美少女の俺、一日を終える
ベットは一つしかなかったが、贅沢は言えない、女二人だからベットは一つでも問題はない…、いや問題はないはずだ、あるはずがない。ペットに欲情などするはずもない。
「それにしてもハル、よく俺だと気づいたな?」
転生した俺はもはや人間ですらなく、今の姿も借り物に過ぎなかった。
「ご主人様を間違えるはずがありません!ご主人様はお腹が空いて、凍えている私を救ってくださいました。たとえ、姿かたちが変わろうとも、ハルには分かります!」
そうか、そういうものなのか、よくわからないがハルがそう言っているのならそうなのだろう。実際俺だとすぐにわかったのだから。
「またこうして会えるなんて、ハルは幸せですぅ、ずびぃ」
ああ、よしよし胸に飛び込んできたハルをなでてやる、ハルってこんな泣き虫だったのか、ネコは泣かないからよくわからなかったが、こうしてすぐ懐に飛び込んでくるところは変わってないな。
すーすー。
しばらくすると泣きつかれたのか寝息をたてだした、どうやら寝たらしい、ハルをベットに寝かしつけ窓から外を見る。この世界にも月があるんだな。月はちょうど満月のようだった。その月にポケットから取り出した銅貨を重ねる。
「ニコ、銅貨の価値はどれくらいだ?」
「銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚の価値がアリマス」
「貨幣以外にも帝国が発行している紙幣も存在しますが、一般的には広まっていないようデス」
しばらくは資金を稼がないといけないようだな、またあの魔物とやり合うのかと思うと気が気ではない。
働かざるもの食うべからず、こっちの世界でも仕事をしないと生きていくのは難しそうだ。はぁ、ニートの頃が懐かしい。
なんだか俺も眠くなってきた。やはりアンドロイドとはいえ今は少女、この状態だと普通の人間と大差ないらしい。それに今日は色々あって疲れた。
「そろそろ寝よう」
「イエス、マスターこれよりスリープモードに移行します。グッナイ、良い夢をマスター」
ベットに入るとよほど疲れていたのか、すぐに眠りについた。
うえ~ん、うえ~ん
幼い僕が泣いている。
昔、飼っていたネコが死んだ。寿命だったらしい、実家で飼っていた僕が赤ちゃんの頃から一緒にいたネコだったが僕が小学生の高学年に上がる時に死んでしまったのだ。すごく悲しくて幼い僕には死というものが理解できなかった。
その時、隣に住んでいた同い年の女の子がこういったのを覚えている。
「明君がいつまでも泣いてたら、ネコさんも安心して天国にいけないよ?おっきくなったら私が結婚してあげる、そしたらまたネコを飼おうよ、そして、名前をつけるの・・・」
その少女は、その後親の都合で引っ越してしまった。そんな思い出があった。
俺があのときハルを見捨てれなかったのも、偶然じゃないのかもな・・・。