう一人の管理者ケイオスか関係しておる事に気付いた時には……もう遅かった。
何故か与えられた筈の力以上の禍々しさをケイオスは宿しておった……強くなりすぎた力に心を飲み込まれてしまったんじゃろうか……。
管理者を放棄し混沌を望んだケイオスは、唯一の驚異となるであろうワシとルーインの命……。
そして神龍達から“龍の加護”を受けているお前さん達の命を狙った。
しかし、ワシの力では奴を止める事は出来なかった……
暫くして、どうやったのかは分からんが隔離していた空間をケイオス特定し、長い時間をかけて侵食を始めた……
ルーインは命を燃やし続け守っておったが………それも今日までとなった。
ルーインの命の灯火が消えた瞬間、お前さん達を保護しに行くつもりじゃったが、“大罪”達の邪魔が入り少し遅くなってしまった……
15年前……八人の王達は子を差し出しはしたが、納得をしているものは多くはなかった。戦争が起きても再び神龍が現れない事……。また、ケイオスが何人かの王に力を与えた事で現状は15年前よりも悪化しておるんじゃろうな……
それでも神龍達が姿を見せぬと言う事は、きっとワシらは試されておるのじゃろう……
もしかすると、龍の加護を受けたお前さん達がこの世界に“変化”をもたらす事を期待しておるのか……。
それとも、何か別の理由があるのか……。
この世界を渦巻く混沌を終わらせる可能性をもった、9人の子供達……それがお前さん達じゃ。」
まるで……おとぎ話の様な話に4人は何も言えないでいた……
今後、クロノスのおじじ様から語られている部分と噛み合わない部分が出てくるやも知れません。
あくまで、おじじ様の<知っている>範疇の話ですので、そこを踏まえた上で、どうか長い目で読んで頂けると幸いです。