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国王陛下、只今逃亡中につき、騎士は弱みに付け込んだ。  作者: 笹色 恵
       ~ジェゼロ国に戻りて~
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ロミア



 着替えを終えてすぐに戻りたかったが湯あみをさせられた。結局時間を食った気がする。報告でシィヴィラが戻ったと聞いた。ミサに会いたいと言っているらしいがひとまず待つように指示している。それにナサナ国もだ。

「やあエラ」

 応接場でロミアと名乗られた者とベンジャミンが待っていた。

「彼がいてもいいけど、二人で話したいな」

 微動だにしないベンジャミンを見て手で下がるように指示をした。食い下がるかと思ったが素直に指示に従った。

「お待たせして申し訳なかった。エクラ・ジェゼロだ。エラと呼んでもらえれば」

「うん、座って。君の話はサラからずっと聞いていたよ」

 嬉しそうにロミアは言う。

「……サウラ様は、私にはあまり係わろうとはしなかった。それよりも、あなたの話を私は聞きたい」

「んー……その前にサラの話をしたいな」

 確かにとぼけた感じだと妙に再認識していた。神の威厳も神秘性もない。優しい雰囲気と言うよりは好奇心の強い子供の様に思う。

「サラはエラの事を話すときにいつも嬉しそうでね、とても印象的だった。どれだけ可愛らしくて頭がよくてどうしようもないほど愛くるしいかを話していたよ。そんな顔しないで、サラは君を見ていると可愛すぎて嫌われたくないからどう接したらいいのか分からなくなるんだって」

「私の父の話は?」

「……名前を一回だけうっかり言ったから知ってたけど、まさかジェームの帝王さんだったとはねぇ」

「できれば口外しないでいただきたい」

「それくらいは察したよ。サラは、君が可愛いのは彼の子だからだって……思い出すと寂しいって、騙されていたとは言わなかったけど、自分には色恋が向いていなかったんだってさ。あれでサラは繊細な子だったから……」

「母を繊細と表現されるのは初めてだ」

「サラは面白い子ではあったけどね。毒草というか薬草が好きだったし。でも、一人娘の愛し方に悩むような子だった。僕は君に会うのがとても楽しみだったよ」

 妙に居心地が悪い。

「じゃあ、僕の話を聞きたいんだったね。僕はまあ、人じゃない。もともとは君の何代も前の人に作られた。神が人を作り給うたのかもしれないけど、僕は人に作られた。だから僕らは君の神じゃない。騙していたと言われるかもしれないけど、それは便宜上ジェゼロ王とその周りが作っていったものだからね」

「……あなたは我々を助けていたのか?」

「持ちつ持たれつ、助けていたし助けられていた。君たちという一族だけが僕に会いに来られたのは僕の我が儘。製作者は僕にとって神様みたいなもので、その子供たちは特別な生き物、だから、見続けたかった」

「地上に現れたのは初めての事だ。時が来たとは……どんな意味があったんだ?」

 果たしてあの言葉を素直に伝えたのはいい事だったのか、悪い事だったのか不安だった。

「僕たちが地下にいた理由は簡単だよ。太陽から僕らに有害な物質が飛んできていて、長年地上には出られなかった。時が来たっていうのは、僕たちを機械……オーパーツって呼ばれるのかな。それを使えるようになったって意味。僕たちは使い方や製造方法を伝えるために死なないようにしていたのさ」

「……オーパーツを?」

 それに対してロミアが困ったように顔を顰めた。

「僕たちの一存では決められない。それも昔決めたことなんだ」

「帝王は全て知っていたか。だからナサナ国を呼んだのだな」

「ナイジアナ国は、今はナサナ国って名前に変わっているみたいだね」

「……ああ」

 シィヴィラの言う滅んだ国に聞き覚えはあった。歴史の勉強くらい学校で教わっている。

「フヅキの事は嫌い?」

 肩を竦めた。

「三国会談までオーパーツの詳しい話はなしか?」

「パパの話はなしね。オーケー、わかるよ、親子って難しいよね」

「帝王は帝王だ。私の親じゃない。そうなることもない」

「うん、まあ、ゆっくりね。三国会談は今日の夜? それとも明日?」

「明日になるだろう。ナサナの使者は今日遅くに到着するだろうからな」

「詳しい話はじゃあその時に、僕はエラの事もジェゼロも凄く大好きだし大事だけど、まあ僕にも色々と仕事があるからね。じゃあ、今日はこのままジェゼロの街とか森を案内してよ。話は聞いていても実際に見てはこられなかったから。いいかな?」

「お相手をしたいが私も国に戻ったばかりで王としてしなくてはならないことがいくつもありまして」

 あからさまにがっかりされて罪悪感を覚えてしまう。

「じゃあ別の人に案内してもらうよ。それならいいでしょ?」

「まあ……それならば」

「じゃあトウマ君に頼もう。サラがね、王様は自分よりも兄の方が向いていたって言うくらいの人物だから」

「………オオガミを?」

「だって彼は男の子だけど僕の大好きな人の子孫には変わりないからさ」

 にこにこと笑顔でロミアが言う。




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