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国王陛下、只今逃亡中につき、騎士は弱みに付け込んだ。  作者: 笹色 ゑ
その感情を受け入れることは許されない。     ~ナサナ国にて~

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逃亡資金を調達するはずが。

ナサナ国編

最初残酷表現が入ります。ご注意ください。

   4   逃亡資金を調達するはずが。



 城の下にある広場に作られた死刑台に轡をかけられた神父が引きずり上げられていた。

 その横には5日前に刑を執行されたキリュウ隊長の遺体が晒されたままだった。教会の前には酷い臭いが蔓延している。保護者は教会横の学校へ通わせることを拒否したため会館を臨時の校舎として利用の許可していた。

 議会院長を下ろされるだけで済んだのは、ハザキにとって幸運と思うべきか。服をはぎ取られ遠目でも震えているのがわかる神父を助ける者は誰一人いない。順番が逆であれば、勇気ある者はいたかもしれない。先に吊るされた男は、腐敗が進み屈強だった皮膚はたるみ静脈に沿って変色が進んでいた。自分がそうなる危険を冒せる者はここにいない。

 死体が吊られた横で首に太い縄をかけられた神父は言葉にならない声をあげ涙をつらつらと流している。

 ジェゼロの歴史において、これまでに死刑がなかった訳ではない。同情の余地なしとされた殺人者を薬殺したことはあった。被害者や家族が希望すれば立ち合いができたが公衆に晒すことはなかった。これは明らかな虐殺だ。だが、誰も、ハザキも何もできなかった。

 新しい議会院長が神父と同じくらい青い顔でロープを引き上げるためのハンドルを回していた。徐々に上がるそれは大型の動物を狩ったとき、捌くため吊し上げるのに作られた物だ。落とし床ならば一瞬だったろうが、首の締まりを感じ、徐々に脳への血流が遮断され、先に意識を失うか息ができなくなって死ぬかだ。神父は先に意識を失い失禁する。

「緩めて」

 声をかけたのはミサ・ジェゼロだった。

 情けをかけたのかと大衆が安堵する中で水をかけるように指示を出した。冷や水を浴びて不幸にも神父は目を覚ました。

「後ひと回しして」

 命じられるままにハンドルを回す。爪先立ちで何とか息を耐えられる高さだった。

「神父様がもし神を信じ、罪を犯していないのならば、神が潔白を証明してくださるでしょう。それでは三日後に会いましょう。神の加護がありますように」

 エラ様が着られていた服を着て、ミサはそういうと馬車に乗り城へ戻っていく。

 今助ければ助かるだろう。彼の罪状を誰も知らない。だがハウスの子供たちは誰一人としてミサに助けを乞わなかった。二人だけがこの場に来ていたが、じっと神父を見ている。その目にはわずかに涙が浮かんでいた。だが、ハザキには悲しみや恐怖によるものとは見えなかった。

 あの神父には一度子供への虐待の疑いがあった、被害者はミサ・ハウス。だが本人が否定し、現在も神父の職に就いていた。それに、ミサをあの島へ入れるには誰かが手伝わなくてはならない。それはシィヴィラでは不可能だ。ハウスの神父でもあった彼ならば、人ひとりを荷物に紛れさせ島へと運ぶことは容易だろう。神父を詰問したとして、それでミサを王位から退かせるには至らない。それだけではどうやって儀式を偽証できたかの証拠にはならない。

 エラ様のためならば逃亡幇助でたとえ死刑になったとしても悔いはない。だが、彼の為に命を捧げるほど、自分は博愛的ではないのだ。

 神父は四時間持ちこたえたが耐えられなくなり自分の体重で首が閉まって死亡した。死因は窒息死だった。

 翌日、二つの死体を片づけることの許可が下りた。国民の間にはミサ・ハウスだった人間が国王であると表明し、不満と疑惑が広まっていた。二人の公開処刑で、それを口に出し行動に示すことの危うさをありありと知らしめてみせた。

 ジェーム帝国の姫君だけでも無事におかえりいただきたいが、今城の中がどうなっているのか、議会員ですらないハザキにはもう知れぬことだ。



 宿代を節約するため、部屋は一室しか取っていない。別室では警護の問題もある。なにせ守るのは自分一人しかいないのだ。

 一つのベッドで恐れ多くもエラ様の横で眠る。床で構わなかったと言うのに妙なところが頑なで、そちらの方が身に堪えるとは考えもつかないのだろう。胸は女性とわかる程度だが膨らんでいるし、体付きは実践的筋肉をつけていてもやはり華奢だ。いつもより汗ばんでエラ様の匂いが濃い上にこの近さだ。自分でもよく正気でいると感心する。

