17 色々想定外らしい
なるべくあの街から遠ざかるように、足早に小走りにそして全力を挟みつつ、着いた場所はかつての場所、つまりは最初の廃墟の場所だった。
やれやれ、戻っちまったな。
それにしても、あの街しか人類が居ないって事も無かろうに、本当に出会わないものだな。
人間もどき1体と役人1人しか出会ってないぞ。
◇
勝手知ったる、初回の廃墟。
使っていた鍛冶屋の仮宿にとりあえず住むとして、荷車の中から色々取り出しておく。
どのみちベッドも使うから、囲炉裏端に置いておくか。
道具の修理なんかもしたいから並べておこうか。
荷車は横付けにして、ドアの代わりに使うとして、隙間風は防げないけど、野犬とかは防げそうだな。
途中で狩った動物の解体もしないといけないけど、倉庫の中だからとりあえずは良いかな。
道具を出す羽目になりはしたものの、時の止まる倉庫は獲物の仮置きには最適だからな、
どうしても道具類は出す羽目になる。
それでもかなりの数を狩ったから、当分は狩りに行く必要も無いだろう。
それはそれとして、あの街から鍋やヤカンやその他調理器具をせしめたし、鉱石の類も荷車に満載だし、小麦もそれなりにあるし、布団に毛布にベッドに枕と。
かつてとは全然違うから、しばらくの滞在もやれるだろう。
塩もたくさんあるしな。
そういやあの町でも塩は手に入ったんだが、意外と調味料が豊富なのかな。
特に商会っぽい店では香辛料っぽいのも色々あったし、乾燥した食材っぽいのも色々あったので、邪魔にならない程度はせしめておいたんだが、あんまり高くないのなら、買い物に行くという手もある。
もっとも、あの人間もどきが居なくなればの話だがな。
◇
(これは、どうした事だ)
(た、すけ、て……)
(おい、あいつはどうなったんだ)
(怖い、化け物、怖い、助け……)
(しっかりしろ、おい、おい……ダメだ。くそ、私が居ない間にどうなったんだ。あいつは、どうなった)
◇
目覚めると暖かな部屋。
やはり囲炉裏があると違うな。
何かするにもあるのと無いのとでは大違いだ。
ここ最近、道具の修理ばかりで疲れていたんだな。
こんなところで転寝するなんて。
ちゃんとベッドで寝ないと、いくら暖かいと言っても風邪を引いたら困るからな。
そうしてベッドのほうをふと見ると、あり得ない者が見える。
なんっ……
何故、そこにいる。
何故、そこに寝ている。
そんな、そんな……想定外だろ。
『ホール』『ホール』『ホール』『ホール』
はぁはぁはぁはぁ……
そして最後に埋め戻し。
推定深さは400メートルの彼方、そして地面厚は50メートルぐらいにしたはずだ。
ベッドは惜しかったけど、背に腹は替えられない。
もしかして、あいつ、転移スキルとか持ってないよな。
あればこの作戦は無に帰する。
いかん、逃げないと。
折角の逃避行だったのに。
やっと落ち着けると思ったのに。
待てよ、あいつがこっちに来たと言う事は、あの街にはもう居ないって事だ。
人も移動していたし、あそこに行こう。
そうしてあいつに転移が無くて出会わないのなら、その事は忘れて生きていこう。
そうだ、そうしよう。
◇
かくして彼は、当時の事を忘れたまま生涯を過ごす。
そうして死の直前に思い出し、やはりあれが最善だったのだと思ったのだった。
色々と想定外ばかりだったけど、あれからはまともに暮らせて良かったよ。
もしかしたらあいつは疫病神か何かだったのかもな。
そんな事を思いながら、彼の意識は薄れていった。
おわり
物足りなさを感じています。
もしかすると改稿するかも。




