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小話と短編は連載となる  作者: 黒田明人
2章 連載版・色々と想定外
20/27

10 細工ロブスらしい


こりゃ何だ。


でかいなこいつは。

大穴を開けて墜落……死なないぞ。

深さ20メートルはあると言うのに、中で騒いでやがる。


一つ目小僧のでかい奴だけど、あれ何て言ったかな。

サイクロン、トロプス?  いや、違うな。

なんかこう、音は似ているんだけど、ちょっと収まりが悪いような。


ええい、喧しい。


丸太爆弾食らえ……『高温着火』……ドオオオン……

なんて名だったかなぁ。

サイクル、トロンボーン? 少し離れたような気がするな。

サイコロ、トロント?

サイクツ、トロケル?


何かさ、2つの単語を合わせたような名前だったんだ。

サイクロン、ブス……ああ、サイクロプスだ。


サイクとロプスだった。


サイクは細工でロプスってのはある小説の登場人物でさ、細工物を得意とする職人なんだ。

だから細工ロプス工房ってのがあってさ、サイクロプスの名前を見た時に、細工ロプスで記憶されちまったんだな。

それはさておき、まだ死なないのかよ。


しぶとい奴だな、こいつは。


ただでさえ攻撃手段が限られているってのに、こんなしつこいとか想定外だぞ。

よし、こうなったらそこらの石を投げて、当たる寸前に高温着火を使ってやろう。


よしよし、火傷したな。


ドンドン追加してやるから、とっとと死んでくれ。



結局、あれから石は30個ぐらい投げて、ようやく死んだんだ。

あんな敵とか、もう倒すの嫌だぞ。

でもその恩恵はでかかった。


現在階級46になっている。


1匹倒すだけで階級が10も上がった事になるな。

これは準備が必要だな。


そうしてひとまずは仮宿に戻り、敷石から投げられるサイズの石の球を拵えていく。

一通り出来たら細い穴を開けるんだけど、中が広いタイプの穴にするんだ。

そうして獣の油を流し込んで、埋め戻しの要領で注ぎ口を塞ぐ。

僅かなくぼみが残るのは仕方が無いけど、これぐらいなら大丈夫だろう。

穴の中はかなりギリギリに広げたから、投げて当たれば割れるはずだ。


本当にチート穴掘りさまさまだな。


高温着火で火山弾みたいになったところで衝撃で割れて中の獣脂が湧いて出て、それが高温で一気に燃えるとなると、ちょっとした焼夷弾っぽくなるんだけど、これって早い話が火炎瓶の石版なんだよな。

火炎瓶は投げ方にコツが要るけど、丸石内在獣脂投擲発火方式なら、コツとかよりも高温着火のタイミングだけになる。

これはもう慣れたものなので、目視が可能なら失敗は殆ど無い。

そんな訳で調子に乗って丸一日造りまくってました。


幸いにも狩りの途中だったから獣脂は大量にあったんだ。


 

投擲着火焼夷弾が正式名称に決まりました。

それを調子に乗って100個も造りました。

多すぎるので半分ぐらいは試験で消費の予定だ。


ソフトボールクラスの球を投げると同時に着火して、火山弾状態で対象に衝突して、割れて獣脂が溢れて点火されて、対象は油を被った状態でそのまま燃えるって感じになるはずだ。

その場合、球の威力が高ければ、粉砕した石材がそのまま高温の散弾にもなるから、油での攻撃と高熱の散弾での攻撃の複合って事になる。


あくまでも想像なんだけど、狼の群れの中心に投げてやると、周囲の狼まとめて倒せそうな気がするんだよ。

高温高圧の獣脂がいきなり解き放たれて、しかも発火点に到達して広がりながら燃えるんだからさ。

それに高温の石の散弾が加わるんだから、範囲攻撃も可能なはずだ。


エアゾール爆弾に近いイメージなんだけど、果たしてどうかな。

そうして改めてサイクロプスが居た辺りまで遠征する。

やっぱり人間、目標が出来るとモチベーションが違うよな。

あのしぶとさは想定外だったけど、そのお陰でこちらも想定外な威力の攻撃手段を得た。


さあ、ドンドン来やがれよ。


あの遺跡から南東の方角にひたすら歩いていくのだが、中々出会わない。

あいつだけ野良だった可能性もあるけど、出来ればたくさん居て欲しいものだ。

あれに対してはもう、素材とか言わないからさ、その命が欲しいんだ。


つまりは経験値がさ。


おや、何か動いたが、そこに居るのか?

