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国王陛下、只今逃亡中につき、騎士は弱みに付け込んだ。  作者: 笹色 恵
二つの感情を無視し続ける事はできない。   ~ジェーム帝国にて~
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三人の旅路

   三人の旅路




 左は予定よりずっと早く出発する事になったエラ様の服を確認してもらう。右は新しくきたお姫様の旅用の召し物を用意している。

「急に無理を言ってすまない。左」

「お礼よりもお忘れなく頂きたいことがあります。右からも釘をさす様に言われています。まだ、お約束のご奉仕をさせて頂いていません」

「……すまない。約束を違うことになってしまった」

 申し訳なさそうになど本来する必要はないと言うのに、律儀な方だ。

「今ではなく。次の機会のお約束を……短い間でしたが楽しく働くことができました」

「二人なら最強だが、君達は、いや……二人ではなく四人は、一人ずつでもとても優秀だ。私には兄弟がいなかったから、互いに切磋琢磨して、尚且つ息を合わせて働くことまでできて、尊敬する」

 来た時より寂しそうに笑われる。

「エラお嬢様も、お一人でもとても強く立っているお姿は美しいです。でも、そんなに一人ですべてを背負ってしまっては、疲れて動けなくなってしまう」

 詳しい事を自分たちは知らされていない。客人として不自由なくもてなすことが仕事だ。それでも、馬鹿ではないのだ。察することはいくつもあった。

「心配してくれてありがとう。疲れたら、戻って来てマッサージを頼むよ」

 冗談を返されてしまうが、従者という殿方と距離を取ってからとても寂しそうだった。

「その時は嫌がらずに身をお任せください」

 そう返すと、やっとちゃんと笑顔を返してくれた。



 キングがこれからまた長く歩かなければならないと言うのに嬉しそうに鼻を鳴らしていた。それだけで少し癒される。

 驚くべきことに、馬に一人で乗れないと言うコユキ姫はベンジャミンが引き受け、代わりにキングには多めの荷物を運んでもらっている。馬車よりは身軽であることと、上手く進めば5日かからずに着くはずだ。それだけの道のりに随分と遠回りになった物だが、資金の援助とコユキ姫を送り届けられると考えれば、結果的によかったのだろう。

 コユキ姫を別途馬車で送ってもらってもよかったが、同行を許可したのは別に二人旅を避けたかったからだけではない。あの背中の文字はヘナか何かで書かれた物だ。1週間もすれば文字として読みにくくなってしまう。あれはジェーム帝国にとって新国王と名乗る者が不利益だと言う証拠だ。そして、第一巫女が加担した証明にもなる。それに対してこちらから聞かねばならない。その為にも、姫君は出来るだけ早くジェーム帝国にお連れしたかった。

「部屋が取れましたので、今日はここまでにしましょう」

 馬が疲れたと言うよりは、恐ろしく体力のない姫君がダウンする前に宿を決めた。ナサナ国の端にある町だ。

「私は馬の世話をしてくる。荷物を持って行ってくれ」

「……わかりました」

 ジェゼロを出て初めに決めたことを続けるだけだ。それに対する不服を飲み込むのが分かる。キングはやはりベンジャミン嫌いのままだから仕方ない。

「代わりに彼女の案内を頼んだぞ」

「はい」

 馬の世話をさせる事より不満な顔だ。文句なしの美女の相手をできるのに失礼な奴だ。

 馬を2頭連れて宿の馬小屋に連れて行く。

 ホルーから種馬の打診があったのをふと思い出した。キングは優秀な馬だ。その子孫をと考えるのは当たり前な話で、キングが嫌がらないならと許可をした。単純にキングの子供を見てみたかったのもある。

 ベンジャミンは自分の閨にはならない。そんなものより、普通に結婚して、できる事なら彼の子を見てみたい。少し生意気か礼儀正しいかどちらかだ。手の付けられないやんちゃものかもしれない。自分では叶えてやれないのだ。だから、想いには答えてやれない。

