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転生して鳥になった心優しき少年の物語

とある病院の一室


晩秋を感じさせる乾いた風があたりの木々を揺らし、まるでさびしさをも運んでくるかのように病室の中に吹き込んでくる。


風に揺られ、サーッと髪が流れた


その病院の一室に、少年はいた。

ベッドの上にいた少年は落ち着いた表情でありながら、どこか寂寥感が漂う。


少年は病院の窓越しに遠くを見つめながら、小さくつぶやいた。


「鳥さんたちはいいなぁ。自由にお空を飛べて。僕も鳥さんのように自由にお空を飛んで、外の景色をたくさん見に行きたいなぁ。……あの空の向こうにはどんな世界が広がっているのだろう。きっと自分が知らない想像もつかないような世界があるんだろうなぁ。僕もいつか行ってみたいなぁ。あの空の遠く遠く、遠い遥か空の向こう」


遥か、彼方へーー




……


ピー、ピー



「ソラ!しっかりなさい!」

「……ッ!!!!!!!」


……どこからか声が聞こえる。この声は……お母さん? それにお父さんもいる。


声は出せない。どうしたの、2人して。なんで2人ともそこにいるの。


「非常に危険な状態です。お子さんはもう…長くはないかもしれません…。覚悟は決めておいて下さい」


聞き覚えのある声がする。

この声は…いつも担当してくれてるお医者さん?


状況をうまく把握できない。ここはどこなのだろう。


「…!」

意識が少し戻った途端、突如として耐えがたい苦しみが襲ってきた。


…そうか、分かった。ここはベッドの上だ。今僕はベッドに横たわっている。そのベッドの隣でお父さんとお母さんが僕を見守っていた。


……また病気が悪化したんだね。でも大丈夫だよお父さん、お母さん。今回もまた僕は頑張って乗り越えてみせるからね。だから心配しないで。立派なお医者さんもいるし、きっと大丈夫だよ。



うん、大丈夫。きっと今回もお医者さんがなんとかしてくれてうまくーー



「ソラ!いかないで!!!」

「お父さんとお母さんを置いていかないで!」

「ソラ…!がんばれ…!もう少しだけがんばれ!!」



…お父さん…痛いよ。そんなに強く手を握らなくても大丈夫だよ。



だって僕はこうやって……





ピーーーーーーーーーーーーー







無情にもその音は鳴り響いた。

冷たく、無機質で、何の感情もこもってない音。



父と母は泣き崩れていた。いつも僕を担当してくれていたお医者さんも下を向き歯を噛みしめていた。




……?

みんな、何しているのそこで。なんで僕を囲んで泣いているの?


僕は泣き崩れている父と母に手を添える。でもお父さんもお母さんも触れているのに反応がない。


なんで……僕ならここにいるよ?



……ハッ!



僕はようやくそこで状況を整理できた。


分かった……分かったよ。僕、死んじゃったんだね。今回の手術は、乗り越えることができなかったんだね。


お父さんとお母さんは無情の音が鳴り響いてからその場でずっと泣き崩れている。

お父さん、お母さん。そんなに泣かないでよ。確かに僕は体は不自由だったけど、生まれてきて幸せだっだよ。


僕はお父さんとお母さんにたくさんの愛をもらって育ったんだ。だから、すごく幸せだった。なんでそんなに泣いてるの。僕なら大丈夫だよ。だからお父さんもお母さんもはやく泣き止んで。悔いはないよ。だってお父さんとお母さんの子どもに生まれたんだから。


だから僕は、とても、幸せだっ……



……あれ、

なんで急に涙がでて来るんだろ…なんで僕涙なんか…



……そろそろお別れの時間なのかな


死んじゃったら僕の意識はこのままどうなっちゃうんだろう……消えて無くなるのかな



ああ……1度でいいから空を飛んで、あの遠い景色の先を、見てみたかっ……








ぱち(目を開ける音)

ぱち ぱち


ん……ここはどこだ……

僕はここで何をしているんだ?


おもむろに立ち上がる。


「んん〜? ここは一体どこなんだろう。それに今までかいだことのないような独特な匂いがする。これは土? それと草? なんでこんな近くに土と草が……」



「こらー!ぴよ!はやく起きなさい!散歩置いてくわよ!」



「おわっ!びっくりしたぁ」


「……だ、誰ですか? っていうかなんで僕の目の前に鳥さんが。そして鳥さんが話してる? 一体どうなってるの」



「もー急におかしなこと言うわねえ。あなたは鳥でしょ、鳥。まああんただけまだ飛べないんだけどね」



「えぇ!」

「鳥!? 鳥だって!」



「うるっっさい! 急に大きな声出さないでよもう。

あー心臓に悪い」


……?

どういうこと


……もしかして僕、生まれ変わって鳥さんになっちゃったってこと?


自分の体を見る。

脚があって…翼があって…羽があって…


これはもしかすると本当に僕は鳥になってしまったんじゃ……



「……おおおおやったぁー! なんでかよく分からないけど僕鳥さんになれた! やったぁ!!!」



「はぁ、もう早くしないと置いてくわよ。ほら、あんたはまだ飛べないんだから、歩いて散歩に行くよ」



ぴよ「ふっふふーん♪♪♪」




こうして、ここに転生して鳥になった「ぴよ」の新たな鳥生がはじまる!













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