帝王として尊敬をしていても、腹立つことはよくある。
懐かしい、昔サラ殿に結婚を申し込んだときに、ゴミを見る目で来世で気が向いたらと回答された。出会って間もなかったからかと、それこそサラ殿が消える少し前にも結婚を申し込んだ。その時は低い声でうわーっと一言言われただけだ。
ジェゼロの王を運命づけられていた彼女にとって、当たり前の事が最も異質で無理な事だったのだろう。今思い返すと、酷い事を言ってしまった。はいと言えないことに傷ついてしまったはずだ。
「今日は機嫌がよろしいのですね」
リンドウが問う。ここに来てからはずっと楽しいが、やはり、間違いなくエラ殿が自分とサラ殿の娘だと分かれば嬉しくないはずがない。
「まあね。それよりも、法整備はどれくらいで済みそうだい?」
「昔の法律がありましたからそれを参考に……本当に対等な条約になさるおつもりで? ジェゼロに対しては百歩譲っていいとして、ナサナ国にそれだけの価値がおありですか。必要なものがあるならば奪えばよろしいかと」
「物騒だなぁリンドウは、僕は今まで一度も侵略なんてしたことはないよ。比文明的な国や圧政を強いる頭の悪い権力者に礼儀と文化を広めた結果が今の帝国であるのだから、他者から奪うなんて、唯の野盗と同じじゃないか」
「……左様で。イエン宰相殿は少し抜けていますが頭は非常によろしいですね。秋晴・八崎はハザキの名を継いでいるだけに切れ者で中々気が抜けません。私はもうしばらくこの仕事に従事しますが、帝王陛下はいつまでもここに居る訳にはいきませんよ。神官様の為にもロミア様にはジェームに行っていただかなくてはなりませんし」
相変わらず現実主義だ。それでもリンドウは珍しく楽しそうだ。
「数日後には出発することになるよ。次の世代は三国を一つにできるかもしれないね。まあ、それが平和的かはわからないけれど」
娘の結婚式に出るなんて夢のような話だ。孫に備えて城のひとつやふたつ用意しておくべきか。本当ならば手元に置いてずっと一緒に居たいが、そういうことを嫌うだろう。サラ殿の娘ならのびのびと好きな人と一緒にいて欲しい。
結婚はしないと言っていたけれど、きっとサラ殿と同じで本心では結婚したいはずだ。白い絹のドレスを今から準備させるべきだろうか。式はジェゼロの教会とジェーム帝国の神殿、それにナサナが乞うのならばあちらでも行うべきか。そうなるとドレスはどれだけ少なくとも九着は必要だ。どうせならば各国の美しさを出したものがいいだろう。
「そう言えば、リンドウはいつ結婚するんだい? 私に気を使う必要はないよ。下の兄弟だって気にせず結婚しているんだ」
リンドウに言うと、結婚したいと申し出た時のサラ殿と同じ顔をしていた。
「ええ、気を使っていませんのでお気遣いなく」
酷く冷ややかに言葉を返される。