 キングが優しく顔を寄せてくる。

「……お前ほどのいい男ではないんだけどな」

 話さなくても理解し合えるほど人間はできた生き物ではない。だからこそ、自分は彼の好意に甘えてはならない。突き放して、距離を取るべきだ。側にいながら気のないふりをできるほど、自分は器用ではない。だから、もう……ベンジャミンの幸せを考えてやるべきだ。



 思っていた通りに、ベンジャミン様はお優しく、気遣いをしてくださる方だった。

 それに対して、エラ・ジェゼロ様は命を懸けて駆け付けた者に対してそっけない。コユキに対しては親切だが、それだけだ。王を追われるのはこの幼き王では仕方のない事だったのかもしれない。ジェーム帝国では絶対に起きないことだ。

 馬に揺られるのも慣れて来たころ、昼食を兼ねて休憩のために立ち寄った店で検問が立って居たと話をしている商人がいた。食事をしていた二人が食べる手を止めていたので気が付いた。

 ベンジャミン様が席を立つと店員に何かを頼んで戻って来た。エラ様は特に気にされた様子もなく食事を再開している。

「先に出て馬の準備をしておく」

「わかりました」

 目上であるベンジャミン様に、王だった時と変わらない口調でエラ様は言う。ベンジャミン様も未だに彼女が王だったころと変わらぬ対応をされていた。それは同情に近い物かもしれない。

「すぐ、食べますので、先に準備を手伝いに行っていただいても」

「いえ、別の物を少し頼みましたので、お気になさらず」

 ベンジャミン様は、エラ様の事を主君として未だに大事にしておられても、自分の傍にいてくださることがとても多かった。

 食事を済ませると支払いの際に何か包みを貰っていた。

「では行きましょうか」

 優しい笑顔を向けられる。

「雨は降らないといいがな」

「ですね」

 手伝ってもらい、馬に乗ると二人が空を見て言う。天気がいいので今日もコユキはフードを目深に被ったままだ。そうすれば白いこの姿が目立たない事もあるが、それ以前に日光が苦手なのだ。

 今までは街道を通っていたが、来た道を少し戻り獣道のような細い道へ入っていく。



 洞穴まではいかないが切り立つ崖に寝泊まりができそうな窪みを見つけた。日が暮れるまで少しあったが、今日はそこまでとした。既にジェーム帝国の近くは冬が始まり出している。野ざらしの場では、コユキ姫がもたないだろうと言うエラ様も優しき判断だ。

 日が暮れる頃には火を起こし昼の食堂で仕入れた食事と簡単なスープで腹を満たした。

「今日は、どうして野宿に……」

 不安気な姫様が問う。

「あの場に検問は聞いた事がありません。ジェゼロから早馬を出してジェーム帝国に何らかの書簡を出した可能性もありますので。首都に入ればともかく、国境沿いで捕らえられるなんて事になっては大変ですから」

 正直に言って彼女は足手まといだ。物理的にも精神的にも。こんな事すらいちいち説明が必要になる。

「その、獣は大丈夫でしょうか。熊は出ませんか?」

「多分、大丈夫だ。それより、完全に日が暮れる前にもう少しあたりを見ておきたい」

「でしたら、私も同行を」

「いや、お前は休む用意をしていてくれ」

 ぐっと堪えてエラ様を行かせた。

「あの……そんなに長くは無理ですが、火の番くらいは」

 控えめにコユキ姫が言う。

「それでは、すぐに戻ります。火は消えても構いませんので」

 あまり期待はしていないが、ジェゼロの森と違ってよく知らない場所をうろつかせたくはない。不安はあるが任せる事にする。

 エラ様が行った方へ足早に向かう。ジェゼロより北に来たため既に頬を過ぎる風は冷たかった。日が悪ければ雪が降っても可笑しくないほどだ。できればエラ様に野宿などさせたくはないが安全の為には仕方ない。

