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1話 異世界に召喚されました

はじめまして、私の名前は神科遥と言います。

何処にでもいる普通の年生だったなずなんですが、小学5年生の夏の不思議な出会いから、魔法少女をしています。とはいってももうすぐ15歳になる身。正直自分が魔法少女だなんて名乗ることに些か以上の抵抗がある年頃ではありますが。

普段は基本的にはうさぎとパンダが混ざったような、正直微妙に可愛くない姿の妖精さんのロールくんのお手伝いをするのが、私の魔法少女としての主なお仕事です。


ロール君と出会ってからもう4年。

もう大抵のことでは驚かないぞ!なんて思っていたのですが……、ただいま私、今までで一番驚きに満ち満ちています。もう一生、これ以上驚くことはないんじゃないかと思うくらいに。

何にそんなに驚いているのかというと、私はどうやら、異世界に召喚されてしまったようなのです。


いつも通り寝坊しかけてロール君に起こしてもらって、中学校の制服に着替えてさあ出よう!って扉に手をかけた瞬間、私の足元に魔法陣が現れました。

魔法陣ってかっこいいですね、私は魔法少女といっても魔法陣が現れたりするような魔法を使うことがないので少し憧れます。

ともかく、うわっ!と思ったのもつかの間、気づいたら知らない場所に召喚されていました。

なんですぐに異世界に召喚されたって分かったのか?

魔法少女的力のおかげです。直感的なものです。


「☆$%+○2°<+$€^」


召喚された先はなんだかゲームで出てきそうな儀式の間っぽい感じの場所でした。

私の目の前には魔法使いみたいなローブを着た人が3人います。大人の男の人が2人と、私より少し歳下の女の子が1人。

多分、この子が私を召喚した人なんでしょう。

魔力の感覚的に、なんとなくですけれど。


「¥¥×%<|〒々〆・・♪☆2+¥?」

「えっと……私の名前は神科遥って言います。……わかります?」

「〒☆♪?+×°%%$€<<€6^」


ダメみたいです。

言葉は通じませんが、雰囲気から相手も言葉が通じなくて困っている感じが伝わってきます。

3人で顔を見合わせて困った表情。微妙に女の子が責められてる感じがします。

ともかく、当たり前ですが言葉が通じなくては話になりません。


「言葉が通じるようになるにはなんて言ったらいいんでしょう?会話?違う。共通言語?もなんか違いますね」


1人ぶつぶつ言い出した私を訝しげに見る3人。

ちょっとまって下さいね。


「言葉が通じればいいのはもちろんなんですが、そもそも考えてることが伝われば良いので……以心伝心?いいえ、『意思疎通』でしょうか」


その瞬間、私の魔力が反応して言霊という名の魔法が発動する。

言葉を元にして発動する魔法。いわゆる言霊と言われる力です。

言葉と、想いと、魔力を元に発動する魔法。

私が未熟なこともあって言葉ならなんでもいいというわけではなく、言葉によって魔法として発動したりしなかったり、この力を使えるようになって4年経った今でも手探りして魔法を使っている状態です。


「これで言葉が通じるようになったはずですが……、私の名前は神科遥と言います。えっと、通じますか?」


呆然と…唖然と?した表情のまま反応がない2人の男の人と、1人の女の子。

多分成功したと思うんですけど、反応がないことには判断のしようがありません。


「あ……わ、わかります!通じます!私の名前はエリナ・シールフィです!私が貴女を召喚した主人です!」


良かった、魔法はちゃんと成功していたみたいです。



それから、そのままその場所で話をするのもなんなので、ってことでお客さん用の部屋って感じのところに連れて行かれました。

そして、そこでいろいろと事情を聞くことに。

とりあえず、最初に言葉が通じなかったのはどうも私のせいのようです。

本来なら召喚と同時に言葉が通じるようになる魔法も魔法陣に組み込まれていたようなのですが、どうも失敗してしまったようだ、と言っていました。

失敗したというか、多分私が無意識のうちにレジストしたのですが。

ちなみに魔法陣には他にもいくつか効果があったようで、言葉は濁していましたけど、おそらくは召喚者に対して従順になる魔法も組み込まれていたようです。


正直気分は良くないです。

相手の手前勝手で召喚されて主人とか言われれば、私が今反抗期な年頃とか関係なく反抗したくもなります。

しかも、送還する方法は知らないとか言われたらそれはもう、です。

こんな状況だと、いつもそばにくっついてきて鬱陶しいとか思っていたロール君でも、いないと少し心細……いえ、正直清々していますけど。


閑話休題。

とりあえず召喚された理由について、なんかいろいろ人とか国の名前をいっぱい言われて詳細に理解できたわけではないですけど、どうも侵略して征服して独裁しようとしてる魔王っぽい感じの人がいて助けてほしい、ってことだそうです。

