113話 通り魔は欲望に忠実で②
やっと、僕のお気に入りのキャラが出てきました。2人ともお待たせ。
ゼクサスは珍しく走っていた。
当然、ダイチを疑っての事ではない。
犯人はそれなりに出来る者、魔力残滓も殺気も一切見せず及ぶ犯行は中々の強者、ゼクサスクラスだったら問題はないが、今のダイチがもし鉢合わせたら恐らく勝てない!!
魔力感知でダイチの位置を捉えたゼクサスは、何事もない事を祈って着実にダイチの元へと走った。
「なんだ!!?」
突如消えるダイチの魔力反応……
「ダイチから漏れていた魔力が完全に消えた?」
一瞬、ゼクサスの思考が止まる。
しかし、考える必要はない。大方の場所は分かっているのだ。
ただ走って追い付けばいいだけの事である。
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ソラとアークは屋敷から出て走っていた。
「おいソラ坊!どっか心当たりはあんのか??」
「いや、特にないんだけど……アークさん、どうすればいい??」
「ったく、感情で動きすぎるのは良くねーぞバカタレ!!焦ってる時こそ一呼吸おいて冷静にな……って、言ってるところで見付けたぜ!!」
「え!!どこ??」
「ちげーよ!!ダイチから漏れてる魔力を見付けたって言ってんのよ。」
「ま、マジか!!流石アークさんだぜ!!伊達にフケてないな!!」
「俺はフケてねー!!って、こっちだ!!」
アークが魔力感知でダイチを発見してすぐ……
「は?おいおい、どーいう事だぁ!?ダイチの魔力が完全に消えたぞ!!」
「ッは??なんだよそれ?どーして……」
「分からんが、自ら消したか、殺気漏らして束縛魔法で完全拘束されたか、この街から消えたか、それか………」
アークの表情を見て、最後に何を言おうとしたのか察したソラ
「取り敢えず、こっちの方なんだよな!!」
死んだとか………そんなの絶対許さないからなダイチ!!
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「なんでござろうか……何か嫌な感じがするでござる!!」
一つの最悪は、ダイチとセトの特訓が終わった直後、毒音が契約している術士によって呼び出されてしまった事
もう一つの最悪は、唯一この街にいる精霊王の雷刃が魔力を元にした感知系統が若干苦手な事
それ故に、ゼクサス、アーク同様に、雷刃は同タイミングでダイチの魔力反応が消えた瞬間、完全な位置を把握出来なくなってしまう。
「むむ!!急に消えたでござるよ!!」
これが毒音だったならば、見付けた瞬間に遠隔で毒術によるマーキングを施せたであろう。
「然らば……『雷器晩餐の極意』にござる!!」
雷刃は自身の身体を雷状態にして街全体を覆い、人口約3万人の脳に流れる電気信号を感知した!!
「むむぅ!!思ったよりも深刻かもしれないでござる!!微弱ながらもこの忌々しい電気反応は……」
何かを察した雷刃は感知した電気反応に跳んだ!!
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後ろから、こちらに向かって地面を蹴った音が聞こえる。
「まだ何かあったかしら??」
ボイルは振り向き様に、自分との距離を詰め様とするダイチに声をかけた。
ダイチを見て言った訳ではない。あくまで、振り向きながら口を開いた為、ボイルの中でも真意は定かではない……
しかし、目撃者はもういない。
ボイルがダイチの姿を確認した時には、ダイチは手に握った木剣を既に振った後で、それと同時にボイルの胴体は血飛沫を上げながら徐々にズレていき、一太刀で絶命したボイルの上半身は嫌な音を立てて地面に落ちた……
「はぁ。はぁ。はぁ……」
ダイチは両膝を地面に落とし、ゆっくりとボイルの上半身を抱き上げて強く抱きしめた!!
ダイチの後ろが稲光り、雷鳴と共に雷刃がその場に顕在した!!
「な、なんで……ござるかこれは。」
ダイチには雷刃は見えていない。
ズズ………
ダイチから凄まじい殺気が辺りに当てられた!!
