13 今度も廃墟らしい
そうして今日もまた、人里を探して移動開始。
昼ぐらいまで移動していると、何かが見えてきた。
やっと村か町に着けるかと、少し駆け足気味での移動になる。
道はあんまり良くないが、それでも荒野なんかとは全然違う。
だからかなりの駆け足となり、カランコロンと靴が賑やかに……いかん。
こんな自家製の靴で無理をしたら、すぐに壊れちまうぞ。
かなり近くなったその場所は、あの廃村より少し大きな町のような場所。
その割りに妙に静かなのが気になるが、門は開いているな。
それを通過する前に嫌な予感。
閑散とした町並みはとても静かで、人は全く見かけない。
並んだ家々は新しいのもあれば古いのもあるけど、これが廃墟とは信じられない。
どの店も鎧戸は下りているものの、全員で旅行に行きましたと言ったら、納得されるような佇まいだ。
道のままに荷車を引いていくと、町の中程に何かが置いてあるような。
あれ、魔物か?
やたらでかいが、小山みたいなのが鎮座しているぞ。
それで皆逃げたのか?
となればそいつは退治しないとな。
そいつがすっぽり入る大きさで、深さを80メートルに指定して、唐突なる落とし穴発動。
そうしてすかさず例の最終兵器を穴の中に全力で投擲して着火する。
今度は失敗しないぞ。
両手で耳を押さえて走って離れる。
それでも爆発音が響き、そこらの家がガタガタと揺れる。
一応、念の為に追加で4発放り込んでおいたが、あれで死んだかどうかは分からない。
だけどあれで死なないとなるともう、オレには手出し出来ないぞ。
そろりと穴を戻してみると、そこには巨大なハンバーグみたいなのがありました。
あーあ、粉砕して焼けたからそうなっちまったのか。
以前からも思っていたが、魔力を含んだ油ってとんでもないな。
点火した魔法の炎と合わさって、まるで上級クラスの魔法の爆発みたいになっちまうんだな。
あんな凄い化け物がこんなになっちまうんだからよ。
これでは魔石も無理かなと思ったが、一抱えもあるような魔石は無事だった。
だけどこのハンバーグどうしよう。
このままだと腐るよな。
なので再度穴の底に追いやって、今度はそれを置いたまま穴を戻す。
よし、証拠隠滅バッチリだ。
一抱え魔石は小物入れに入れて、代わりに道具類を荷車に積み込む。
後は誰も居ないけど退治してやったんだし、有用な物を報酬でもらっても良いよな。
そう勝手に決め付けて、そこらで家捜しを開始する。
どうやら慌てて逃げたらしく、家財道具なんかもそのままだ。
金もあちこちで見つかっており、全部は可哀想だから半分だけもらってある。
穀物の袋もあり、それも荷車に積み込んでいく。
さすがにいかに容量が増えたと言うものの、本格的なスキルじゃなくて間に合わせなので、そんなには入らないのが困り物。
まあ、小物入れってぐらいだから、本当は持ち歩きの金庫ぐらいの意味だったんだろうな。
空き巣稼業も一通り終え、可能な限り積み込んだ荷車はかなり重たくなったものの、まだまだ引く力には余裕がある。
宿屋らしき建物の鎧戸を外し、荷車を入り口に突っ込んで鎧戸を閉める。
そうしてランプの明かりを頼りに中をうろつき、ベッドを見つけたのでついでに寝具をいただいた。
毛皮の敷布団も良いけど、やっぱりこういう布が良いよな。
とは言うものの、毛皮の上に敷布を敷くだけだ。
そのほうがマットレスみたいになるからな。
それと言うのも小物入れの毛皮なんかは今、全部荷車の中だ。
それは何故かと言うと、小物入れの中はもはや、一抱え魔石と手持ちの魔石、それに金の類と財宝の類と言った価値あるもの、それにすぐさま食べられる食料で満載になっている。
だからこんな風な荷車になっちまったんだけど、もうこうなると完全に空き巣だな。
もっとも、そんな事は今に始まった事じゃない。
この世界に来てからずっとやっていたんだし、そんなの今更だよな。
それはそうと、この町にも鍛冶屋っぽい場所はあるか、明日探してみようと思う。
そんな訳でおやすみなさい。
◇
状態がとんでもない事になってました。
階級 107
状態 正常
体力 1160
魔力 1160
技能 生活魔法・穴掘り
あれ一匹で、あの階級から23も上がるとか、どんだけだよあの魔物って。
本当なら滅茶苦茶強い敵だったんだろうけど、寝ている隙の殲滅だったにしても、ありゃ奇跡だな。
あんなもの、この世界で一番強い人でも恐らく無理じゃないかな。
となるとますますあの魔石は世に出せないぞ。
邪魔だから地面深く埋めちまうかな。
けどなぁ、あれを媒介にして復活とかやられたら困るし、小物入れの中に死蔵がベストではあるんだよな。
さすがに復活になったらもう、あんな不意打ちは効かないだろうし、例えオレの仕業とバレてなくても、同じ境遇になったら今度こそバレちまう。
そうなればもう、いくら上から爆弾を落としても、到達するまでにブレスでも吐かれたら効果がまともに出ない。
それどころか穴に近付きもやれなくなるから、その隙に出られたらもう終わりだ。
空中には落とし穴は作れないからな。
それにさすがにあの大きさともなれば、丸洗いしても大した事にならないだろう。
確かに高温着火なら多少は効くかもしれないけど、あれだけの大きさの物体に対する着火とか、相当の魔力を使う事になるだろう。
そこまでやっても死ななければ、今度は間違いなくオレが死ぬ事になるな。
だからもう、あの魔石は砕いてしまうか、あのまま死蔵するしかないって事だ。
◇
だけどあの魔石、あの爆弾5発に耐えたんだよな。
そんなもの、破壊なんか出来るんだろうか?
