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小話と短編は連載となる  作者: 黒田明人
1章 小話1と小話2より抜粋
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06 転生ワイン






 実はアタシってさ、ちょっと変な能力があるの。


 それはさ、どっかの司教様が持っていたら良かったような能力でさ、アタシなんかが持ってても意味の無い能力なの。

 神様のお言葉が聞けるという、その手の業界では誰もが求める能力らしくてさ、アタシも就職先が見つからなかったら、教会で能力を生かしてって道もあったのよね。

 でもさ、その能力持ちは教会からありがたがられる能力でもあるからさ、一度知られたらもう離してくれなくなるらしいのよ。


 まあそうよね。


 預言とかそう簡単に得られるスキルじゃなくてさ、ちゃんとレアスキルの枠に入っているの。

 たださ、アタシ思ったんだけど、この能力ってさ、本当ははた迷惑なスキルなんじゃないかと思うのよ。

 何故かと言うとさ、これってパッシブスキルなのよ。

 パッシブスキルって分かる? 常時発動のスキルの事よ。


 つまりさ、神様の都合で話が始まるの。


 だからさ、合コンでイイ男と話が弾んでいた時だろうと、仕事が忙しくて時間が無い時だろうと、お客様との会話の最中だろうと、勝手にいきなり始まるのよ。

 んでもってそれを無視とかしたらさ、頭が段々と痛くなってくるのよ。


 でもさ、オシゴトの話をいきなり切れないじゃない。


 だからもう、頭の痛いのを堪えて早急に話を終わらせるのがやっとなのに、それでも毎回神様に文句言われるのよ。

 理不尽だと思ってもスキルは捨てられないし、パッシブだから切れないのよね。


 だから自然と酒量が増えちゃってさ。


 その日も晩酌という名のストレス発散をやっていた時なんだけどさ、またぞろ神様からのお話が始まったの。


『実はの、転生させねばならぬ事になったのじゃが、その人選に弱っての』


 そんなの知るかよ、とか言いたいけど、神様からの相談は愚痴よりも大変でさ、それなりに返答しないと拙いのよね。

 愚痴ならまだ聞き流しておけば終わるけど、相談はそうはいかないの。

 だけどその日はもうかなりお酒が入っていてさ、つい、やっちまったのよ。


『スーパーのリカーコーナーに特別なワインを混入させて、それを飲んだ者を転生させればいいんじゃない? 』


 その時はイイアイディアだと思ったんだけどさ。

 それでひとまず相談が終わり、イイ調子でふんわりとした気分のまま眠ったの。

 そしてその翌日の夜の事だったわ、またぞろ晩酌をしようとして、見た事の無いワインがあったのよね。


「こんなの買ったかしら」


 そう思いつつ、飲もうと思った直前、昨夜の事を思い出したのよ。

 まさか……そう思ったけど、思い出したら飲めないわよね。

 それでどうしようかと思ったんだけど、以前の合コンで話をした異世界オタクなカレを思い出してさ、そのカレにワインを進呈してみたの。

 そのカレ、趣味じゃないんだけど、ちょっとストーカー気質って言うのかな、最近段々とうっとおしくなっててさ、物は試しでやってみたの。


『やっと僕の事を見てくれるんだね、嬉しいよ』


 もしこれであれが夢ならヤバい事になるかもって、背筋に寒気が走ったけどもう止められない。

 だから合ってますようにと祈りながら、数日後のデートの約束を取り付けたの。

 だけどさ、それからウチの周りでそのカレ、見かけなくなったのよ。


 やったね、って思ったわ。


 それからどうやら神様が味を占めちゃったみたいでさ、時々見た事の無いワインが混ざるようになっちゃったの。

 だけどそんなに何度も渡す相手なんか居ないからさ、放置してたら最後通牒受けちゃったの。


『渡さねばおぬしが異世界に行く事になるぞぃ』


 それからというもの、ファンタジー系の合コンに積極的に出るようになってさ、異世界オタクにワインを渡すようになったの。

 それでも毎回渡して行方不明とか、ヤバい事このうえないからさ、段々と持て余すようになってきたの。

 この前さ、持て余してつい、飲み屋のテーブルにそれとなく置いて出たんだけど、そこのマスターが行方不明になっちゃったの。

 気に入っていた店だったのに、残念な話よね。

 それからも何度か置き逃げしてたんだけど、行方不明になる人と客の関連での事情聴取で毎回とか、ヤバいからそれもやれなくなったの。


「またお前か」


 とか言われたらヤバいでしょ。

 だからさ、本当に困るのよね。

 神様、そんなに大量に送るなら、どっかのクラス丸ごと異世界転移、とかどう?

 とか言ったんだけど、必要で1人ずつだから無理だと言いやがんの。

 もうね、渡す相手居ないのよ。


「誰か異世界転生出来るワイン、要りませんか? 」

 

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