第11回 残された希望
台湾ドラマのようなお約束場面がいっぱいの、プラトニックなラブロマンス。
自分好みのピュアな物語を妄想全開で書いています。
脚本バージョンも作成していつか2時間ドラマに。
ヒロイン・町田杏子(まちだきょうこ26歳)
30日限定の夢の相手は台湾の俳優アージ
舞台は香川県、金曜日更新、全12回
ゆき恵が聞く
「アージなの?」
杏子、首を縦に二回ふる。
ゆき恵の目から、涙があふれる。
「やだ、私が泣いてどうするの」
杏子はメールとゆき恵を見比べながら
「でも、なぜ?」
「そんなこと、会って本人に聞きなさいよ。それより早く行きなさい」
ゆき恵は杏子を急かせてカフェの外に出ると、
タクシーを拾い、杏子を押し込む。
杏子は心細そうに
「ゆき恵……」
「ともかく行きなさい。神様だってきっとあなたの味方よ。後悔しちゃダメ」
タクシーが走りだす。
空港にタクシーが着き、杏子が降りる。
夜でも明るい建物のまわりを見回しながら、空港のロビーに入っていく杏子。
入るとすぐの壁にアージがもたれている。
アージは杏子を見て身を起こし、杏子がそんなアージにゆっくりと近づく。
アージは、杏子の胸のペンダントをじっと見つめ、杏子の両肩に手を置きながら
「今、なぜ?って思ってる?」
杏子は無言で首をたてにふる。
「その話をする前に、君と初めて歩いた場所へ僕を連れていってほしい」
杏子はとまどいながらも、もう一度首をたてにふる。
二人は空港からのバスに乗り、並んで座る。
杏子はやっと
「……どうして」
と聞く。
アージが目を閉じて何も言わないので、それ以上は聞けない。
バスが港に着き、アージは先の方に見えている灯台をじっと見つめる。
「ここが君と歩いた場所?」
杏子はうなずく
(やはり覚えてないのね、アージ。でも、それならなぜ、私に連絡を?私のことは覚えていたの?この一か月、何があったの?)
アージは近くのベンチに座り、杏子にも座るようにと目で合図する。
杏子も黙ってゆっくり腰掛ける。
アージが話し始める。
「君は、叶え人に会った?」
杏子は驚きで何も言えず、目を見開いてアージを見る。
「やっぱり会ったんだね。僕も会ったんだ」
杏子はあわてて聞く
「いったい、いつ?どこで?」
アージは遠くを見るような目つきで
「台湾に帰る飛行機の中で」
飛行機での叶え人との出来事を思い出すアージ。
「あなたには叶えたい夢がありますか」
契約書にサインをしながら
(仕事での自分の態度を改め、婚約者への気持ちの整理ができますように)
と願ったのが午後7時5分前。
アージは杏子の夢叶い時間が終わる7時までの五分間、杏子と二人で港を歩いたことを思いだしていたのだ。
そして、台湾での出来事も語り始めるアージ……。
五分間だけの記憶を頼りに杏子に会いに来たアージは、初めて二人で歩いた場所へと向かう。
台湾で何があったのか?
二人はどうなるのか?
次回12回(最終回)は「恋する灯台」