それは、兄妹の誰もが感じた事のない、誰も知らないダイチの本気の殺気……
瞬間的に構える雷刃!!
突如、ダイチの足下に魔方陣が浮かび上がり、十三個、十三色の黒い鎖が地面から伸び、一瞬でダイチを拘束した。
「うッ!!」
地面から伸びた十三の鎖はダイチを地面へと引き、引っ張られたダイチは力強く地面に倒れ込む。
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「「ッッッ!!!!!」」
別々の位置を走るゼクサスとアークは、凄まじい殺気を感じ取る!!
「ソラ坊、今の感じたか??」
「え!?なにが……」
「わりぃな、急ぐぞ!!」
アークはソラを担ぎ上げ、地面を砕き割って跳躍し、建物を蹴りながら屋根の上まで移動し、凄まじい速度で駆け出した。
「は?わ、わ、ちょっと!!どうしたんだよアークさん!?」
「跳ね上がった魔力と殺気を感じた!!あれはダイチのものだった。」
え、殺気……?
「ど、どーいう事だよ?ダイチが殺気を放ったって言ってんの??有り得ねーよ!?……あり、えねー、よな。」
なんだよ。なにがどーなってんだよ。
《ヒャヒャヒャ!!あの野郎、遂に本性を現しやがったぜぇ!!》
な、お前!!本性ってなんだよッ!!
《………お前は本当にお気楽なヤツだな。》
な、おい!ッおい!!答えろよ!!!!
《…………。》
なん、なんだよ!!
「……い。……おいッ!!ソラ坊、あそこだ、降りるぞ!!」
「あ、ごめん。うん。」
心臓が締め付けられる。
苦しい。
急過ぎてついてけねーよ。
アークは飛び降りながら四つの影を確認した。
激しく着地すると一通り見渡す。
静かに口を開いた。
「ゼクさん、これは、俺はどう解釈すりゃあ良いんだ?」
既に現場に到着していたゼクサスの額からは、一滴の汗が垂れている。
それは、走ったからではなく、目の前に広がる光景を拒んで出た汗なのだろう。
「……分からん。……出来れば分かりたくもないがな。」
「すまないでござる。拙者が駆け付けた時にはもうこの状態だったでござる。」
路地裏だからか、そこは光があまり射し込んでいなく暗がりで
暗がりの中で鎖が巻かれて地面に押さえ付けられてる同じ顔した弟は、表情が無くなっていて
初めて見るその表情からは何も感じ取れなくて、俺はこの状況に涙が出るよりも先に、その横に真っ二つに斬られた身体を見て身体中から汗が吹き出て
血塗れで転がってる上半身は、顔を良く見るとさっきまで笑顔で話していたボイルさんだった。
「うっ……ゲホ……おッ……ェ………」
地面に吐き散らかされる音がビシャビシャと響く……
「ぅ……なんで……そん……な……うッ………ェェ……」
ダイチは横たわりながら静かな眼で、吐き続けるソラをただただ見ていた。
「これ……は。
ゼクサス、アークッ!!どう言う事じゃッッ!!!!!」
突如消えたボイルの魔力、凄まじい殺気を感じ駆け付けた、クロノスとアイオーン、セト、ラックは血塗れでで拘束されるダイチを見て困惑する。
「クロノス様。この場で感じた魔力はダイチのみ。そしてこの状況です。……これ以上の事は、アイツの前では言えません。」
ゼクサスは地面に崩れるソラを見た後に、少し眉毛を下げてクロノスを見た。
「……そうか。」
クロノスとゼクサスを押し退けてアイオーンが二つに割かれたボイルの元に走った!!