召喚式は、こうなることを予言した昔の賢者さんが残した救世の魔法なんだそうです。

必ず救世できる力を持った人が召喚される召喚式だそうです。

SSR確定ガチャみたいですね。

というか最後の最後に人任せなんですねとか言いたいですけど、ぐっと我慢します。

中学生になって多少自制が聞くようになったのです。

思ったことがすぐ、ぺいって感じで口から出ていたいままでの私とは違うんです。


「言い伝えの最後には、その者が世界を救ってくれるだろう、と賢者様の言葉が残されているのです」


それにしても傍迷惑な賢者です。

なんだか知ってる傍迷惑な魔法使いと似ているような気がしてなりません。

というか多分本人か、関係者です。

私にめっちゃ嫌がらせしてきますし、めっちゃセクハラしてきますし、これもその一環と思うとあり得そうなのです。セクハラはダメ、絶対です。


そんな文句を言いたいところですが、エリナちゃんに言っても仕方ないので我慢します。


「残されているのですが……私は、幼い貴女にそのような大役を任せるのは非常に心苦しいのです。非常に優秀な魔法使いなのだろうとお見受け致しますが、しかしその……正直なところ、昔の物語に登場する勇者様のような方がいらっしゃると思っておりましたので……」

「その気持ちはすごい分かります」


しかしそれを今私に言うのはかなり失礼じゃないでしょうか。

ちなみに今、最初に一緒にいた男の人2人のうち1人しかいない。多分王様とか大臣さんとかに報告に行っているんじゃないかと思います。

残ったもう1人の男の人は、少し離れたところでこちらの様子を伺っているだけ。

私と女の子、エリナちゃんが歳が近い(2歳下でした)ということもあって、必要以上に警戒させずに話が出来るだろう、みたいな考えがあるんだろうなぁと思うんですけど、はてさて。


「ですよね!やっぱり助けてくれる人は格好いい人がいいなーとか考えてしまって……あ!でもハルカさんがいやってわけじゃないんですよ!私、小さな頃からずっと歳の近い女の子っていなかったので、ハルカさんが同い年って聞いてすごい嬉しかったんです!」

「そうだったんですかー」


むしろエリナちゃんが必要以上に気を許し過ぎてるみたいで、あまり言わない方がいいだろうことまでぽろぽろお話ししてくれています。

後ろの人が時折顔をしかめてたりするので、後でエリナちゃんが怒られるんじゃないかと少し不安です。


このエリナちゃん。

この国の中でも特に魔力が多くて、召喚するための巫女としての役割を代々受け継ぐ家系の子だそうです。

国ごとにそういう巫女さんがいて、召喚して助けてー!ってやってるそうです。

ただ、今までどこも成功していなくて、この国が成功したのが初めてだとか。他の国が隠していなければ、ですけれど。


とりあえず、多分この後王様に謁見です、とかなって挨拶させられるんでしょう。

それで、この国のために頑張れ!みたいな話があるんでしょう。


そんなことを考えているまさにその時、どこかに行っていた男の人――モームさんが戻ってきました。

同時に、部屋に残っていた人――ローダさんに立ち上がる様に促されて立ち上がります。

モームさんが扉を開けて招き入れたのは、私からすればおじいさんくらいのお歳の少し偉そうな人。態度ではなく雰囲気が。

さらに後ろからメイドさんもやってきました。


「始めまして、この国ウェーディリアス王国の宰相を務めるメートル・カタックです」


「始めまして、神科遥です」


よろしく、と手を出されたので握手。

こういう文化は異世界でも一緒なんだ、とか。

カタックさんがお偉いさんで私が軽く見られて控えおろう!とかされるのかと思ってたのにイメージが違うな、とか。

とりとめのないことを思いながら促され再び椅子に座ります。


「まずは召喚に応じていただいたことに感謝します」


強制的に召喚されただけです。

応じたわけではないです。


「……召喚される者は救世に足る力を持つ者と聞いております。同時に、召喚されたものは非協力的なことが多いとも。貴女は若くはあるが非常に冷静のようです。流石は資格を持つ者と言うことなのでしょう。風貌を見て侮る者もいるでしょうが、働きにて証明してもらえればと思います。」


