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小話と短編は連載となる  作者: 黒田明人
2章 連載版・色々と想定外
24/27

14 悪夢の存在らしい


今日は陶芸に挑戦したいと思います。


実は土を見つけたのです。

それも陶芸に使えそうな。

いかにもそれっぽい土です。

まさに陶芸に使えそうな土。

素人でも分かるような土。


はい、見つけました。


えーと、何処にあったのかと言われますと、ですね。

ある店の裏手の、四角い、家のような……はい、蔵の中ですね。

泥棒じゃないんだ、蔵の中の土なんだ、品物じゃないんだ、地面なんだ。


はぁはぁはぁ。


どうしてボクは誰も居ないのにこんなに弁解しているんだろう。

やはり根が善良だから、少しでも怪しい行動を取ると、良心が咎めるのね。

うん、ボクは本当に善良で、悪い事なんて出来ないんだから。

だからあれは悪い事じゃないんだ。


うん、そうなんだよ。


そもそもね、蔵の中とか、カギが開いていたんだよ。

さあどうぞ入ってくださいと、言わんばかりに開いていたんだ。

勧められたら入らないと逆に失礼になるからね、だから入っただけなんだ。

それでも善良だから、気が咎めてしまうんだ。


ただそれだけなんだ。


そうしてね、中に入ったら一面に綺麗な土があったのね。

あくまでも地面にある土だからね、いくら綺麗でも品物じゃないよね。

ボクはこの世界にある土の場所を、少し移動しただけなんだ。


蔵の中の土を少し異動しただけなんだ。

それは取るんじゃなくて移動しただけね。

ほら、取るのは泥棒だから、善良なボクはやれないからね

ただ、開けると目の前に土の塊が鎮座していて、

それを作業場まで移動しただけなのね。

これを泥棒と言ったら、移動する人はみんな泥棒になるよね。

それぐらい自然な行為だから泥棒じゃないんだよね。


気を取り直して、土を捏ねていきます。


いきなり食器はハードルが高いので、まずは人形ぐらいからやってみます。

それでも焼き物と言う以上は焼かないと話にならないので、後々に焼くとしても、先に品物を拵えないと焼く以前の問題です。


質の良さそうな土はこねた後で寝かせておきますが、それ以外の土は練習台として今から人形を拵えていくのです。


作っては置き、作っては置き、作っては……


熱中していると周囲が人形だらけになってしまいます。

それにしても、人形と言うより、どう見てもハニワだね。


あの子のハニワ~部屋中に飾りましょ♪


これはね、夢で見みたボクの初恋の子に似せて作ったの。

その子はね、もうすぐ逢えるの。

それが楽しみなの。

だからたくさん作って部屋に飾るの。

そうしてあの子と暮らすの。

一緒に暮らすの。


こねこねして、そっくりにして、並べて……


ああ、早く来ないかな。

もうすぐ来るよ、きっと来る。

逢ったらすぐに分かるんだ。

そうしてボクはあの子と抱き合って、それから一緒に寝るんだ。


だってあの子もボクを好きになってくれるから。


◇・


えーと、今日は、何これ、あれ、ゴミがあるよ。


なにこれ、変な顔。

邪魔だわ、こんなの。

お仕事の邪魔になりそうなので、全部捨ててしまいます。

変な顔の人形は全部捨てました。

さて、今日も鍛冶をやりますよ~


トンテンカン・トンテンカン・トンテンカン……


稼がないと、パンが食べられないもんね。


神様ありがとう。


鉄の才能で色々な物から鉄が取れたり作れたりするのよね。

後は地味なんだけど、縁が繋がる才能で、すぐに人と知り合いになれて、

食べ物とか分けてくれたりするのよね。

工作の才能も欲しかったけど、2つだけだと言うし、仕方が無いのよね。


ああ、また好みのタイプの夢でも見ないかしら。

優しい人が好みで、優しく抱いてくれる人が好きで……


あれ、あの子の人形が無くなっている。

もしかして、あの子のところに行ったのかな?