「……お前……姫君に何かあったらどうするんだ」

 追うのが早かっただけにエラ様はすぐ見つかった。小川に屈み手を清めているところだった。

「エラ様に何かある方が余程ことでございます」

「はぁ……それは姫君の前では言うなよ」

「ご命令でしたら」

「命令でなくてもだ。馬鹿者」

 呆れたように返されるがいつもの冗談めかしたものではない。明らかな棘のある言い方だった。

「上手くいけば明日の昼にはジェーム帝国の国境の先の街に入れます」

「それはいい知らせだ」

「その前に、話して置きたいのです」

 戻ろうと歩き出していたエラ様の手を掴む。

「……なんだ」

 促す言葉に一つ息を付く。

「私が……目障りになっているのならば、ご不快にならぬよう配慮します。ですから、独りでの行動は御控えください」

 あからさまに姫君の相手を押し付けて、会話すら避けようとしている。自分の愚行を不快に思うのは当たり前だが、その所為でエラ様がわざわざ危険を冒すのは避けなければならない。

「……」

 口を噤み視線を逸らしたまま、言葉すら返して下さらないのか。

 一度小さく開けたその唇を着っと結び再び開かれる。

「………私の行動は自分で決める! お前に命じたのはあの姫君のおもりだ。私は一人でもやっていけることくらい、知っているだろうっ」

 声を荒げて手を振りほどく。それでも、目を見てすら下さらない。

 どれだけ一緒にいて、どれだけ見ていたと思っているのか。それが、本心でないと分かりながらも、そうさせる理由がわからない。

 遠くで悲鳴がして詰問する前にエラ様が走り出していた。この場から逃げる格好の口実だったのだろう。

 戻ると、姫君が半べそをかいて岩場に上っていた。見れば足元を蛇が通って行く。

「毒はない蛇だ」

 蛇の首根っこを掴むと、エラ様は遠くに放り投げた。

 わかってはいる。エラ様一人でも、ジェーム帝国まで行くことは十分に可能だったと。



 先に休むと言って日が暮れる前に眠るエラ様を見て更に失望していた。ベンジャミン様は火を絶やさないために薪を拾って戻ってきた。

「浅い睡眠になると思うので、姫君も早めに休んでください」

「その、こういうのは初めてで……ベンジャミン様たちは、経験が?」

 焚き火の横に腰かけて話をしたくて聞いた。

「……まあ、何度かは。遠出に出た時などに」

「すごいですね。私は、神殿から出ることも滅多になかったので、ジェーム帝国から出たのも初めてだったんです」

「それは、大変な旅になってしまいましたね」

 確かに、大変だった。辛いことばかりだったというのに、今この時だけはとても穏やかに感じていた。

「ジェーム帝国の神殿は首都にあると聞きましたが、首都でそういったものを見たことが実はありません。どのような場所なのですか?」

「白い。一言で説明するならそんな場所です。でも、とても美しい神殿です。基本的には女性か、私たちの様な巫女だけが入れる場所で、神官様への奉仕はさらに限られたものしかできません。私は残念ながらお声を聴くことは許されても直接お世話をすることはできませんでした」

「シィヴィラ様はお会いできる側だったのですね」

「はい。第一巫女と帝王の選任は神官様の一存で行われます。現帝王様は前国王の長子だったからではなく、神官様がお選びになったからその任を与えられたんです」

 巫女でなくても神官様の世話役や会うことが許される者もいる。第三巫女でありながら、自分は一度もお声掛けがなかった。

「今回の事で、できることならば帝王様にはお会いする機会を頂きたいのですが、そんな大それた希望は抱いてもいいのでしょうか」

 ベンジャミン様がエラ様のために動いているのはわかっている。けれど、それはジェゼロを正常な状態に繋げるためだ。今のジェゼロは事もあろうにジェーム帝国と戦争を起こそうとしている。それを彼は止めたいのだ。なんという重い使命を持たれているのだろう。

