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叶え人-さよならは言わない‐  作者: 凜風 杏花
4/12

第4回 叶え人の確認

台湾ドラマのようなお約束場面がいっぱいの、プラトニックなラブロマンス。自分好みのピュアな物語を妄想全開で書いています。脚本バージョンも作成していつか2時間ドラマに。


ヒロイン・町田杏子(まちだきょうこ26歳)

舞台は香川県。金曜日更新、全12回。

「何?」

と、アージ。


杏子は手のひらをのばし

「アージから」


「君の名前は?」


「そうだった。私の名前言ってなかったんだ。私は杏子、ま・ち・だ・きょ・う・こ」


アージが杏子を見て微笑みながら

「きょうこ小姐シャオジェ

      

杏子はアージの笑顔にドキドキしてうつむき

「名前も言ってない人に、ペンダントを買ってもらうなんて……」


「ほんとだね」

二人は顔を見合わせて笑う。


アージが聞く

「杏子さんの話は?」


杏子はもじもじしながら聞く。

「え~と、え~と、私たち、これで友達?」


アージは優しく微笑みながら

「もちろん!」




翌日、帰宅しながら杏子は昨夜の出来事を思い出している。

(昨日のこと、夢じゃないよね。叶え人のおじさん、本当に私の願いを聞き届けてくれたの?)


後ろから誰かが低い声で呼び止める。

「杏子さん」


杏子、ふり向いて叶え人を見つけると

「おじさん!」


叶え人はムッとして

「おじさんはやめて頂きたい」


杏子はまわりの人に聞かれないように、口に手をあて小さな声で

「叶え人とは呼びにくいわ」


「ではKさんと」


「Kさん、ちょうどよかった。聞きたいことがあったの。でもここでは……」


「よろしい。では、あのカフェで」


叶え人と杏子は近くのカフェに入る。

ほかにお客はいない。店員の若い女の子が注文を取りにくる。


叶え人は

「コーヒーを、とても熱いのを」


「私はアイスミルクティを」


二人とも、しばらく黙っている。

店員が飲み物を運んでくる。


叶え人はコーヒーを一口飲むと、まぁいいだろう、という表情になり

「ところで、私に聞きたいことと言うのは?あとで、私からもあなたにお話があります」


「何、話って?気になるわ」


「いえ、あなたから」


そういうと、叶え人は黙ってしまい、仕方なく、杏子から話し始める。


「私、ある人と出会ったんだけど、それが、あなたが叶えてくれることに関係あるかどうか知りたいんだけど」


叶え人は杏子の目をじっと見て

「当然です。残りは、今、この時間から23日です」

   

杏子、あわてて

「いつからカウントされてるの」


「アージと会った日ではなく、私と契約した日の契約した時間から」


「アージとのこと知ってるの!」


「何度も言っていますが、私は叶え人、そんなに信じられないなら……」


そういうと、叶え人はひと呼吸おいて

「では、今日私からあなたにお話しするべきことを……あなたはここでやめることもできるんですよ」


アイスティを飲みかけていた杏子はハッとして、飲まずにテーブルに戻す。

「それは、叶いそうもないから?」


「いえ、夢は叶います。ただ、ある理由で一週間経つと、皆さんにこの質問をすることになっているんです」


杏子、不安そうな表情になり、

「ある理由って?」


叶え人、コーヒーを一口すする。

「たまに……ですが、夢が終了したあとの時間に耐えられない人がいるんです。そして、私に文句を言いに来ます。夢なんか叶わない方がよかった。自分の記憶も消してくれって」


杏子は黙り込む。


叶え人はさらに続ける。

「でも、それはできません。夢が叶った後も、本人の記憶はずっと残り続けます。だから、一週間経った時点で一度、本人の希望を聞きにくることになっているんです。あなたも今なら引き返せます。今なら、アージに会ったことも記憶から消してあげられます」


杏子はうつむいてしばらく考える。

「それって、ええと……」

杏子、顔を上げて

「二人の間になにもなかったことになるの」


「その通り」


「もし、夢を続けた場合、30日過ぎた後の彼の記憶は?」


「二人に関する事はすべて省かれます。たとえば、本を拾ってもらったこと、ラーメン店での出来事や灯台までの散歩なども、彼の記憶には残りません」


杏子はまたうつむく。

(灯台までの二人の散歩が、アージの記憶に残らないなんて……。でも、少なくとも私にはずっと残る。それなら、もっともっと思い出を作りたい)

   

杏子は星のペンダントに手をあてると、うつむいたまま、きっぱりと

「やめません。やめたくありません」


「気持ちは変わりませんね」


杏子は叶え人をまっすぐに見ると

「はい」  

   

叶え人が席を立つ。

「わかりました。返事を聞いて安心しました。では、私はこれで」

そういうと、伝票を取り上げようとする。


杏子がそれに手を置く。

「私に払わせて、お願い」


叶え人、一瞬ためらうが伝票から手を放して

「わかりました。ごちそうさまでした」


叶え人は店を出る直前に一度振り向いて、微笑みながら

「良い思い出を」


杏子はしばらくじっと座っている。

アイスティの氷がカランと音をたてて揺れ、溶けてゆく。

胸元には青い星のペンダント。

夢の相手は台湾の人気俳優アージだった!

30日後にはアージの記憶から杏子は消えてしまうが、それでも良いと決意した杏子。二人の物語が始まっていく……。

第5回「アージの苦悩」は9月1日(金)夜掲載。

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