そうだとすると、あの子もボクを求めてくれるって事だよね。

ああ、嬉しいな、そして、待ち遠しいな。


ええと、これをここに嵌めて……嵌めて、嵌めて……


そうじゃなくてっ。


固いわね……これ、それに凄く逞しくて……


そうじゃなくてっ。


逢いたさが募って、今日のボクは少し変です。

早く来て、そして抱いて欲しいの。

ボクの人形をあげたんだから、それはもう義務だよ。


世の中は義務アンド奉仕なんだからね。


鋼の板をここに嵌めて、こーして、あーして、えっと、あれ?

部品が、こうだから、こうなって、あれ、足りない、何処行った?

あったあった、これをここにこーして……バキッ……ああああっ。


えっと。


さて、お昼にしますかね。


小麦粉をこねて、パンを作り……

ええと、水を入れて練って固めて焼いて……

粉にするのが大変で……

ゴリゴリゴリゴリ……

ハックション……

ああ、粉が……

ゲホッゲホッ……


今日はお肉にしようっと。


隣のお肉屋さんの戸が開いていて、どうぞご自由にって言うからもらったんだ。

ほら、ボクは善良だから、カギを壊したりはしないんだ。

そういうのは泥棒だからね、ちゃんと入っても構わない、開いているトビラからしか入らないんだよね。


手前にあった肉を食べます。


うん、ちょっと変な味。

でもこれがお肉の味だよね。

でも、なんか、変だな、これ。

冷たくて、あんまり美味しくない。

どうしてなんだろうね。


えへへ、焼いてなかった。


ついうっかり焼くのを忘れていたみたい。

本当にボクはうっかり者だね。


さーて、焼きますよ~


焼くのも良いけど、今日はフライにしようから。

あれ、フライって焼く事だっけ?

それとも煮るんだっけ?

いやいや、揚げるんだよね。


ボクは何を言っているのかな。


愛しい人に中々逢えないから、少し変になっているのかも。

うん、そうだよね、だから逢ってきちんと愛してくれたらまた元気になるよね。


ボクが愛している、のは、ボクを好きな、のは、ボクを刺し、た、キミじゃ、なくて、ボクは、ボクは……


あれ、油?


油なんか何に使うの?

てんぷら鍋も無いと言うのに。

そういや、鍋を買わないと。

あれ、肉とか何時買ったんだろう。


変だなぁ。


あれ、お腹が……


どうしたんだろう。

変なお腹が痛いんだ。


いたたたたたたた……


お腹が……いたたっ、いたたっ……



うわあああああっ……


はぁはぁはぁ、夢か。


うわ、鳥肌が立ってら。


あんな夢、なんで見たのかな。


ああ、もう、キモくてキモくて。


朝から食欲も出ないぞ。


ふうっ、何だ、あの夢は。


オカマさんの夢かと思えば、ただのオカマさんの夢じゃなくて、色々と辻褄が合ってないんだ。

まるで多重人格者のようなオカマさんが、恋人を待っているような。

てかあれ、もしかしたら、恋人に殺されて転生とかじゃないのかな。


だからおかしくなったまま転生になったとかさ。


自分を善良と言いながら、やっている事は空き巣だし。

悪い事は出来ないと言いながら、それをやっているのがまた怖い。

罪の意識が無いって事だからさ。

ああいう人はさ、自分が納得したら罪の意識の無いままに、何だってやりそうだろ。


だから怖いんだ。


それにしても知らない男、それもオカマさんの夢を見るとか、予知無だったらどうしよう。

もしかしたらそんな夢を強制的にとか、だとすると遭ったら即逃げしないと拙いかも。

そういや、もうすぐ恋人に逢えるとか言っていたし、オレと勘違いされたらきっと、説得は無理だぞ。


油断させて、気絶させて、即逃げだな。

 …

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