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《第2話》再会


父親が去った後、自分の体の感触を確かめることにした。最初は軽いストレッチから始める。次にラジオ体操第1、第2と続けて行く。


(この体の身体能力なら幻の第3もできるんじゃ…)


 そんなことを考えていると部屋がノックされた。


「は、はい、どうぞ」


 声をかけるとドアがスライドし幼馴染の相沢美月と先生である神城優が部屋に入って来る。2人は軽く周囲を見渡した後、俺のことをじっと見つめてくる。


「よぉ…久しぶり?」


「奏なの?奏なんだよね!」


 そう言いながら抱きついて来る。


「おぉ、そうだけどいきなり抱きついて来るなよ」


 しばらく抱きつきながら泣いていた。先生も興味なっさげなそぶりを取ってはいるが少し涙ぐんでいた。


 少し落ち着いたのかゆっくりと美月が離れて行く。


「ごめん。ありがとう」


「まぁ、いいけど、それよりよく俺だってすぐわかったな」


「ゲームで使ってたアバターだしね、現実で見るとすごい違和感だけど…」


「そんなこと言うなよな、俺なんて目が覚めたらいきなり女になってたんだからな!

 現実とバーチャルがごちゃごちゃだよw最初なんて生まれ変わったのに記憶が残ってる!なんて思ってたぐらいだし」


「よかったじゃない。こんな美少女に生まれ変われて」


 そんな会話をしつつ先ほど聞いた自分の状況の説明を始めていく。2人とも事故にあったことは知っており、俺は近くの大学病院の集中治療室でずっと面会謝絶状態になっていたらしい。本当は陸上自衛隊の実験室に移されフルダイブ接続の準備が進んでいたことのカモフラージュであったが。


「そんなことになっていたのね…それで奏の体は今どうなっているの?」


「筋肉や脊髄の損傷がひどいみたいで細胞分裂を増進させる溶液の中で治療中みたい。母さん曰く、元に戻るのに後2.3年はかかるみたい。」


「ほぅ、そんなものがあるだ。僕は知らないなぁ」


 先生が珍しく興味有りげに会話に入ってくる。


「俺が事故にあった後に母さんが開発したみたいですよ。」


「君のお母様はいったい何者なんだい?そんなもの下手したらノーベル賞ものだよ?」


 確かに自分でもそう思うそんなものが実現して医療現場に出回る用になればたくさんの命が救われるはずである。すでに自分が命を救われた1人であるし。だが母さんはノーベル賞だといわれても気にしないだろう。なぜなら自分の興味があること以外何もしない人だから…今の立場にいるのだって父さん結婚したからだし…


「俺もわからないです…天才であることは間違いないんですがねー」


「それはいいとして、来週から学園に通うってことでいいんだね?理事長から来週から転入生が相沢さんのクラスに来るって聞いてたけど君とは思わなかったよ。」


「そうだったんですね!奏は休学扱いになってるし『カナデ』として編入するってことでしょ?大丈夫なの?」


「大丈夫なのかな?できれば行きたくはないんだけど、もう決まったことみたいだし頑張るしかないんじゃないかな?」


 ゲームでのネカマ歴は長いが女の子の格好をしてるだけで女の子としてふるまった経験はほとんどない。誰かとコミュニケーションを取る時は基本的にはテキストチャットを利用していたし、ボイスチャットで会話した人なんて片手で数えるほどだ。それにここにいる2人の前では普通に奏として会話をしていた。


「そこらへんは相沢さんがうまくサポートしてあげるしかないんじゃないかい?」


「そんな投げやりなこと言わないでくださいよ!先生もしっかりサポートするんですよ!」


「まあ、僕は基本的に保健室にいるからできることは少ないと思うよ」


「あ、母さんが先生には後で自分の研究室に顔を出してほしいって言ってました。俺の体のメンテナンスなんかの説明をしたいそうです。」


「君のお母さんの研究室を見れるの興味深いが君の体のメンテナンスは僕がするのかい?また面倒な仕事を押し付けられたもんだね…僕はできるだけ楽をして生きていきたいんだけどね…


先生はけだるげに愚痴をこぼす。


「それは奏に関わった時点で無理な話ですよ」


「美月…それはさすがにひどくない?俺はいたってまともじゃないか!」


 提出物などはほとんど出さないが成績は優秀。パソコン関連でも母さんには負けるがそこそこの技術は持っている。


「学校で周りの人とコミュニケーションがうまく取れない。運動はてっきりダメ。さらにゲームにはまって学校に来なくなる人がまともだと?さらにゲームの中でも問題を起こし放題!一緒にプレイしてた私たちまで白い目で見られたんだからね!」


 言い返せない内容をいくつも言われた。ゲームの中では問題を起こすというより色々な記録を塗り替えただけだと思うけど…今は口に出さないでおこう。


「…色々ご迷惑をお掛けしました…」


「現在進行形で『ご迷惑をおかけしてます』の間違いじゃないの!」


「まあまあ、相沢さんそこまで。僕も乗りかかった船だ仕方なしにやるよ。君のお母さんも待てると思うから僕はそろそろ失礼するよ。奏君は週明けに登校したら先に保健室に顔を出してくれるかな?その方が職員室でのトラブルを事前に防げそうだ。」


「それなら私も朝は保健室いきますね。色々と準備が必要そうですし。」


 2人はそういうと帰り支度をしながら当日の打ち合わせを始める。


「二人とも。これからよろしくお願いします」


 俺も学園生活がうまく行くように準備を始めようと思った。



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