表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叶え人-さよならは言わない‐  作者: 凜風 杏花
6/12

第6回 純愛の聖地

台湾ドラマのようなお約束場面がいっぱいの、プラトニックなラブロマンス。

自分好みのピュアな物語を妄想全開で書いています。

脚本バージョンも作成していつか2時間ドラマに。


ヒロイン・町田杏子(まちだきょうこ26歳)

30日限定の夢の相手は台湾の俳優アージ

舞台は香川県、金曜日更新、全12回

「この町は有名な映画のロケ地で“純愛の聖地”と呼ばれているの」


「じゅ・ん・あい?」


「ええと…、pure love or true love」


「あぁ、true love……」

アージ、遠くを見る目つきになる。


「だれか好きな人ができたら、ここに来たいと思っていたの。でも、今日だけの恋人でもいいよね」


アージ、うつむき寂しそうに笑う。


杏子、その笑いを見て

「ごめん、私なんかで」


アージ、あわてて手を振る

「そうじゃない!ちょっと自分のことを考えていたんだ」


「あなたのこと?」


「うん……」


杏子はそんなアージの横顔を見つめる。

(婚約者のことを思い出していたのね。でも、なぜそんなにつらい表情なの?)


二人、改めて海を見つめる。

いつのまにか雨が止んでいる。


杏子はアージの方を向き

「もうひとつ、行きたい場所があるんだけど、いい?」

   

アージは指でOKの合図をすると、空を見上げて傘をたたむ。

   

二人は防波堤を引き返して歩いて行く。


神社の石段を上がると境内にブランコがあり、

杏子はそれに走り寄る。


「ここ、ここ!」

「ここでもロケがあったの。神社にブランコなんて珍しいのよ」


アージ、ブランコのそばに立ち、港と町を見下ろす。

「素敵だ」


「そうでしょ。アージならわかってくれると思っていたわ」


アージはブランコを指さしながら

「座ってもいいかな?」


「いいはず。でも雨で濡れてるね」


杏子はハンカチを出して拭こうとし、アージはカーディガンを脱いで、ブランコに敷き始める。

   

杏子、あわててそれを止める。

「服がぬれちゃう」


「君がぬれる方が、えぇ~と、心配です」

そう言って、アージはかまわずカーディガンを広げる。

「どうぞ」

   

杏子はもう一方のブランコにハンカチとタオルを重ねてひく。

「アージもどうぞ」


二人、同時に

謝謝(しぇしぇ)

   

二人は顔を見合わせ笑い、ブランコに座って楽しそうに話し始める。




帰り道、神社の石段をアージが先に降りて行き、杏子は後ろからこわごわ降りるが、残り3段の場所で、杏子の足がすべる。


「わっ」


アージがあわてて支える。 


杏子の顔が目の前にある。

二人は5秒ほど見つめ合った後、どちらもハッとして、アージは手を放す。


今度は杏子が後ろに倒れそうになって、アージは抱きかかえなおす。

そのまま、石段の下まで降りた二人は、顔を見合わせ、パッと離れる。

反対の方向を向いたままの二人。


その時、アージのスマホが鳴り、画面を見て嫌そうな表情になるアージ。

電話には出ない。


杏子、振り向いて聞く。

「出なくていいの」


アージは黙ったまま、スマホの電源を切る。

二人はなにも言わず歩き始め、アージが突然背伸びする。


「杏子さん、お茶を飲むところは?」


杏子は観光マップをひろげ

「それならいいところがある」


二人は少し先の写真館風の建物に入る。


建物の内部はカフェになっている。

アージは部屋を見まわして

「撮影したくなる」


それを聞いたカフェスタッフの一人が振り返り、アージをまじまじと見る。

「アージさん……ですよね?」


アージは、はにかんで

「はい」


「私、台湾のドラマが大好きで、あなたのドラマもよく見ていますよ」


「ありがとうございます」


「今日は、どうして日本に?」


アージ、咳ばらいをして

「え~と、ロケ地を探しています」


「あぁ、それでここに。どうぞゆっくりしていってくださいね」


「ありがとうございます」

   

杏子がアージの耳元で小さな声で言う。

「へぇ~、ロケ地をねぇ」

アージは恥ずかしそうに横を向いて

「ほんとのことは言えないよ」


椅子にかけた杏子とアージのもとに、スタッフがコーヒーを運んでくる。

スタッフが

「地元の石で作った石臼でひいたコーヒーですからおいしいですよ」


アージが不思議そうに

「い・し・う・す?」

   

スタッフが小さな石臼を見せると、アージはまじまじと見る。


スタッフが石臼を回すしぐさをしながら

「トライ、トライ」


アージは笑いながら小さな石臼をひいてみる。


アージ、今度は杏子に渡してやってみろというしぐさをする。

「おもしろいですよ」

杏子もうなずいてひいてみる。


スタッフがその様子を見て

「お二人ともお上手ですね。ここで働けますよ」

   

杏子が笑ったので、アージは首をかしげて杏子を見る。


「ここで仕事ができるくらい上手だって」

杏子、両手で頭の上にマルを表示する。


アージ、ウインクして親指を立て、二人でハイタッチをする。


夕暮れのバス停で、アージが両腕を高く上げながら

「楽しい一日でしたね」


「はい」


「ここに来てよかった」


杏子は嬉しそうにそれを見ているが、次第に顔が曇る。

(あと二週間と少し……)

   

アージは杏子の顔をのぞき込んで

「どうしたの」


杏子は両方の手を振って

「ううん、なんでもない、なんでもない、それより、夕陽がきれい」


「うん」

同じ方向を向いた二人の顔を夕陽が照らす。


夢のようなアージとのデート。

でも残された時間はあと二週間と少し…それを思うと心が暗くなる杏子。

これから二人はどうなる?

第7回「アージのお迎え」は9月15日(金)夜掲載。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