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小話と短編は連載となる  作者: 黒田明人
2章 連載版・色々と想定外
21/27

11 移動中供養らしい


ううむ、いくら素材は要らないと言ってもだな。

小説ではよくある、魔石っぽいのを発見したら、やっぱり回収しちまうよな。

そんな訳で都合21個の魔石もどきがここにある。


動物には無かったからどうかと思っていたが、となるとあれは魔物とか言うカテゴリーになるのかな。

そんなばかでかい図体の屍骸は、全部土の下に埋めておきました。

さすがにいくらでかいとは言え、人型生命体を食おうとは思わないよ。


そんな事よりもだ。


これ、何かに使えないかなとも思うんだが、こういうのは売ればかなりの価格になるとか言うよな。

もっとも、表でうっかり売った日には、大騒ぎになりそうなものだけどな。

だから売り方さえ巧くやれば、当座の生活費にはなるだろうけど、それを言うなら金貨28枚もあるからな。

あれがどれぐらいの価値かは知らないが、最低でも28万円ぐらいにはなると思うんだが。

だけどそれなら物価次第では1月分の生活費になっちまう。

となると、こういう魔石らしき代物を溜めておいて、必要で売るって事も必要になる。

さすがにいつまでも野人で居たいとは思わないよ。


やっぱり文化的な生活には憧れるしよ。


それからも旅の準備は順調に進んでいった。

野営を地下でやれる見通しが立ったので、荷車の小さな物を拵えて運んでも構わないと思ったからだ。

さすがにベッドを小物入れには入れたくないので、あれは荷車もどきで運ぼうと思う。


そう思っていたのに、どういう訳だがそれに屋根が付いたり引き手が付いたり車が付いたりして、気付いたら馬なし馬車のような代物になっていた。

確かに引く力は余っているぐらいだけど、どうしてベッドが馬車になったんだろう。

だけどこれなら確かに運ぶのが楽だし、地下で寝るにしても転がしておけば問題無いし。


命名・寝台馬車……またつまらぬ物を拵えてしまった。



それにしても、寝台馬車を作っているうちに、すっかり寒さも和らいだな。

ざっと3ヶ月ぐらいは作っていたものなぁ。

なんせいきなり車輪とか無理なので、最初は石畳の石を丸くして車にしようかと思ったけど、さすがにそれは地面に埋もれるから断念したんだ。

そうなると材料はやはり周囲にある木々となる。


階級のせいか生活魔法がまた進化していて、とっても便利になっていた。

まずは着火は目視の範囲までの遠距離高温着火を可能とするから、まるで攻撃魔法っぽいんだ。

対象の直下で高温着火がやれるって事だから、いきなり対象の足が蒸発するんだ。


そんなの誰でも動けなくなるよな。


だから狩りがとても楽になってさ、穴掘りに頼らなくても狩れるようになったんだ。

そうして次は飲み水だけど妙に味が良くなってさ、飲むと元気になるような感じがするんだ。

あれって聖水とかになってないだろうな。

そして量も自由自在でさ、浴槽とかすぐに貯まるんだ。

その風呂に入ると疲れが取れて熟睡出来るから、やっぱり普通の水じゃないんだろうな。


そうして丸洗いがまた面白い進化をしたんだ。


身体の一部分を選んで丸洗い出来るようになってさ、今じゃウォシュレット状態ですよ。

かと思えば指定範囲の物質を丸洗いするイメージで、局所的な嵐みたいなのまでやれるようになったんだ。

つまりだね、狩りの獲物をいきなり丸洗いすると、そいつだけ嵐の中って状態になる訳ですよ。

それを強烈なイメージでやると、初日の自分を更に派手にしたように、毛も何もかも抜けて流されて、毛無し熊みたいになったりしてさ。


あれはちょっと可哀想だったな。


もっとも、革にするなら毛が邪魔なので、袋にするにはその狩り方のほうが良かったんだけどね。

もうそうなったら攻撃魔法と変わらない事になりはするけど、生活には戦いも含まれているって思うからさ、生活魔法と言っても看板に偽りは無いって思うんだ。


そうして風出しはご想像の通り。


形状、密度、強度の設定で、遂に来ましたウィンドカッターです。

3要素を構成する風の動きの制御なので本当の刃じゃないけども、結果的には物質の切断になるからそう名付けただけだ。

これのお陰で木を切るのが楽になり、木材加工の幅が広がったんだ。

そうじゃなければ木の板とか、ノコギリもどきじゃ作れないもんな。

そうして小物入れは以前の数倍の重さの物が入るようになっていました。


なるべく硬い木を車軸にして、木の板を組み合わせて車輪にして、車軸と固定したんです。

そうしないとさすがに木製の車軸じゃすぐに接触面が削れて中心がずれ、しまいには車軸がちびて折れるからさ。

その代わりに車軸全体に加重を分散させるように上部の構造を工夫して、獣脂を徹底的に漉した代物の水分を排除したグリスもどきを塗って抵抗を下げたんだ。

だから時々塗り足さないといけないけど、あるのと無いのとでは全く違うから、これは必要な事だな。


もっとも、横倒しにして塗るだけなので、そう大した手間でも無いから問題は無いんだ。

ただ、ベッドは寝台馬車に仮固定する必要があり、寝具なんかも毎回収納の必要もあり、なので馬車内に寝具用の押し入れのようなのを拵える事になったけどな。


本職がやれば1ヶ月もあれば余裕で出来そうな事柄に対し、その3倍の時間はやはり素人だからだろう。

