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国王陛下、只今逃亡中につき、騎士は弱みに付け込んだ。  作者: 笹色 ゑ
       ~ジェゼロ国に戻りて~

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神の弟子という職に就く。



 王様三人たちは思ったよりもあっさりと話を飲み込んだ。三つ巴とは昔から言ったものだ。上手くするとパワーバランスが取れる。ジェームの神官がナサナを呼んだのはロミアからの協力さより得やすくする為でもあったろう。今の帝国は強大になり過ぎた。帝国がオーパーツを使い搾取するには容易だが、それはロミアの趣味ではない。もしジェゼロとナサナが手を組むと少しは厄介になる。あの新技術があれば、ナサナ国の資源を上手く使えばジェゼロはジェームにすら勝てる可能性がある。そして戦争が起こるのだ。

 実質の法整備を任された苦労人は、新技術に対して否定的な意見を口にするものの、他二か国に甘味を持っていかれては困ると結局は前向きに話し合っている。元々そういうネチネチした話が好きな連中だ。菓子と茶を置いておけば愚痴をこぼしながらも夜通しでも話し合っているだろう。

 可愛い姪っ子は姉より自分に似たのか、一番純粋に動くオーパーツを楽しんでいる。嬉々としているエラは危険性や利権問題をどれだけ理解しているか不安だったが、最初に法整備を言い出したことには感心した。これならばジェゼロをしばし離れても問題ないだろう。

「と、トウマ殿」

 神域から法律についてのデータを取りに行かされ、ヲタク三人の所へ届けようとしていた。廊下で帝王に呼び止められる。偶然ではなさそうだ。

「トウマ・ジェゼロは死んだ。今はオオガミだ」

「それは失礼を。ではオオガミ殿、その、サラ……サウラ殿の兄君と伺ったが」

「ああ、まあ、それで何の用で?」

 三国会談ではすかした感じだったが今は妙に挙動不審だ。

「いま、サラって呼んだか?」

 目を細めまじまじと男を見る。あのハネッカエリが身籠って異国から戻った時にシューセイを少々凹にしてしまった。相手は知らないと言い。且つ自分の命とハザキの名誉をかけて父親ではないと言い切っていた。相手を知らないことには命も名誉もかけていない。

「その……ロミア殿は人の家系を家系図よりも確実に調べることができると聞いています。我々三国会談をより円滑にするためにも、その技術を借りたいのだけれど」

「俺に話を持ってくるってのは、ボコボコにされる覚悟があってだよな? それとも事実確認をしてからサラ自慢の毒草で死ぬか?」

 エユからハザキが帝王の溝内に懇親の一撃をかましたと聞き笑ったが、今ならもう一発は喰らわせておけと言いたいし笑えない。

 これがあのサウラ・ジェゼロをコケにした男か。

「私は、彼女を愛していた。それで受ける罰があるとは思えないよ。彼女が決めた事とはいえ、手助け一つできなかった事はとても申し訳なく思っている。疑いは持っていないけれど、エラ殿のためにも、あやふやではなくはっきりとしたいんだ」

 悪びれるどころか真っ直ぐに返された。

「それと、もう一組、確認をしたいんだ。それを餌にしてフィカス君にここまで来てもらえたからね」

「? あの知能指数若干低めの王様もエラの父親候補か?」

 廊下を見回し、近衛がいるのを見て、声を落とし、帝王はそっと続ける。この距離ならばそうそうは聞き取れない。そして、帝王の護衛は初めから離れた位置に待機していた。

「ベンジャミンはベンジャミナ一族である可能性が高いんだ」

「………ブフッ」

 堪え切れず吹き出して、腹を抱え、爆笑した。ジェゼロの近衛がびくっとしていたが、オオガミの奇行は今更でそっとされる。帝王の護衛はピクリともしなかったのは流石か。

「はー……まじかー。バカウケだなっ」

 あのエラにしか興味のない変態が王族とか、俺以上に残念すぎるだろ。

「本人知ってんのか?」

「ええ。私が知っているのは知らないでしょうが」

 腐っても帝王か。小憎たらしくて可愛いエラに育った以上、これを殺せばサウラ・ジェゼロに祟られかねない。それに何より、時代とジェゼロにこの帝王は必要だ。

「ロミアに話しておく、できるだけ早く結果が出るように頼んでみる」

「ありがとう」

 とても素直な感謝を示す帝王に、毒気が抜かれる。

「よし、じゃあ一発だけで、兄として目を瞑ってやろうな。ちょっと歯を喰いしばれ」

 本当ならば顔面を行きたいが、自分はそこまで常識を知らぬ男ではないのだ。



 休憩として執務室に戻る途中でオオガミに捕まった。

「おお。そっちはどうだ? エラ」

 軽い調子の伯父の方が確かにジェゼロの王にはいいだろう。そうは思うが、オオガミは受けないだろうことも知っていた。何よりも、今の彼は輝いて見える。それを王の職で邪魔してはいけない。