 いや、夢うつつに何度も酷い情景を浮かべていた。

 エラ様がミサに捕まれば、よくて死刑だろう。冗談の様に言っていたが、広場で晒し者にされ嬲られる姿を妄想してしまう。あのままジェゼロにいたならば、どれだけ酷い羞恥を受けていたのか。それが頭に回る時、強かに興奮している自分を感じる。ゲスとはまさに己の事だと実感する。そして、それから救い、感謝され、他者ではなくこの自分にのみ親愛を向けるエラ様を見て満足しているのだ。

 泣きつくエラ様を見た時、引き返すチャンスだと泣きそうな、縋るような目で見られた時、卑しい笑みを浮かべていなかったかが未だに心配だ。

 今も、ベッドを共にしてはならない相手の横で、安心して眠る少女に劣情ばかり抱いていた。可哀想なエラ・ジェゼロ。よりによってこんな屑が騎士とは。

「んんー……何時だ」

 日が差すころには目を覚ましたエラ様が眠い目であたりを見回す。最初の数日は目を覚ます度、辛い表情をしていたが今日はふにゃりと寝ぼけた顔だ。それに、唾を飲む。

「ああ、ベンジャミンおはよう」

「おはようございます。エラ様」

 ほどいた黒髪がエラ様のお顔にかかる。その感触を確かめたいがためだけに指を伸ばしてそれをよける。長く艶めいた黒髪を降ろした姿はそうそう見られるものではなかった。今では当たり前にある。櫛を買ったので、志願して梳くことまで許された。国王付きは近くにいる事は出来ても、常に側にいる訳ではない。女以外は許可されていないことも多々あった。

「朝食を貰ってきますので出発の準備を始めてください」

「ん……今日は私が行こうか?」

 昨日の町ではジェゼロの兵がナサナの町にまで現れていた。もし寝込みを襲われてもすぐに逃げられるよう、ある程度衣服は着たままにしている。それでも薄着で目の毒だ。

「いえ、ついでに少し情報も聞いておきたいので」

「わかった」

 上着を着て、下に降りる。一階は昼に食事処をやっている。頼めば朝食も出るとのことで、言っておいたのだ。

「ああ、お兄さん。かわいいお嬢さんとはどうだいっ」

 ふくよかな夫人が下品なことをいう。

「旅疲れですぐに寝られてしまったよ。それより、前の女にもらった指輪があるんだが、高値で買ってくれるような店はどこかあるか? 首都までの道中でもいいんだけどな」

「あんたも酷い男だね。あんな無垢な感じの子を捕まえて」

 肩を竦めて見せる。

「宝石かい? 金かい?」

「一応両方だ。宝石がメインでね」

「なら、次の町でヒヒみたいな顔をした爺さんがやってる店だね。少なくとも宝石の良し悪しはわかるよ」

 住所と地図もわざわざ書いてくれたが、いかんせん話が長い、しかも下世話だ。

 ジェゼロの近くにある町だけに、ジェゼロの情報がいくらかは入ってくる。王が変わったことはまだのようだが、広間で処刑された男がいたらしいということだ。

「噂じゃ、ジェーム帝国の男らしいよ」

「ジェームの? あんな場所まできてるんで?」

「それが、ジェーム帝国のお姫様が嫁いだって。今度お祝いもあるみたいでねっ。でも嫁に出すのを反対した兵士が殺されたとかなんとか」

「俺よりドロドロした恋愛劇をやるやつらがいるとは驚きだ。案外姫と駆け落ちし損ねた騎士だったりしてな」

 殺されたのはシィヴィラが襲い掛かった例の隊長か。余程怨みがありそうだったのを見れば、嫁ぐ代わりに殺せと要望しかねない。

 朝食にいくらかの果物をサービスしてもらい部屋に戻る。食事が済めばすぐに出発できるようにすでに準備が整っていた。最低限の持ち出し袋と新しく買い足した衣類数着、こまごまとした代物だ。簡単な野宿ならできる毛布と防寒着はオオガミの家からの戦利品だ。

「お待たせしましたか」

「いや、洗ったものも乾いていたからよかった。片づけながらだと色々と考えられるな」

「そこはサウラ様に似なくてようございました」

 散らかし魔だったサウラ様に対してエラ様は熱中して散らかしても最後は綺麗に片づける。

「ベンジャミン。私はジェーム帝国に向かってみようと思う」

 はっきりとそういうエラ様はもう迷っていないようだった。

「わかりました。順路は私が考えても?」

「残念だが、私は正確な場所すら知らないからな」

 困ったような申し訳ないような顔をしていた。

「少し遠回りになりますが、もう少しナサナの首都寄りに行こうと思います。ジェゼロの追手もそこまでは来られないでしょうから。少なくともジェーム帝国につくまでは節約した生活になりますので」

