ゴブリン8話
「さぁーて。今から芸を行ってもらう。まず、鼻にストローを突っ込め。そして、それを口で思いっきり吸うんだ。そうすれば少しずつ脳みそが出てくる。それを口にため、そこの洗面器にうつしていけ。
そしてすべて吸い出しきったら、今度はストローをおしりの穴にさして、この世のすべての力をふりしぼって、吸い込め。頭に戻るまで、吸い込め。すべてが頭に戻った時。おまえを解放してやる。……生という、この世に縛り付ける苦痛から、な。くくく」
どしっと座る銀色の甲冑を前に、ゴブリンは俯くばかりだった。
できるわけがない。そんなこと、できない。どうやっても、できないもん。できないったら、できないもん。
そんな難しいこと言われても、無理だもん。ぼく、できないもん。
「できなければ、殺す。どっちにしろイウコト・ききなさいの魔法で、強制的にさせることはできるんだ。できないと思っているだろう?ふふふ。できるのさ。鼻は脳とつながっているからな。
物理学的に可能なことは、じつは証明されている」
おそろしい科学の事実を口にしながら、スレイヤーは不敵に笑う。ゴブリンは震えていた。
大体、生という苦痛から解放とか言ってる時点で、もう殺されるのは確定じゃないか。この悪魔め。
「やっばーい、超見たーい♪ 人間って、そんなことできるんだー♪あ、人間じゃなかった♪ケケケ」
神官の少女の嘲笑が響きわかる。このうえないほどムカつく表情で、彼女はこちらを指さし目を細める。
「ほら、やれー♪やれー♪」
「さぁ、やってもらうぞ、くくく」
押し黙るゴブリン。しかし、その目は、決して弱ってはいなかった。
「やらないと、いうことききなさーい、の指示が飛ぶぞ。ほらぁ」
けしかけるスレイヤー。それでもゴブリンは動かない。
「あっらら。これは使うしかないね♪魔法」
少女が笑いながら言う。
「ふん。仕方ないな。では使うか」
「(来たっ!)」
「イウコト・ききなさーい」発動!」
そのとき、女神が現れ、言った。
「イウコト。ききなさーいの女神・「関白万歳」です。この魔法を使う、ちぎりをかわせますか?」
「ああ。かわす、かわす。はいはい」
適当に答えるスレイヤー。慣れた感じだとわかる。
「このちぎりは、相手が7回守り切った場合、その相手にもあなたに魔法を使う権利が与えられます」
「ああ、はいはい」
「もう一度、確認します……いいですね」
そう、ゴブリンは、前回、魔法をかけられるとき、この女神と、この言葉を聞いていた。
これを見ていた。
女神が、言う。
「 も う 一 度 言 い ま す 。 相手が守り切ったとき、
あ な た も し な く て は な り ま せ ん よ ?
この行為を 」
スレイヤーは言った。
「 ああ。 はいはい 」
ゴブリンは笑った。
(続く)