「少なくとも、協力はしていくことで話は付きそうだ。同盟と言う形で平和条約を結ぶ事も考えている」

「偉い偉い。曲者二人によく頑張ってるみたいだな」

 わしわしと頭を撫でられる。その動きはサウラ・ジェゼロがベンジャミンや他の子供にしていたのとよく似ていて、オオガミにそうされるのが妙にうれしかったのを思い出す。

「さっきのタブレットとやらを貸してもらえるか? もっと色々とできるのだろう。それに、写真? と言ったか。もっと色々な場を写真に収めてみたい」

「よしよし。お前には、あれの呪文の方法も教えてやるから、しっかり覚えろ。それとは別に国政もあるからな。寝不足にはなんなよ」

「呪文の類はジェームの神殿でいくらか習ってきた。教科書があればロミアと一緒にオオガミが帝国へ旅に出ても自習をしておくぞ」

「そうだな。宿題はたんまり用意しといてやろう。ベンジャミンに預けとくからな~」

 絶対に、寝る間惜しんで進めると思っている。確かにそうだが。

「そっちの進展はどうだ?」

「オタクどもが楽しそうに議論してる。昔の法律を参考にして原案を作るんだろうな。それに、そもそもの人権水準が違うから、それをどう寄せるかも議論し始めてる。ありゃ二・三日寝なくても喋り続けるぞ」

「ロミアは今どこに?」

「……ああ、神域にな。ちょっと調べものがあるんだと、今から俺も手伝ってくる」

 あそこへは王の寝室か島の教会から行くこととなる。基本的には島から行き来をする事になるだろう。

「王の寝室からいくか?」

「いや……船で行く。あそこから出入りしていいのは、本来ジェゼロ王だけだ」

 もう一度頭を撫でられた。彼は狼犬を飼い可笑しなふりをしていても、誰よりもまともだったと思う。だから、山に住むことにしたのだろう。

「フィカスはどこだか知ってるか?」

 オオガミが後ろにいるベンジャミンに視線を向けて問う。

「お部屋に戻られました。御用でしたら呼んできますが」

「いや、こっちからいく。ちょっと動くな」

 オオガミがベンジャミンの頭に手を伸ばす。ゴミでもついているのかと思ったが、何の前触れもなく、髪を数本毟り取った。毟り取られたベンジャミンは、笑顔を向けたまま、オオガミと組み手争いを始めている。

「どういった要件でしょうか」

「そんなに怒るなって、別に禿げかけてる訳でもねーだろ」

「エラ様が危険な状況のままぬけぬけと戻ってきたり、したり顔で神の使い面をしているのにも目を瞑りました。ですが、何の要件だってんだ」

 がしっと手を組み合わせ、純粋な力比べになっている。ベンジャミンがこちらを気にして被害を受けぬようにそっと距離を取っておく。鋏で落としかけた指の傷が開かないか心配だが、包帯の巻かれたのとは逆の手で主に死闘を繰り広げている。この二人の仲の良さはたまに妬ましい。オオガミが自分には教えなかったことも、ベンジャミンは教わっていた。今回のオーパーツの扱いも、自分よりベンジャミンに教授するのではないかと気が気ではない。

「ベンジャミン、俺もお前がエラに抱えている不純なもんにずっと目を瞑ってやってただろう? ぁあ? うっかり喋っちまってもいいのか?」

 ガラの悪い言葉に、自分は既にベンジャミンから想いを告げられていると一人思うが、ベンジャミンはぐっと言葉を飲み、手を離した。

「俺に勝とうなんざ十年は早い」

 笑いながらナサナ国の王が滞在する部屋の方へ、オオガミが向かっていく。

「……あれで手を引くとは意外だな」

「エラ様、御髪が乱れておいでですよ」

 オオガミにぐちゃぐちゃにされた頭をベンジャミンが整える。二人の手は随分差があるが、どちらも気持ちがいい。

「課題は私から日々お渡ししますので、ちゃんと睡眠を取られるようにお願いします。ジェゼロの王はあなた様だけですから、御身体を壊しませんように」

「む、少しは成長して国に戻ったぞ」

 ベンジャミンまでがこれに関しては信用していない。

「これからは、真の王としての困難がありましょう。私は、陛下の体調管理も仕事の内と考えております」

 真面目に返されては何も返せない。

「お部屋へ戻りましょうか」

 促されて歩き出す。わかっている。国王たる自分はオーパーツで遊ぶよりもすべきことが多くある。




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