偽物の私、オリジナルと対面する
「そこからは、私が話します」
「私は人でもハーフエルフでもありません、ただ、今言えることは対象を真似て、それを実体化出来るということです」
「私は、追っ手から逃げるため偶然にもミドレイユ洞窟に足を踏み入れ、彼女をコピーしました。結果、封印は弱まり各地で魔物が徘徊しだしてしまったのです。テーテ村が魔物に襲われたのも、私の責任です。私が行った身勝手な結果なのです」
「対象をコピーするなどという、魔法は聞いたことがありません、あなたは一体何者なのですか?」
ミナの問いは当然だ。しかし、ここで私の正体を明かしてもなんのメリットもない、捕らえられ処分されるだけならまだいいが、人間側とエルフ側で戦争になりかねない。秘密裏に開発してた兵器がエルフの領土に侵入していたのだから。人間側も取り返しに来るだろう。なので、ここでは最低限言える範囲で話をすることにした。
「それは、まだ言えません。しかし、これだけは言えます。私達はあなた方の敵ではありません。信用出来ないかもしれませんが、敵ではない、そこだけは間違いありません」
私に言えるのはここまでだ。同じ顔した偽物が何をいってももはや信じてもらえないだろうが…。
「偽物が何をいっても、信用できるはずが…」
「信用します」
そう言ったのは、キアラだった。キアラからしたら、自分の偽物が封印を解いたあげくこの場で信用してくれというのは、無理がありそうな話だが。
「私は、彼女に取り込まれるまでずっと眠っていました。そして、彼女に取り込まれたことにより、私と彼女の精神は少なからず交わっていたのです。私の中に彼女の記憶が、彼女の中に私の記憶がそれぞれ少しずつでしたが、混じりあっていました」
確かに、私は時より自分の記憶にないものが見えたりするときがあった。それは、封印の解析が進むごとに私の記憶と少しずつ混じりあっていたのだ。しかし、ニコはオリジナルの記憶や感情はコピーできないといっていたのに、最初の解析が成されたとき、ハルを守りたいその一新である感情が解放された。慈しみそれは、私の感情ではなかった。
その感情は、私の精神に染み渡ると守るための力を解放した。その後も、勇気、悲しみ、怒り、感情が解放されるたびに私はキアラに近付いていったのだ。
「私は彼女の体内で、彼女の精神に触れました。そして、ここに来るまでの旅も記憶しています。困っているものを助け、魔物を退ける、それは信頼するに値するものだと私は思います」
「姉様がそう言うのでしたら、私も信じます」
キアラはこちらを見るとニコッと笑顔を見せた。どうやら揉め事にはならずにすみそうだ。ハルも一安心といった様子。
「ありがとうございます、キアラさんあなたのお陰で助かりました」
「あなた方の事情も何となく理解していますし、戦争になるのは私たちも避けたいところなのです」
キアラが、いい人で良かった。まぁそれは、キアラの記憶を見る限りわかっていたことだが。
「それにしてもそっくりですね」
キアラは、しげしげと私の顔を見回す。
「はい、私も最近自分が誰だったのか分からなくなるんです。私の記憶と、あなたの記憶、それが混じりあってどちらが本当の自分なのか頭が混乱して…」
「あなたのお名前は何て言うのかしら?」
「アキラです」
「あなたは、あなた。それ以上でも以下でもない、キアラという人物の歩いてきた記憶をほんの少し垣間見たたけであって、あなたが歩いてきた道にあった、ほんの些細なものでしかないのですわアキラ」
「それに、あなたの記憶にある強い思い、それは私の中にはない決して消えないものなのでしょう?」
その言葉に私は気づかされた、そう、俺には帰らなければならない場所があるのだと、その思いは誰のものでもないおれ自身の物なのだと!
「ありがとうキアラ、私は大事なことを忘れるところだった」
「その思いが有る限り、姿形が変わろうともきっとアキラだと誰もがわかりますわ」
キアラは笑顔でそう答えた。思えばハルも姿が変わった俺をすぐに俺だと分かった。それは、形は変わっても魂までは変わっていなかったからだと気づかされた。俺はアキラだ!そして必ず元の世界に戻ってみせる!




