キアラとミナの過去
「この辺りにしようぜ」
開けた場所に腰を降ろすゼルとミネア、俺も先程の戦闘で魔力をだいぶ使ってしまったらしい。
「リース」
「魔除けの結界を張ったのです、これでしばらくは安全なのです」
ミナって何かとすごいよな、便利な魔法をここぞと言うときに使えるし、痒いところに手が届くと言うか良くできた妹だ。
「ありがとう」
そう言い頭を撫でてやると、恥ずかしそうにしているが拒みはしなかった。ゼルとミネアの方に目をやると、よほど疲れたのか眠りについていた。
「私たちも少し寝ようか」
しかし、ミナは困ったような顔をして何やら言いたげな表情をうかべている。
「どうかしたのか?」
「いえ、ただこういった場所で寝るのは慣れていなくて」
確かに周りは岩だらけでゴツゴツしているし、若干寒さも感じる。この中で寝るのは慣れていないと難しいかもしれない、まぁ俺も慣れているわけではないのだが。
ミナの手を引き膝の上に座らせる。
「これなら、多少は休みやすいだろ?」
「…、アキラさんは時々姉様のようなことをするのですね、ミナは時々わからなくなるのですよ」
「前にもいったでしょ?私はアキラだって」
「そうですね、姉様の方がもっと優しくて品があって美しいのです」
そこまで言わなくてもよくね?確かにキアラの方がおしとやかだけどぉ。
「キアラの事聞かせてくれないか?私はまだキアラの事をよく知らないんだ」
「姉様は…、姉様と私はエルフの母と人間の父の間に生まれました。エルフは他国との接触をあまり好まない国、人間と家族になったお母様は周りから白い目で見られていました。それに嫌けがさしたのか、お父様は私が生まれる前に家を出ていったと聞いています。まったく無責任な父親なのですよ」
そう言いながら話すミナは、どこか悲しそうな顔をしている。無責任な父親とはいえ親は親、寂しい部分もあるのだろう。
「お母様は、女手一つで姉様とミナを育ててくれたのです。ハーフエルフである姉様とミナは、やはり周りからあまり受け入れてもらえなかったのです、よく町の子と喧嘩して泣いた私を姉様がおんぶしてくれました。家に帰ると決まってお母様が歌を聞かせてくれていたのです。ミナと姉様はその歌が大好きでした」
「この歌は私のお母さんから教えてもらった歌なの、あなたたちも子供ができたら歌って聞かせなさい」
「お母様は、いつもそういっていました。しかし、ある時難病にかかってしまったのです。その病気を治すには、巫女の力と薬草が必要だったのですが生憎、その薬草は切らしていて巫女も遠くの町にはいましたが、この近辺には当時いなかったのです。姉様は一人薬草を取りに森へ入っていきました。その時私は何もできなくてただ待つことしか出来なかったのです」
「姉様が薬草を手に戻ってきた頃にはお母様はもう息をするのも辛い様子でした。薬草はありました。しかし、巫女がいなかったのです。私たちはあまりの無力さになすすべがありませんでした」
「母は最後にこういったのです」
「お父さんは出ていってしまったけど、決して恨まないでね、あの人がいなかったらあなたたちに出会えなかったのだもの、最後を一人で迎えてたかもしれないわ、生まれてきてくれてありがとう」
ミナは涙を拭いながら話を続ける。
「それから姉様と私は巫女になることにしたのです、多くの命を救うために、もう何も出来ないのは嫌なのです」
ミナの肩は震えている、俺はミナを優しく抱きしめる。キアラと精神が一部共有されたことで、俺の中にはキアラの記憶がいくつかある。それで俺はこの姉妹の事を知った気になっていたが、俺はこの姉妹の事を何も理解してはいなかったのだ。
「すみません、アキラさんこんな話をしてしまって、泣き虫なのは直らないのですよ、今ではお母様の代わりに姉様が泣き虫なミナのために時々歌ってくれていたのです」
ミナとキアラの母親が聞かせてくれた歌、俺はその歌を知っている。正確にはキアラが記憶した歌を知っている。
「らーらーらららーららー」
「その歌はお母様の…」
「らーらららーらー」
「お母様、姉様」
気づくとミナはぐっすりと眠っていた。
「お休み、ミー」