「ジェーム帝国へ入れば、巫女である私の権限が活きます。私が頼めば十分に可能だと」

「……姫にはジェゼロに来たことで多くの困難を与えてしまいました。そんなジェゼロの私が、頼むのは恥知らずと思われるでしょうが……」

「そんなことはありません。私は、ベンジャミン様が国を守るために自分の命を懸けてまで旅をされていると知っています」

 ベンジャミン様についてきたのは、ジェーム帝国へ向かうからだけではない。自分とベンジャミン様があの場で会えたのはきっと神の思し召しに違いない。そして、出会いでは命を救っていただいた。少しでもそんな彼の手助けをしたかった。



 早めに寝て夜中からベンジャミンと見張りを変わった。明朝に起きて来たベンジャミンの寝ていた毛布に包まり出発前に少しだけ休憩していたが、案外図太いお姫様はどうやらベンジャミンがずっと見張りをしていたと思ったらしい。その声が聞こえていたが面倒で目を閉じた。ベンジャミンはそれを否定していたが、恋する乙女には無駄な話だ。

 少し休んでから眠い目をこすり、馬の鞍付けをして今日もよろしくとキングを撫でる。本当に、今の癒しはこいつだけかもしれない。他の者だと蹴り殺そうとしたり、ちょっとやんちゃだが口喧嘩もしなくてすむ。ただただ感謝を示せば理解してくれる。

「もうひと頑張り頼むぞ」

 予定では、もうじき着ける。

 準備を済ませて馬に乗る。もたもたする姫君の手伝いをいつものようにしてからベンジャミンも馬に乗った。二人が密着する体制も見慣れてしまった。

 ベンジャミンは後学のためにジェーム帝国へ入ったことがある。今更、悪さでもしてこなかったかと不安になるが、もう行くしかないだろう。ベンジャミンの先導で森を抜けていく。植物の種類が変わり自分の知る森と違っていた。それでもいくつかはサウラ・ジェゼロの毒草棚で見たものがある。

 馬のための休憩か姫のための休憩かわからない休息を交えても、昼を過ぎた頃には町が見えた。思っていたよりも平凡な街だ。首都まではほど遠く、国境近くの町だからか。

「ベンジャミン様、ここで少しお待ちください。先に事情を話してまいります」

 ベンジャミンに降りるのを手伝ってもらうと、フードを目深に被り、こちらには何も言わずに町へ向かっていく。ベンジャミンも一緒について行くよう言いかけたが、止めておいた。口論をしたくはない。

 何かまた言われると覚悟していたのに、何も話しかけてはこなかった。自分で望んだことを望まれたままにベンジャミンは返しているだけだ。なのに、胸のあたりがコルセットで絞められた時よりもぎゅっとする。

 しばらく待っていると、森に面した町外れの街道に馬が近づいてくる。

「ベンジャミン殿とエラ殿ですな」

 少し離れた場所から声をかけてきたのは老健なジェーム帝国兵で、それに返事を返す。近づいて行くと、別に何人かの兵がいた。

「馬をお預かりします」

 遠目に姫君が居るのが見えた。馬から降りるとコユキ姫の叫び声がする。聞き間違いでなければ、お逃げくださいと聞こえた。

 反射的に馬に乗ろうとしたが、周りの兵が剣を抜いていた。ベンジャミンも既に馬から降りてしまっている。軽率だった。

「あなた方には巫女様の誘拐容疑がかけられている。素直に従う事を勧める。本来ならばこの場で殺されていても文句は言えない罪状だ」

 老健な兵が言う。馬に乗ったままならば、森にこのまま逃げ込めば何とかできたかもしれない。だが人の足では明らかに不利だ。

「我々は誘拐などという不名誉な事はしていない……ベンジャミン、無駄な事はするな」

 殺気すら放っているベンジャミンに釘を刺す。奴の剣技が優れていたとして、ジェーム帝国の軍人を殺すことは、話をどこまでもややこしくする。自分たちは戦いを挑みに来たのではない。