ええと、褒められているのか、それとも私が若いから不安だって言いたいのか。

冷静とはいっても協力するなんてまだ一言も言っていないのですけど。


「さて、早速本題に入らせてもらいましょう。召喚された理由についてはある程度説明されていると思うのですが……」


「一応、簡単にではありますけど。悪魔的な侵略者がいるから倒してほしいとかどうとか」


「……ふむ、間違いではないがあっているとも言い難いですね」


ちらりとエリナちゃんを見ると、申し訳なさそうにうつむいていた。

私の理解力がないのか、エリナちゃんの説明が悪かったのか。

どちらにせよ14歳と12歳の子供だけで話をさせるのが悪いと思う。


「そうですね、まずこの国に伝わる昔話からお話ししましょう」


遥か昔、まだ国というものが出来る前の頃。

悪いことばかりを引き起こす「良くないもの」がいました。

その「良くないもの」は、人々に悪さばかりを行なって、いつも困らせていました。

旅人と出会えば道に迷わせる。

畑を耕している人がいれば、畑を無茶苦茶にする。

子供を育てていれば、子供を攫い捨ててきてしまう。

ある時、誰かが言いました。

みんなで協力してあいつを倒そう。

そうして、「良くないもの」を倒すための人々が集まりました。

しばらくして、集まったうちの1人が、「良くないもの」を倒したぞ!と言いました。

良かった良かった、なんて言っているのもつかの間。

また違う人が、「良くないもの」を倒したぞ!と言ったのです。

「良くないもの」を倒したという人がどんどん増えて、けれど「良くないもの」はなくなりませんでした。

最初は「良くないもの」は1つしかなかったはずが、いつの間にか、たくさん増えていたのです。

もっと人を増やして倒そうとすれば、増えた人よりももっと「良くないもの」は増えていました。

これはどうしようもない、と皆が言い始めた頃。

どこからか1人の老人が現れました。

その老人は言いました。

あの「良くないもの」は外から来たようだ。

外から来たものは、外の法でなければ倒せない。

あの「良くないもの」の倒すために、君達に外の法を教えてあげよう。

そうして、その老人は皆に魔法を教えてくれました。

魔法を使って倒すと、「良くないもの」はどんどん減っていきました。

そして、ついには1年に一度現れるか現れないか程度になっていたのです。

その頃には、その老人は賢者様と呼ばれるようになっていました。

賢者様は言いました。

もう大丈夫かもしれない。

けれど、「良くないもの」は決してなくならない。

遥か遠い未来、もしかするとまた「良くないもの」が増えてくるかもしれない。

皆が魔法を正しく理解していれば魔法で倒せるだろうけれど、もしかすると、倒せなくなっているかもしれない。

その時は、これを使いなさい。

そう言って、賢者様は召喚式を教えてくれました。

それは外の人を「良くないもの」を倒せる人を召喚してくれる。

もし万が一、また「良くないもの」が現れて、魔法で倒せなければ、それで召喚した人に助けを求めなさい。

そう言って、気が付けば賢者様はいなくなっていました。



「そして、召喚されたのが私ということですか」


そうです、と頷くカタックさん。

その横でエリナちゃんもコクコクと頷いている。


うーん、なるほど。

先程までは勝手に召喚されて勝手に手伝えだなんだと傍迷惑な!なんて思っていたのですが、昔話を聞くとそんなの知りませんなんて言える感じでもなさそうです。

というのも、その『よくないもの』は多分、元の世界で私が魔法少女として浄化している存在でしょうから。


「昔話についてはわかりましたが、それがどうして『悪魔的な侵略者』を倒すにつながるのでしょう?」


「その侵略者がよくないものに憑かれているからです。元々は各国の中でも特に平和主義的な王だったのですが、2年ほど前から急に人が変わったように好戦的になり、侵略を開始し始めたのです」


「なるほど」


私の知っている事件でも誰かに取り憑くということは確かにあったので、可能性としては高いでしょう。


「『よくないもの』についてはお力になれるでしょう。でも、国同士の戦いに関してはお力になれそうにありません」


「どういうことでしょう?」


ただ、あくまでも私が関わって来たのは1つの街で起こった色々な事件についてであって、国同士で戦争が起こる様な規模のお話については当然関わったことなんてありません。

魔法なんてファンタジーなことに関わっていても、基本的にはただの学生です。


「私の下の世界における身分は学生です。国自体が平和で戦争もなく、国内で争いが起こる様なことも皆無。私は魔法に関わり『よくないもの』のような問題に対処することはありましたが、戦争のような人と人の戦い、殺し合いと言ったことに関わったことはないのです」


「そこについてはご安心ください、我々も戦力を求めていたわけではありません」


それなら良かった、と私は内心胸をなでおろします。

全く無関係を貫くことは難しいでしょうけれど、ジャンヌダルクよろしく矢面に立たされるようなことはしたくありません。

私の仕事は魔法関係についてのみ。そのほかについては極力関わらないにこしたことはないのです。


「ただ、自衛手段はお持ちいただいていた方が良いですね。現在は戦時中ですので、どこで何があるかわかりませんので」


「心得ています」


その程度は仕方がないでしょう。

いえ、わざと前線に行く必要があるからと連れられて無理矢理戦わざるを得ない状況を作られる可能性もありますからね……。

どちらにせよ注意するに越したことはないでしょう。


「さて、大まかに状況を理解いただいたところで今後の行動指針について詳細なお話をいていきたいのですが……」




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