「私が飢える分には構わんよ。私ができることはさせてくれ。荷物にはなりたくない」

 卑猥な妄想をする男だと知りもせず、健気なエラ様にできる限り優しく笑い返す。

「飢えてもいいように、食べられるときはしっかり食べましょうか」

 馬を売るのは最終手段だ。どう足掻いたって金は要る。最低限の生活は保ちたい。自分が野宿するのも野草を食むのもいいが、そんなことをエラ様にさせるのはミサ・ハウスに捕まる次には避けたいのだ。



 町を移動して、もうナサナの首都と目と鼻の先まで来ていた。

 自分のできることは本当に少ないが、馬の世話はできる。キングがベンジャミンに触られるのを嫌うので結果的にではある。はじめはそんな事をさせられないと言われていた。キングはブラシをかけられている時は、いつもの凛々しい顔も心成しか嬉しそうに見える。普段はおとなしい馬なのだが、人を乗せるのを嫌い、世話をする相手も選ぶ。ほかの馬に対してはのんびりしているので別の馬の尻にかみつく心配はまずない。何よりもとても頭のいい馬だ。

 馬の世話という名の癒しを済ませて、宿に戻り服を着替えてざっくり洗濯をして干しておく。ベンジャミンのものもやるが、エラ様に下着まではさせられないと妙な所頑ななのでそれは尊厳として譲歩している。

 最初こそナサナの田舎町にはジェゼロの兵がうろついていたが、もうそれらは見なくなった。今はベンジャミンが出ているので本来は出かけるべきではないが、少し気晴らしがしたかった。治安は思ったよりも良くて、仕込みの短刀は持っているが必要はないだろう。

 町並みは田舎の都会と言ったところか。ジェゼロは首都と言うよりも湖の周りに町が広がり、他にいくつかの集落があるだけの小さな国だ。森が多く国土はあっても、実際の居住面積はナサナには遠く及ばない。ジェゼロは夜闇から守る夜灯りがあるくらいで後は森と幸運がなければ、いつ侵略されても可笑しくはなかった。先代のサウラ・ジェゼロは何度かナサナに出向き牽制をしていたと聞く。自分には母のような度胸も手腕も到底ない。

 ナサナの中心に近づくほどに可愛らしい雑貨やお洒落な服を売っていてる店が増えていく。ジェゼロが田舎者と呼ばれるのは納得してしまう。こじゃれた本屋があって、興味本位で立ち寄った。勿論買える訳もないので少しの間表紙を眺めて楽しんでから出た。何色モノ色を使った活版印刷の表紙は美しくすらある。一週間前なら、好きなだけとは言わないが、何十冊かは買っていただろう。

 その隣にあまり可愛くない貴金属店があった。ショーケースから流し見て先に進もうとしてベンジャミンがいるのに気づく。少し用事があると出て行っていた。こんな店に何用かと目を凝らす。

 ヒヒのような赤面に白髪の老人が眼鏡越しに、手にした指輪を近づけたり離したりして見ている。その手にしているものに見覚えがあった。鑑定のために寄ったのではないのは明らかで、すぐに金に換えるのだと察した。頭で理解するより先に店の中に入っていた。ベンジャミンがこちらを見て慌てて店主の持つ物を見えない様に立ち位置を変えるがもう遅い。

「……お待ちくださいと」

「五月蝿い。店主、すまないがそれを売るのは手違いだ」

 驚いているベンジャミンを無視して店主に手を差し出す。

「上手い芝居だが値は上げられんよ。感情論じゃなくきっちり査定しておる」

「芝居じゃない。それは売れない物だ」

 その指輪が何か、一度だけ見たことがある。彼がまだハウスに住んでいた時に悪餓鬼に隠されて怒りに任せて盗人の前歯をへし折った。それほど大事な、彼が捨てられた時に持っていた唯一の代物だった。一つでも不運があれば今まで彼の手に残らなかったものだ。それはつまり、神がベンジャミンから離さなかったのだ。家族との最後の繋がりを。そんな大事な物を、売ってはいいはずがない。

「エラ様……これは誰のものですか?」

 いつもと変わらず優しい口調だが嫌な頑なさが見えた。

「……お前の、唯一の物だ」

 一度売れば二度と戻ってこないだろう。それこそ余程の運命でもない限り不可能だ。

「では店主、言い値でいい」

「っ」

「いいんですよ。これくらい」

 何がいいのかといいかけて、これ以上は駄々でしかないと口を噤んで店を一人出た。ベンジャミンが出てくるよりも先に宿とは逆の裏道に入る。きっと追ってくるだろうが、今はとても顔を見られない。

 泣きたいわけではないのに胸が痛くなって胃がむかつく様な、やるせなさが溢れる。呼吸すら不快感を覚えていた。

 宿代など出さず、野宿をして、うさぎを狩って、野草を摘めばいい。馬の為の草も水も森に行けばいくらでもある。一人だったなら、逃げてこられたとしても森に潜むくらいしかできなかったはずだ。それを考えれば、二人ならば、苦ではない。狼の森を遊び場にしていたのだ。自分は軟弱に城の中でしか過ごしていない深窓の姫とは違う。

