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小話と短編は連載となる  作者: 黒田明人
1章 小話1と小話2より抜粋
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05 出遅れた勇者






 異世界に到着するも誰もいない。


 廃墟のような場所に召喚陣が描かれ、そこに現れたのは良いが、出迎えるはずの人は居らず、無人の王宮らしき崩れたガレキが散乱している場所で途方に暮れる。


 確か神様は魔王討伐の為の召喚と言っていたはず。


 あの日、オレ達5人は教室から神様の世界らしき場所に誘致され、勇者召還が発動したと言われたんだ。

 そしてもう戻れないとか言うもんでさ、やれ誘拐だの拉致だのと騒いだらさ、個別面談にするとか言って天使みたいなのが出て来て5人バラバラに離れての準備になったんだ。


 まあ、オレも戻れないとか言われて、それなら仕方が無いと思ってはいたんだけど、あいつらさ、カップルが2組なんだわ。

 だからオレは良いとしても、あいつらは戻りたいだろうと、代わりにオレがな。

 そりゃオレは独り者だけど、あいつらは近所の奴らで幼馴染だしよ。


 まあそれは今はいいや。


 とにかく願いを3つと言われて、1つ目に『世界のあらゆる使用言語が理解出来るようにしてくれ』って言って、そこで担当さんと少し揉めたと言うか、『どうせなら発掘された遺跡に書かれてある文字も知りたい』と言ったせいなのか、『物凄い種類があるんですよ』とか言ってて、『神様も万能じゃないんだな』とか軽く愚痴ったら担当さんが『なんですって! 』ってむきになってさ、それで結局は世界で使われている言語は全て読み書き出来て、古文書や遺跡の文字はカタコトぐらいは読めるぐらいに妥協したんだ。


 それで2つ目の願いだけど、やはり当然、『アイテムボックスが欲しい』と言ったんだけど、『検索機能ぐらいはあるよね』って聞いたら無いとか言うもんでさ、まだぞろ万能疑惑説をやったらさ、『ちょっと待ってください』と言ってしばらく待たされた結果、『検索は今更付けられないけど、代わりにソート機能を付けますから』って、それでまた妥協したんだ。


 そして最後の3つ目の願いなんだけど、オレは行った先で胃袋を掴まれるのが嫌でさ、それに小説なんかでは食い物が不味いとかよく聞く話ってんで、1つの願いを丸々使って、『あらゆる生活物資に雑貨、衣類、武器、防具、乗り物……』ってつらつら言ってたら、『それはいくら何でも多過ぎます』とかのたまいやがってよ、またぞろあの説を出そうとしたんだけど、『余りに多過ぎるので、こちらが指定しますね。これは決定事項です』と言って聞かなくてさ、まあ、お願いするほうだから仕方が無いと思って、それも妥協したんだ。


 でまぁ、そんなやりとりをしていたら遅くなっちまってさ、『他の方達はもうとっくに行きましたよ』とか言われてさ、慌てて神様に『終わりました』と告げたんだ。

 その時に『長かったですね』と聞かれたので、『一生物なので、じっくり選んでました』と答えたら、じっとオレの顔を見ていたと思ったら、ため息をついて『送りますね』と言ったんだ。

 オレは『何かあるんですか』と聞いたらただ一言、『行けば分かります』と言われ、この世界に送り出されたんだ。


 それで到着したけど、あいつら居ないんだ。


 ◇


 まあとりあえずメシにするかと、アイテムボックスの中を見る。


 ・復活パン

 ・無限果実の植木鉢

 ・枯れない水筒

 ・服各種(上・中・下)

 ・薬品各種(薬・品)


 下着って種類があるんだな。

 パンツにシャツに靴下にその他? なんだこりゃ。

 てかさぁ、オレは男なのになんで女の下着も入っているんだよ。

 その他の項目の内訳だけどさ、双丘ガードやら体型補正下着やら、色々入っているんだよな。

 特に双丘ガードはサイズも豊富で……って誰が使うんだよ。


 次に中着か。


 中着って何かと思ったら、トレーナーとかそんな感じのがわんさか入っていた。

 さすが願いをひとつ、そっくり使うだけの事はあるかと思ったけど、物凄い物資だな、こりゃ。

 上着も種類豊富だし、スラックスやらカーゴパンツからジャージに至るまで、フルサイズでそれぞれ数十本ずつってさ。

 後は武器だけど、ナイフ、包丁、ショートソード、刀、ロングソード、バスタードソード、弓、弩、後は魔法銃?

 魔法を撃ち出す銃らしいけど、オレって魔法を普通に使えないのか?

 まあ、教えてくれる人も居ないから、そのほうがありがたいとは思うが、本当はこう、ズバッと使いたいよな、異世界なんだしさ。


 防具も色々あるな。


 最後は薬品だけど、これって薬と品って意味だな。

 つまりさ、医薬品と関連物資の略っぽいのさ。

 だってさ、薬局にあるような多種多様な薬に始まって、夜の必需品やらトイレの必需品やらが、これまた大量に入っている。


 結論。


 確かに至れり尽くせりで、この物資があれば悠々自適に暮らす事は可能だと思う。

 こちらで選ぶと言われて不安だったけど、これなら文句は一応無いさ。

 だけどさ、誰も居ない世界でこんなの持ち腐れになるだけだろ。


 第一、オレは何の為に召喚されたんだよ。


 ◇


 あれからどれぐらいが過ぎたのか、何処に行っても廃墟ばかりで人に逢えないままだ。

 人ばかりか動物も居らず、馬車を改造して足漕ぎにするのがやっとだったけど、これじゃ長期移動は難しい。

 それでも西に西にと移動しているんだけど、この世界ってどうなったんだろう。


 もしかしてもう人類は滅亡しているんだろうか?


 今日も魔物にしか会えず、襲われるから殺している。

 殺すと煙になって消えるから、食物はアイテムボックスの中のしか無い。

 毎日同じ食料にも飽きたけど、何処の廃墟に行っても食い物なんかは全然見当たらないんだ。


 そうそう、オレ以外の勇者の消息が分かったんだ。


 どうやらオレ以外は数年前に召喚されたらしく、魔王に負けたらしい。

 資料には一応、西の地に逃れるような事が書かれていたから、今もこうして西に移動しているんだ。

 だけどさ、あいつらの遺留品と思しき品が、通り過ぎた廃墟の中にあったんだ。

 だからあいつらはもう、とっくに死んでいるんじゃないかと思うんだ。


 なあ、神様。


 なんでオレだけ召還が遅れたんだ。

 1人足りなかったから負けたのか?

 それとも、どうしようもなかったのか?


 教えてくれよ、なあ、神様。


 ◇


 天使・『やっと終わりました』

 神様・『やれやれ、彼だけかなり遅くなりましたね』

 天使・『間に合うんでしょうか? 』

 神様・『ここでの1分は向こうでの10日。だから早く決めて欲しかったんですが、彼は2時間も滞在しました。他の者達は揃って10分未満、彼らに遅れる事110分の違いはそのままの遅れに繋がり、彼が相談しているさなかに送り出した者達は……』

 天使・『申し訳ありません』

 神様・『いえ、良いのです。貴方に罪はありませんよ』

 天使・『3年ですか』

 神様・『そうですね』

 天使・『彼はこれからどうなるのでしょう』

 神様・『単独での討伐になるのでしょうね』

 天使・『それはまた、絶望的な』

 神様・『彼は一生涯を費やす覚悟があるようですので、一生賭けて攻略して欲しいと思います』

 天使・『そう言えばそう言ってましたね』

 神様・『はい』

 

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