2匹か、よーし、まずは腰の辺りまで埋まれよ。


唐突な落とし穴で素直に落ちるそいつらに対し、全力での投擲と高温着火。

可能な限りの高温をイメージし、ピッチャーみたいなモーションで全力で投げる。

手から放たれた石の球は猛烈な速度で対象に向かって宙を飛び、そこに点火されて火山弾のように突進する。

さすがに速度が高いので認識も遅れ、そいつの顔にまともに命中した。

その途端、猛烈な爆発が起こる。


さすがにそれは想定外だぞ。


まさか1発で首が消えてなくなるとかよ。

おまけに爆弾が近くで爆発したみたいに衝撃波が走り、耳がキーンってなっちまったぞ。

血の噴水がにわかに出現し、傍らの存在は呆然としている様子。

再度の全力投擲でそいつも同様となり、階級は一気に62にまで到達した。


参ったな、まだ2発しか使ってないんだぞ。


なのにもう目標階級をオーバーしちまうとかさ、残りの98発の使い道に困るな。

それからもそこら中を探索した結果、18匹の生存を確認後、全てを殲滅しておきました。

いやはや、とんでもない威力だったが、これはうっかりと外前には出せないぞ。

禁術ならぬ禁アイテムとか言われそうだ。


頑張って精製したんだけどなぁ。


もっとも、それで威力が上がっちまったのかも知れないけど。

圧搾機みたいな道具を拵えて、ズボンの裾をちょいと短くして、その布地をフィルターにして、

全力でてこの原理で圧力を掛けて、それで何とかトロトロの油になったんだ。

だから流し込むのが楽になって、ついつい100個と。


重いけど残り80発は死蔵かな。


容量を増やす為の試みが、余分な荷物を抱える羽目になるのも想定外だけど、こればっかりはうっかり捨てる訳にもいかない。

確かに地面に埋めれば安全だけど、こんなものがもし人目に触れたらその使用法は無理でも投げて火矢で着火ぐらいなら思い付くかも知れない。

そんな新たな発想はいずれ進化して、ツボに油を入れての火炎ツボになるかも知れないんだ。

凄惨な戦場の発端になるとか、絶対に嫌だから外には漏らさないぞ。

もっとも、そういう発想が既にあるなら、そいつに便乗して思い付いたとか言えば良いから楽なんだが。


それにしても階級が……増えたものだな。


階級 84

状態 正常

体力 930

魔力 930

技能 生活魔法・穴掘り


まさか生活魔法で最終兵器が出来るとは、全く当時は考えもしなかったな。

だけどこれで容量の心配は無くなったかな。

いくらあれが重いと言っても、中が中空で獣脂が入っているだけだから思ったよりは軽いしよ。

今の筋力じゃ握り潰さないように気を付けないといけないぐらい、薄い石の球だから比重は軽い。

それにしても、ちょっと上がり過ぎたような気もするが、まあ、多いに越した事は無いのかな。


仮宿に戻って久し振りの風呂に入ろう。


なんせ狩り終わるまで狩っていた獲物を解体して肉を焼いて食っていたからな。

寝る時には地面の下で寝ていたし、そこでトイレも済ませたから何とかやれたが、本当に穴掘りスキルにして良かったよ。

最終的には仮のアジトみたいな感じになってさ、厨房もどきはあるわ、トイレっぽい穴もあるわでさ、このままここで暮らせそうとか思っていたものだ。

ちゃんと崩れないように、鍾乳洞にある上下が繋がった石の柱みたいなのを残して穴を掘る感じのイメージでやったからさ。

だから中も鍾乳洞みたいな感じで硬くしたから崩れる心配は無かったんだ。

あれ、誰かが発見したら太古の遺跡とか思われたりして。


おお、入り口の石版のなんと軽い事。

両手で掴んでヒョイと除けて入れるようになった。


ただいまと、言っても返事は 返らねど、ついしてしまうは、寂しさゆえか 字余り。

 

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