「……」

 結局大通りの道に出てしまうのが見えて立ち止まる。丁度横に散髪屋が店を構えていた。看板につけ毛ありますと書かれている。

 売れるようなものなど一つもなく逃げて来た。あるのは身一つだ。



 エラ様が馬の世話をしている間にと、聞いた店に行ったが査定に時間がかかった。預ける訳にもいかず待っていた間の出来事だ。本当ならばもう少し吹っ掛けたかったが、十分な額だ。大金と言っていい。宝石も本物で、銀でできた女ものの指輪は内側に傷があったせいで少し値が下がったのは惜しい。

 今も持っているか知られていないあれならば売ったところでエラ様にはばれないと思っていたが、現場を見られたのは失態だ。大したものでないと言ったところで買い戻せと腹を立てるだろう。宿ではなく何時間かは顔を合わさずに居られるように小道に入ったか。大人しく宿に戻っていてくれればいいが。へそを曲げると一人になりたがる癖は知っている。

 エラ様もハザキに体術指導を受けている。チンピラ風情なら心配はないが騒ぎを起こされては困るので面倒ごとが起きない様に祈っていた。

 小道のいくつかを通り、時折大通りを確認する。ふと道を挟んだ先に高級つけ毛の文字が目に入る。嫌な予感がして足早に店を覗くと息をのみ慌てて店内に入ってはさみを持った女の手を掴みあげた。

「きゃあっ、何っ」

 悲鳴を上げるのなど構っていられない。

「ベンジャミン!? 放して差し上げろ」

 エラ様が鏡越しに驚いて、直ぐに振り返って言うがそれよりも前に手は放していた。

「何、知り合い?」

「こんな……髪を売ろうとなされているのですか」

 強い叱責にエラ様が珍しくばつ悪そうに視線を逸らした。幸い、まだ御髪は切られていない。売るために髪はいくつもの小さい束にまとめられていた。この手間がなければもう切られた後だったかもしれない。それに毛束のくくり目を見る限り、女性にしてはとても短いモノになっていただろう。どうしてなんと恐ろしい事を考えるついたのか理解ができない。

「……ベンジャミン。これは誰のものだ?」

「私の物です。切る事は許可いたしかねます」

 つまらない問答に考えるまでもなく返していた。エラ様ご自身の物だと言われる予定だったのだろう。あまりに驚いた顔をしている。

「失恋したんじゃなかったのね。もう、手間賃は今回だけは取らないで上げるから、痴話喧嘩始める前に髪留めを回収させて」

 店員が面倒な客だと思ったのか、髪留めをそそくさと外してケープを取ると店を出るように促す。例え女でエラ様の許可があったとしても、その髪に勝手に触れたことが腹立たしくて仕方ない。

「……確かに、大した額ではないが、金は少しでもあった方がいいだろう」

 弱々しいいい訳にため息が出る。

「たとえ髪の毛一本であろうと、御身を売るような真似はなさならいでください。見知らぬものの手にそれが渡るなど考えただけでもおぞましいっ」

「ならば、指輪を買い戻してくれ。これではあまりにも……」

「我が儘を言わないでください」

 強い物言いに、言いたい言葉を飲み込んでただじっと見返される。

 理解されていないのだ。高が指輪とエラ様の髪の価値にどれだけの差があるかを。金額ではない。いや、エラ様の髪ならば、あんな片隅の店が払えるような額であるはずがない。

 我が儘どころか口を開かなくなったエラ様は、それでも宿までは着いてくる。そこまで勝手をされるほど無謀ではない。

「エラ様、食事はどこかへ取りに行かれますか? お疲れでしたら買ってきますが」

 宿に戻った後、エラ様はキング達二頭の世話をもう一度始めてしまった。声を失った人魚姫のように、黙ったままだった。声をかけられ、キングが折角のブラッシングを邪魔されたと、不機嫌に蹄を鳴らす。エラ様はそれを宥めると、じっとこっちを見た後首を小さく横に振るだけだった。

 今までに見たことのないへその曲げ方に困惑はしている。それだけ、あの指輪を、自分の出所を気にしてくださっての事だろうが、これではこちらが辛い。

「エラ様……質流れの猶予を長くしてもらっています。落ち着き次第買い戻しますから」

 嘯いてみたものの、それで騙されるはずもなく余計に悲しそうな目で見られる。

「……食欲がないんだ。今日はもう先に休ませてもらう」

 ブラシを片付けて、小さな声でそれだけ言うと宿に上がってしまう。キングがざまあみろと言わんばかりに鼻息で笑う。





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