博士
「まぁ、立ち話もなんだ座りたまえ、トーラ、コーヒーを淹れてくれないか」
「かしこまりましたパパ」
「このトーラというのはいい名前だ。君がつけてくれたといったね、ありがとう」
「いえ、それより話の続きを」
「そもそも私は何を作ろうとしていたのか分かるかね?」
「それは博士が言っていたじゃないですか、機械に意思を持たせることだって」
「あぁ、確かにそうだそしてそれは見事成功し、君という完成形がいま目の前にいる」
「ではもう博士の夢は叶ったと?」
博士は黙ったまま首を横へふる。
「成功したのは君だけだよ、そしてそれは私の夢の終わりではない」
「どういう意味ですか?」
「私が言っていたのは、機械の体に魂を定着させることだったんだ。笑ってくれていい科学者たるもの魂などという不確かなものにうつつを抜かす哀れな私を」
「…、意思を持たせるのと、魂を持たせるのは違うのですか?」
「全然違うとも、完成形である君と2号機であるトーラとでは何か決定的な差があるんだ。それが何なのか私は知りたい、そして必ず…いやなんでもない、確かにトーラはある程度自分で考え行動する。しかし、それはあくまでAIとしての行動に過ぎない」
「しかし、アモールでトーラは命令なしに人助けをしていましたよ?」
「それは、そうすることが一番その場面で効率のいいことだと判断したにすぎない、君のような人間臭さが足りないのだ。例えばそうだな、いま君は指で机をトントンと叩いているがそれは何のためかね?」
「特に理由はありませんが…」
「そうそれだよ、特に意味のない行動それこそが君とトーラとの決定的な差だ、君は一体どうしたらそのように人間らしさがだせるのか」
「それは私が人間をコピーしたからと言う可能性は?」
「確かにその可能性もある、しかし君のその体は見たところ女性だろう?だが君のその仕草や話し方はどうも男性のような気がしてね」
このオッサン妙に鋭いな、最初の頃は気にしてなかったけど、今はかなり女性らしくしてるつもりだったが。
「それと、君は他人の能力等はトレースできても、性格や記憶といったものはトレース出来ないはず、でないと毎回違うものになっていたら扱いづらいしねぇ、基本的には君というベースに他人と言う皮を被っている状態なのさ」
「しかし、この体をトレースしたとき彼女の記憶の一部が流れ込んできたのですが、矛盾していませんか?」
「ふむ、そこなんだよ君は本来他の物をただトレースするだけのはずだった。しかし、君はその力の良いところだけを取り入れて進化した。本来ない機能を、つまり余計なものを取り入れたのだ、これはAIにはできない」
「それと、君はそのオリジナルの記憶が流れ込んできたといったね」
「はい、それが?」
「何故それが彼女の記憶だと分かったんだい?もしかしたら私が埋め込んだ記憶と言う可能性もあったはずだ、だが君は彼女の記憶だと断定した。それは何故か、君には生前の記憶があるんじゃないのかい?私が埋め込んだにしろ、彼女の記憶にしろ、自分の記憶に当てはまらないものだから、それを彼女の記憶だと思った、違うかい?」
驚いたな、まさかそこまで的確に当てられるとは見た目はただの痩せたオッサンって感じだけどやはり俺を作り出した人物なだけはある。
「ともかく君には魂が宿り、トーラには宿らなかった。その違いを知りたいんだ、本当なら少し君のことを調べてみたいのだが…」
このオッサン目がヤバい!こんなところで分解なんてされたらたまらないぞ!?
「な、ならトーラを何故私と同じ型にしなかったのですか?」
「私もそうしたかったさ、だが上の奴らが求めているのはただの兵器としてのロボット、意見の違いで僕は干されたって訳さ」
それでこんなボロ家にいるのか。
「それじゃあトーラのマスターキーは博士が?」
「いや、やつらもそこまでバカじゃないさ、トーラは見た目こそ子供だがその力は絶大だ。そんな力を易々手放す訳がない」
それは確かにトーラの力はおそらく俺が見てきたなかで最強だといってもいい。
「だが、奴らはトーラのデータだけとって後は好きにしろだとさ、元々私が作ったのだがね」
博士はやれやれといった様子でコーヒーを一口すすった。
「トーラは私の命令に従うが、もしマスターキーを持ったものの命令があればそちらを優先するだろう。マスターキーでの命令には逆らえない」
「パパ、生体反応が3つ接近してきます」
「おっとお客さんだ、君達は隠れていたまへ」