いや、もしかすると穴掘りなら……まあ良いか。
そういうのは必要で試せば良いだけだ。
今はこのまま死蔵にしておこう。
それにしても、あんなに階級が上がっちまうとはな。
どうにも階級100に到達したら何かあるのかどうかは知らんが、スキルの内容が変わるんだから何かあるんだろう。
もしかしたら階級100とか、相当難しいとかでさ、報酬か何かになっている可能性もある。
更に、どういう訳だがヘルプ機能と言うか、今まで何をしても無理だったのに、スキルの説明を求めたら頭に浮かぶんだ。
こういう風に。
生活魔法
《出炎・美水・洗濯・操風・倉庫》
出炎・種火から火炎まで、あらゆる炎を出現させる。
美水・薬品製造に最適で美味しい水を出現させる。
洗濯・水洗いから乾燥まで、自由自在に設定可能。
操風・そよ風から強風まで、自由自在に設定可能。
倉庫・階級10倍までの長さ、重さ、体積を収納可能。
こういうのは最初から欲しいよな。
そんな訳で、高温着火も無理に出している感じだったのが妙にスムーズになってさ、
ますます投擲着火がやり易くなっていた。
あれなら恐らく100パーセントの成功率になるだろう。
そうして美水と言うだけあって、出た水は本当に美味しかった。
薬品製造ってのはつまり、回復薬とかそういうのに最適なんだろうな。
まだそういうノウハウは無いけど、そのうち獲得したら製造が楽になるかもな。
洗濯ってのはつまり、全自動洗濯機をスキルにしたような感じとでも言えば良いのか、
試しにやってみたんだよ、かつてのオレがやらかしたように。
そうしたら濡れる感じがしたものの、身体がさっぱりして服も綺麗になって元のままの乾燥した状態になったんだ。
これも最初から欲しかったよな。
操風ってのはつまり、今まで何とかやっていた操作が認められたと言うか、手動の部分が自動になったと言うかさ、
凄くやり易くなっていたんだ。
出炎と似たような感じで、あらゆる作業のうち、手間な部分の自動化って感じでさ、思うままに風を操れるって感じかな。
そうして倉庫になって小物入れの何倍も入るようになったと。
持てる重さ×10が階級×10になったんだろうけど、それって凄まじくたくさん入るようになったって事だ。
もはやこうなればアイテムボックスかストレージとか名乗っても良いぐらいじゃないかな。
だってさ、現在階級107って事はだよ、長さが1070メートルまでの物質とか、重さが1070キロの物質とかがあっさり入るって意味だ。
体積に関しては計算が面倒だからしないけど、とにかく今までよりもたくさん入るってのは間違いないだろう。
え? 馬鹿だって?
電卓があれば計算するよ。
しかも鉛筆も紙も無いのに、暗算で体積計算とか無理だよ、オレには。
そんなに秀才ならそもそも三流……まあいいや、もう昔の話だ。
ともあれ、階級100を越えてスキルがパワーアップしたって事だ。
道理でいくらでも物が入ると思ったよ。
今までは計算上の限界でやっていたんだけど、試しにと荷車を入れようとしたら入っちまったもんな。
ちょっと嬉しい想定外だ。
◇
鍛冶屋の工房を発見したので金属精錬の真似事をやってみた。
以前は本当に試行錯誤だったのに、妙にやり方が分かると言うか。
そうして思うままにやってみると以前よりましなような代物ができた。
素人から職人もどきに進化した瞬間であった、なんてな。




