美少女の俺、魔物と戦う
ふと思ったが、洞窟を一瞬で出る魔法があるなら、町へ一瞬にいく魔法もあるんじゃないか?
「あります、しかしマスターが一度訪れてイメージできる場所でないと行くことが出来ません」
少し期待したが、やはり徒歩でないとだめなようだ。鬱蒼とした森の中をひたすら歩いていく。辺りは既に暗く、何かの鳴き声や木々のざわめきが恐怖心を仰ぐ。
「本当にこの道であってるのか?」
「はい、マスターこの道が町までの最短距離です」
もっとこう安全な道の方がよかった、こんないかにも魔物が出てきそうな場所を歩いていると…。
突然茂みがざわつきそこから、一匹のでかい犬が飛び出してきた。
そうそうこんな狼みたいな、魔物が…っていってるそばから魔物来たんだけどぉ!フラグ立てるんじゃなかった。
「ニコ!」
「はい、マスター」
「何か武器はないのか?」
「マスターには、武器に該当する装備は実装されておりません」
甘かった、ロボットなのだから銃の一つや二つあるかと思っていたのだが。
どうする?今の俺はか弱い少女、前世の俺でもこんなでかい犬、というより狼に勝てる気がまるでしない。
魔物は敵意むき出しといった様子でこちらを威嚇しながらにじりよってくる。
せっかく転生したのにいきなりゲームオーバーのピンチ、研究所から必死に逃げ延びたのに、こんなところで死ねるか!
「ニコ、何か武器になりそうなものはないのか?」
「検索中、マスターの足元に落ちている棒が一番攻撃力が高い装備だと思われます」
マジか、こんな棒切れであの狼を倒せるとは思えない、とはいえ逃げ切れるとも思えない、やるしかない、覚悟を決め棒を拾い上げる。
「で、どうすればいいんだ?俺武術経験なんてまったくないぞ?」
「ノープロブレムですマスター、少女の技能はすでにインストール済みです」
そうか、俺が武術経験がなくともこの少女の技能を借りればいいわけか。
っと、ついに魔物がこちらに走り飛びかかってきた。
グルルルァァ
「きゃっ!」
思わず目をつぶり女の子みたいな声が出てしまった。まぁ実際今の俺は女の子なわけだが。
キャイ~ン
そう聞こえた、そっと目を開けると魔物は後ずさりしながら再びきをうかがっている。何が起きた?
「マスターは、魔物の牙と爪を寸前で交わし魔物の腹部に武器によるダメージを与えました。流石ですマスター」
再び助走をつけ魔物は襲いかかってくる。今度は目をつぶらない、魔物の動きをしっかりと目で捉える。俺はひらりと身を翻し、魔物の首元に力いっぱい棒を叩きつけた。
ギャイン!
魔物はよろよろとし、地面にうずくまるとそのまま動かなくなっった。
勝った・・・のか?その場にへなへなと座り込む。なんとか生き延びた。この体が強くてよかった。
早く町に行かなくては、また魔物が襲ってきてもおかしくはない。まだ震えている足でなんとか立ち上がる。
「ニコ、なるべく魔物がいそうにないルートで頼む」
「イエス、マスター」