 後ろ手に腕を組むような形で縛られる。

「このっ、蛮族がっ」

 危険物の確認をされた際、小刀を見つけられた。若い兵が親の仇でも見つけたように激昂し小刀を持った手で殴りつけてくる。勢い余って倒れ込むふりをする。まともに避けては反感を買うがまともに殴られるのも嫌だ。彼らにとって巫女はとても神聖だ。疑いとはいえ頭に血が上ってしまっているのだろう。

「っこの、なんだ」

 兵が慌てた声を上げる。見ればベンジャミンより先にキングが暴れ出していた。異変を敏感に察して前足を高く上げ蹴り殺すか噛みついてやろうとしている。馬の歯は指くらいなら軽く噛み切る力がある。何よりも、体格のいい漆黒の馬が暴れ出せば軍人にも脅威だ。

「……っ、恥をかかせるな、馬鹿者っ」

 キングの後ろに見えたベンジャミンが、この機に乗じて何かしようとしているのだけは理解して、咄嗟に大声を出した。

 ベンジャミンはもちろんだが、キングが何度か不服そうに鼻息を鳴らした後、暴れるのを止めた。口の中に血の味がして唾を吐く。顔を殴られた時に切ってしまったようだ。

 立ち上がると老健な兵をまっすぐ見やる。

「ジェーム帝国の兵ならばどれほど末端であっても帝王の手足であり帝国の一部であろう。その者たちが、罪なき者に対して行う所業がこれか?」

 ベンジャミンに対する一喝は、はしたない程に大きかったのか。場は妙に静かで、注目を浴びているのが嫌でもわかる。

「……罪状の認否を含め、我々のような爪の先にも満たないようなものでは何も出来ぬ話だ。貴様らには大人しく来てもらう」

 馬車のような物が近づいてくるのが見えた。ただそれは、馬車や荷台と言うには少々優しさが足りない。牢馬車とでもいったところか。

「……お前はもう暴れるなよ。私の余計な心配を増やしてくれるな」

 キングに対して言い含める。馬にどこまで人の言葉が理解できるかは知らないが、気持ちは人より伝わっているのかもしれない。キングは不服そうな嘶きのようなため息をつくが、落ち着いた様だった。

 ベンジャミン共々、同じ牢馬車に放り込まれると姿勢を崩して硬い床に膝をついた。なんだか、災難ばかりに遭い過ぎて、動揺していなかった。

「エラ様、お顔を」

「骨も歯も問題ない。少し口の中が切れただけだ」

 淡々と返す。こんなことになってもなお、先ごろまでほとんど話をしないようになっていた相手に、優しくできる気がしない。

「お前が過去に何かやらかしでもしていないなら、無実は証明できる」

 あの姫君が思っているよりも強かならば、自分はこのままジェゼロ王と知られぬままに無実の罪で死ぬかも知れない。

 ジェゼロからの逃亡は助けてくれるものと助けられる環境がまだ残っていたからだ。だが、この地には何の権限も知り合いもいない。

 ジェーム帝国とは古くに強い絆があり、何よりも帝王自らが国交の再開を熱望していた。それを確信するのは処刑されたというキリュウ隊長が持ってきた物に直筆の書があったからだ。小国に遜ると言ってもいいような対応をしてきたのは、ジェゼロとジェームの始まりに関係がある。ともに始まった兄弟国だった帝国は真の王である自分に手を貸すと思ったからだ。だがそれも、帝王に会うことができなければ何の価値もない希望だ。

「……」

 がたごとと直接響く揺れを受けながらジェゼロから共に旅をしてくれていた二頭を見る。格子の嵌められた小さな窓から見える景色に不安が渦巻いている。


ジェーム帝国編に入ります。まだナサナ国からは出ていませんが……

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