それでもスキルの進化が無ければやれなかった事なので、本人の技量なんてものは全く無いと言っていい。


世の中の職人さんは偉いし凄いと、改めてそう実感したね。



いよいよ出発だ。


世話になったな、名も知らぬ遺跡の町よ。

あれからも昨日まで探索をやり、色々と有用そうな品も見つけている。

食器とは思うが、陶器で拵えられた深い皿とか、湯飲みのでかい、マグカップぐらいの容器とか。

あんまりたくさんは要らないので、使い易そうな物だけを毛皮に包んで馬車の寝具物置の片隅に置いてある。

それでもかなりの量を積み込んだから、後々にはそれを売れるかも知れないと思っている。

後は比較的朽ちてないテーブルと椅子だけど、今では馬車の屋根代わりになっていたり、ベッドの脇に仮固定になっていたりする。


そう、いかに風出しで木の板が作れるとは言うものの、車輪を優先したから屋根がおざなりになったんだ。

最悪、毛皮で幌にでもしようと思っていたところ、比較的軽めだけどあんまり朽ちてないテーブルを見つけたんだ。

だからそれをそのまま屋根にして組み込んだんだ。


それが面白い事に全く同じ大きさのテーブルを2つ見つかってさ、片方は底板で片方は屋根って訳で、足同士を繋いであるんだ。

足の長さが1メートル近くあるテーブルだから、2つ合わせたら頭が当たらないぐらいの高さの天井になったんだ。

オレもそこまで背が高い訳じゃないからさ、その点は助かったと思ったよ。

後はそれの補強に木を四方に当てて縛ったうえでニカワで緩み止めもしてあるから、多少揺れてもいけると思うんだ。

皮革の紐をニカワを塗りながら巻いたから、ちょっとした両面テープもどきになってさ、だから切断しないともう剥げないと思うのさ。

しかもかなり引っ張り気味に巻いたから、そうそうは緩まないはずだ。


既に森の外までの道は確保してあり、邪魔な木は切り倒してある。

ゴロゴロと音を立てて引っ張っていくけど、やはり皮を巻いたほうが良かったかな。

下が石だからだと思うけど、土でも同じだと皮を巻こうかな。

あれからニカワも皮テープもたくさん拵えてあるから、巻くならすぐなんだよな。

どうせ荷車みたいなものだし、毛皮はひたすらなめすし、毛無し皮もひたすらなめした。

それらは今、寝台馬車の中に収納されている。


色々な物を使っているうちに、魔力を使えばなめしが調子よくやれる事が分かったんだ。

なのでどうせ魔力も増えている事だし、魔力なめしに変更したんだ。

だから収納されている毛皮は全くススも何も付いてない。


あの見てくれの悪い皮革とコートは今、全て皮テープになってあちこちの補強に使われている。


そんな訳で毛皮のコートも新調したけど、当分使いそうにない。

真っ白なネコ科と思しき動物の毛皮で拵えてあるから、見た目もそんなに悪くない。

骨の針とつる草の糸で縫ってあるし、要所はニカワで補強してあるので、以前とは全く違う出来になっている。


圧搾機の関係でニカワの性能も良くなったようでズボンも今、皮革製に変わっている。

そうして皮革のベストは今着ているけど、これも中々調子が良い。

たださ、下着とかトレーナーはどうしようもないので、何とか使い回しているけどね。

もう少し暖かくなったら素肌にベスト1枚でも良いかも知れない。


でもそうなるとますます野人だよな。


土の上を転がしてもやはり硬いせいか音がする。

ガラガラといっていたのがゴロゴロになりはしたが、音が出るのには変わりない。

かといって皮を巻くぐらいじゃあんまり変わらないとは思うが、たくさんあるから巻いておいた。



微妙だが、少し音が小さくなったかな。


まあ、のんびりと行けば良いから、なるべく音が出ないぐらいの速度で移動しよう。

そうして周囲をそれとなく警戒しながらも、比較的リラックスした旅が始まる。

しばらく森の横を歩いていたが、森の反対側が荒野になっている。

これは森が後退したのか荒野が減っているのか、どっちだろうな。


あれ、何だろう。


近付くと、何かの布の塊のようなものがある。

それは白い物を包んでいて、それは、まるで……


うぇぇ、やっぱり骸骨かよ。

行き倒れになったんだな、可哀想に。

ここらは動物も居ないのか、服は汚れて多少朽ちているようだけど、破れたりはしてないようだ。

埋葬してやろうと穴を掘り、遺体を穴の底に寝かせようとした時、ズボンのポケットに何かがあるのを見つける。


これは……スマホじゃねぇかよ。


つまり、こいつも転生になったのか。

なのにこんな所で行き倒れになったんだな。

もう電池も切れているようだし、そもそも画面が割れてもいる。

倒れた時に割れたのかも知れないな。


死因は分からないけど、同郷のよしみだ。


スキルで穴を戻さずに、そこいらの土を道具で被せていく。

そうして戒名とか分からないが、板切れに『異世界転生居士』と書いて立てておいた。

もちろん日本語なので、関係者以外には読めないとは思うが、もし他の転生者が見つけたら、自分だけじゃないと分かるはずだ。

そりゃ善人ばかりとは限らないので用心は必要だけど、これぐらいはしてやりたかったんだ。

小皿に塩焼き肉の串を供え、手を合わせて知っている念仏を唱えておいた。


名も知らぬ同郷の士よ、成仏してくれな。

 

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