僕と彼女と
其れは人の形をした災厄だった。総てを呑み込む闇だった。何故なら_____事情を知らない、何も関わりのなかった一般人をも、敵対種族という理由で殺し尽くしたのだから。
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ぐ、と唾を飲み込んで呼吸を落ち着ける。大丈夫、きっと大丈夫。根拠がなくても、僕はそう祈る他ない。
「なぁー?···もしや聞こえておらんのか?」
「···このような···このような雑兵に何用ですか?」
声が震える。怖い、のだろうか。殺したいほど憎い相手が、すぐ手の届く場所にるということが?否、まだ傷が癒えてないのだろう。あの恐怖は僕の心を深く抉っているのだろう。
が、しかし。そんな事いちいち覚えてないわ、とでも言うようにソイツは笑顔でこう言い放った。
「何を言っておるんだ。昔はよく遊んでやったというのに。」
「え?あそ···そんな事ありませんでしたよ?」
「何を言っておる。『隠れんぼ』だの『鬼ごっこ』だのをよくしたではないか。」
「···え?」
思い当たる節はあった。恐らく「あの日」の事だろう。
···この化物にとっては僕のあの日の絶望も、遊びでしかないのだろうか。そう思うと、今までの行動にもなんとなく納得がいった。
・・・・
気まぐれだ。総てが彼女にとっては気まぐれであり遊びなのだ。つまり彼女に敵意を悟られたところでなんの弊害もないのだろう。
「私は貴方のことを少し誤解していたようです。すみません。」
「ふむ?誤解とな?···まあ私は寛大だからな。気にするな。では、またな。」
「はい。では。」
少しずつ遠ざかっていく足音を背中に感じながら、僕はそっと胸を撫で下ろした。
ルカくん置いてけぼりすまん