「ボイルちゃん!!あぁ……ああ……なんと惨い事を、可哀想に……」
ボイルの上半身を抱きしめながら涙を流すアイオーン。
一番後ろにいたセトは全てを見渡しながら、無表情で視ていた。
ラックは慌ててソラの元に駆け寄る。
「ソラ君、ソラ君!!大丈夫かい!!大丈夫、俺が傍に居るから、取り敢えず僕と一緒に屋敷に戻ろう。ゼクサスさん、良いですよね。」
「あぁ、すまんが頼む。」
ゼクサスはラックの頭を優しくクシャクシャすると、心配そうな眼でソラを見送った。
全身の力が抜けて立てない俺は、ラックさんに抱き抱えられて、そこからの事はあまり良く覚えていない
虚ろながらに、屋敷に向かってる道中で、イヴに会った気がする。心配そうな顔で何か言ってた気がするけど、今はそんな事どうでもいい
雷刃が俺の視界に常に居た気がするけど、無反応なラックさんを見るに姿を消してるんだろう、そんなに謝んなよ
なぁ、ダイチ、なんで何も言ってくれないんだよ。否定するとか、弁明するとか、黙ってたらまるで、お前がやったみたいだろ?
俺は静かに気を失った。
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「なんだよそれ!?むっずかしいって!!それってどーいう意味だよ??
アタシややこしいの苦手なんだよ!!もうちょっと、分かり易く教えろって!!」
腰まである焦げ茶色でロングストレートの髪をした少女は、とある場所で胡座をかきながら、塩気の効いたドリルビーンズの豆大福を頬張ってはキレていた。
「ちょちょちょちょ!!ぅんもぉ~~~急に大きな声出さないでよリンちゃんったらイヤねぇ。」
「やだやだやだやだぁ~~!!短気な子ってイヤよ!!あたし嫌いなんだから!!短気な子は嫌いよリンちゃん!!」
「ちょっとちょっとぉ~~!!美闇ちゃんキレちゃうよ!!マジ美闇ちゃんキレさせたらヤバイんだからね!!
リンちゃんマジで謝っといた方がいいんだから!!ほら、どうする??マジ謝っときなってぇ!!」
「あぁ~~~キレそッ!!光ちゃん、あたしキレそうなんだけど。ヤバイよ?あたしキレたらホントヤバイよ??染まっちゃうよ??世界が闇に染まっちゃうよ!??」
「大丈夫よ!!その時はあたしがすぐに照らして上げるんだからッッ!!」
胡座をかくリンの目の前に居る、アンティーク調の椅子に腰を掛けて、組んだ両腕を手で支え、足を組む二体の精霊王……
二体共に身長は190cm程……
白基調に蝶のアクセサリーが散りばめられた椅子に座る、坊主頭で頭の後ろのみに残された長い髪を三つ編みにした、どう見ても男だが女口調で上半身裸の屈強な肉体をした方が
【闇の精霊王】“美闇花”……
黒基調に薔薇のアクセサリーが散りばめられた椅子に座る、坊主頭で頭の天辺のみに残された長い髪を三つ編みにした、どう見ても男だが女口調で上半身裸の屈強な肉体をした方が
【光の精霊王】“摩光”……
喋り方は気色悪いが放つ魔力は笑えない……
流石のリンもやや気圧されている様子で。
「わ、分かった分かった!!乙女に急に怒鳴ったアタシが悪かったよ!!
ごめんごめん。そんな怒らないでって。折角の可愛い顔が台無しになっちゃうだろ!?」
リンにしては珍しい苦笑い。
「え!?や、やだやだ!!究極に可愛い顔とか、ホント照れるんですけど!!ホント流石に言い過ぎよぉ~~リンちゃん!!」
「ちょちょちょッ!!乙女を極めてるとか、マジ照れるんですけど!!ホント流石に言い過ぎよぉ~~リンちゃん!!」
リンは眼を瞑って頷き、豆大福を頬張った。
「んで、光と闇属性で産まれた双子の仕組みと運命の反転の続き、はよ!!」
段々面倒臭くなってきたリンは、斜に構えてかいた胡座の上に、方肘を付き手の上に顔を乗せて、豆大福に被りついて話しの続きを催促した。
「「ぅんもうッッ!!リンちゃんったらぁ、ワイルドなんだからッッ!!!!」」
摩光と美闇花は頬をピンクに染めながら、逞しい腕を伸ばして太い指先でリンの両頬をドスドスとつついた。
(う、ぐ、くそ~~~~恨むぜモモぉ~~~!!)
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