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小話と短編は連載となる  作者: 黒田明人
2章 連載版・色々と想定外
25/27

15 気絶と退避らしい


はぁぁぁ、少し落ち着いたな。


あれ、誰の夢なのかな。


もしかして、オレ以前の人、他にも居たのかも知れない。

この街に滞在していたのなら、野垂れ死には無かったんだろうな。

それにしても、あれじゃ長生きは無理だろうから、もう居ないかも知れないのか。

居たら居たで怖いけど、居ないのなら冥福ぐらいは祈ってやるよ。


だから化けて出るなよな。


それにしても倫理観の狂った相手とか、洒落にならんよな。


オレは別に空き巣じゃないし。


オレのはあの怪物を退治した褒章金が欲しいけど、誰も居ないから街からもらっただけだ。

だからもし、避難民が戻って来るなら清算しての差し引きにしてくれれば良いだけだ。

もし、報奨金など出せないと言い、なおかつ泥棒呼ばわりするなら、その時は……


まあ、答えは決まってるか。




さてと、今日の予定は。


ああそうそう、ここの宿屋を引き払って鍛冶屋を仮宿にするんだったな。

それで昨日、荷車に一度荷物を全部積み込んだんだった。

色々かき集めて一度荷車に満載にして、現地で整理して下ろす予定だったな。

だから今、ベッドも使えないぐらいに満載になっていたんだった。


でもさすがに小麦の袋が少し積めないな。


倉庫も今、満載になっていて、小さな袋ぐらいしか入らない。

だけどもう、これはとりあえず置いておこうか。

3袋だけだけど、後で取りに来れば良いし、別に大量に積んであるから

要らないとも言える。

報奨金の額は分からないけど、恐らくは相当の強敵だろうから、普通なら相応の金は

出ると思われる。

それを鑑みても、接収した物資の代金としては余るぐらいだとは思うが、

この世界ではあの敵に対し、どれぐらいの値を付けるものか。


ううむ、これは重いな。


街中でも距離があるからと一度に積み込んだのは良いが、

ここまで重くなるとはな。

ちょっと潜り込んで油を塗り足しておこうか。


お、少し軽くなったかな。


とりあえずは動くのは分かったので、

後はメシの後にしようと、またぞろそこいらの店を物色する為に家の外に出る。

通りをつらつらと見ていると、遠くのほうに何やら動く影を見る。


え、初の人類?


いや、待て待て待て。


いくら初の人類でも、あの夢の奴は却下だぞ。

幸いにも荷車は宿屋にぶっこんだままだし、ここは隠れて……

建物の前に足音が近付き、目の前でピタリと止まる。

ヤバいから突っかい棒をここに当ててと。


(あれぇ、締まってるや。おっかしいなぁ、えへっ)


はぁぁぁ、ヤバかった。

あの口調、間違いなかったな。

となると、夢のお告げかあっちのスキルか、出来れば前者が望ましい。

新たなスキルの取得はありがたいもんな。

しかも予知とか最高だろ。


ピトッ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ」



裏から回って来て、オレが座り込んでいるところに近付いて、冷たい手を首筋に当てたのがさっきの顛末らしい。

脅かしたほうも悲鳴を上げるとか、だから余計に驚いたろうが。


「それはそうと」


いきなり話を変えるのかよ。


「初の遭遇」


そっちもかよ。


「いや、そっち。ボクはボッチじゃないもん」


その喋り方、どうにかならんのか。


「あら、もっとソフトにしたほうが良いのかしら」


逆だ逆。


「うふっ、可愛いね、好みかも、ゲフッ」


ドタッ……



宿屋から荷車を表に引きずり出してとっととこの場から……


全速力でダッシュだ。


あんな初遭遇とか怖過ぎるだろ。

いきなり抱き付きやがって。

冗談じゃないぞ、あんな奴。


不意を付いて何とか気絶に持っていけて良かったが、本当に焦ったな。


まさか、初遭遇があんな奴とは思わなかったぜ。

気絶している間に、少しでも遠くに。


もっと遠くに、もっともっと。


あいつが起きないうちに、ひたすら逃げるぞ。

あれならまだ魔物の死体と同衾しているほうがましだ。

あんな危険な奴とか冗談じゃない。


くそぅ、遠くのほうで動く人影が、あの街のほうに向かっているってのに、

なんでそれから離れないといけないんだ。

オレは別に孤独を愛している訳でも何でもないと言うのに。

なのにあんな怖い奴のせいで、逃げないといけないとか、洒落になんねーよ。


あーあ、参ったなぁ。



(軽い冗談だったのに、何処に行ったのかなぁ。

それにしても、もうあの化け物居なくっているね。

となると、もうじき皆も戻って来るね。

そうね、ボクが追い払った事にしちゃおうかな。

多分、あの子が何かしたんでしょうし、文句があるなら

嫌でも向こうから来てくれるだろうし。

うん、我ながらグッドな作戦よね。

これで当分は食いっぱくれも無くなるし、

でも早く戻らないと報奨金、無くなっちゃうわよん)



(本当にあいつだと思っているのか? )

(そんな訳無いだろ)

(だったらどうして持ち上げている。報奨金の払いまで約束して、飯も食わせているって話じゃないか)

(それがな、空き巣の被害がかなりなんだ)

(ああ、成程な。持ち上げて油断させて調査を終えて一気に決着ってか)

(そう言う事だ。だからお前も余計な事を言うなよ)

(ああ、そうするさ。そのにしても、図々しい奴もいたもんだぜ)

(全くだ。あれで報奨金も盗んだ金も全て懐に入れようってんだからな)

(で、本当の英雄はどうなったんだ)

(それがな、行商人の話では、北に向かって荷車が派手な勢いで移動していたらしい)

(あいつ、何かやりやがったな)

(追い出したのか、酷い奴だな)

(とにかく、真の英雄を探すのと、あいつを処分するのを同時にやらんとな)

(分かった。捜索は事務方に任せて兵士のほうは包囲と警戒とに分担させる)

(頼むな)

(いや、自分で探しに行こう。外は余り安全では無いからな)

(悪いが、そうしてくれるか。こちらも手が離せそうにない。あんな奴でも仮にもあの

化け物を倒したと言うだけの事はあるんだろうし、被害が想定出来なくてな)

(手が抜けないんだろ、こちらは任せろ)

(済まないな)

 

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