アイ、クビと宣告
「どうして、クビなのですか?」
「魔法が使えなくなったからに、決まっているでしょ。役立たずは、要らない。」
冷たく言ったのは、使用人を束ねるリンだった。
(ちょっと、待って~~~~~~~( ゜Д゜)
今、クビになったら、物騒な外の世界に出ないといけないよ~。
何にも知らない私は、死んでしまう可能性が高くなる。
まだ、優秀な人材を部下にしてないのに、ここで引き下がる訳にはいかない。)
「あ、あの莫大な利益を得る方法を提案させて頂ければ、
このまま雇ってもらえますか?」
「莫大な利益だと?」
「はい。」
リンは、腕組みをして考え始めた。
「取り敢えず、方法を聞いてからにしましょう。」
(よし、食い付いた。)
ゴホンと咳ばらいをして話始めた。
「競馬でございます。」
「競馬?」
「ハイ。レースで勝つ馬を予想して、着順を当てるゲームです。」
「それで?」
「お客様が、1番速い馬を予想して、金額を賭けます。
当たれば、【オッズ×金額】のお金が入る仕組みになります。
オッズは、お客様がどの馬に投票したかによって、変動します。
強い馬には、オッズが低くなり、弱い馬には高くなります。
一気に稼ぎたい人は、的中率が低いけど、オッズが高い馬を選べば良いですし、
コツコツ稼ぎたい人は、的中率が高いオッズの低い馬を選ぶと良いわけです。」
アイは、競馬のメリットなどをリンに説明した。
【メリット】
①主催者は、お客の8割は負けてしまうので、非常に儲かります。
②レースに馬を出す人は、レース毎に莫大な賞金が出ますし、
勝てば名誉を得る事が出来ます。
③お客様は、安い金額で儲ける事も可能ですし、
見ていて面白いので病みつきになります。
④周辺の人は、レース毎に人が集まってくるので、
商売をすれば儲かる可能性がアップします。
⑤国は、速い馬を手に入れる事が可能になるので、
戦いを有利に進める事が出来ますし、税金も安定収入として、
手に入れる事が可能です。
じっと話を聞いていたリンは、
「確かに、儲かるかもしれないが、時間とお金が掛かりすぎるから、駄目ね。
と言う事で、アンタはクビ。どっか行きなさい。」
(ええ!! 儲かれば良いんじゃないの? 現代では儲かっていたよ~(><))
「ちょっと待って下さいよ~ リン様。」
リンに近づいて、必死に訴えるアイだった。
「しつこい。ではこうしょう。元でがタダの商売を考えて、3日以内に10万円持って来たら雇ってあげる。」
「そんなの無理に決まっていますよ~ リン様。」
「心優しい私がチャンスを与えてあげたのよ。
無理なら良いは、どっかに行きなさい。」
「わ、解りましたよ。3日以内に持って来ますよ。ただし、お願いがあります。
護衛を付けて貰えないでしょうか?」
「は? あなたごときに護衛ですって? 冗談じゃない。」
「不正な事をしていないか、監視の意味も込めて付けてくれませんか?」
(確かに、誰かにお金を借りて誤魔化す可能性もある。)
リンは、少し考えて答えた。
「いいわ。付けてあげる。ただし、3日以内に出来なければ、素直に立ち去りなさい。いいわね?」
「ありがとうございます。リン様。」
(ふぅ~。これで、外に出ても少しは大丈夫だろう。)
「リン様。よろしいのですか?あんな約束をして」
「約束は守るわよ。10万円を持ってくれば、商才があるって事で使えるし、
無理なら、出てて行って貰えばいいからね。」
(それより、アイが言っていた競馬。ワザと断ったが、なかなか良い案かもしれない。)
「最近、冷たくないか?」
この人は、夏児と言って、転生する前の人と親しかったらしい。
「そ、そうかな。」
(私は、この人が嫌いだ。強引で、直ぐにお金の催促をしてくるだよね。)
因みに、夏児のステータスを見てみると
◎名前
夏児(男)
◎基本値
武力:25
知力:32
政治:53
外交:15
魅力:13
潜在:15
◎魔法
止1
◎その他
直ぐに手が出る
ギャンブル大好き
(わぁ。ギャンブル好きで、手が出る男ってろくな奴いないからな、
距離を置いた方がよさそうね。
ところで、武力15って低すぎない? 護衛してくれるっていうから
凄く強い人を想像してたのに、当てが外れてしまった(-_-;))
「なぁ。アイ。いつもみたいにお金を貸してくれよ。」
夏児がアイの肩に手を掛けて、囁くように言った。
「嫌」
アイは、咄嗟に夏児を両手で突き放して、逃げ出そうとした。
所が、体が動かなくなってしまった。
「ああ! 優しくしてやったら、調子に乗りやがって、このブス女が」
アイの髪を引っ張った。
「痛い、痛い、離して」
夏児は、アイの頬を叩いた。
突然の事で、放心状態になったが、直ぐに睨みつけた。
「なんだその目は?」
さっきよりも強いビンタを与えた。
アイは、ビンタされた頬に手を当てながら、睨みつけた。
「てめぇ。」
怒った。夏児は、ヒザでお腹を攻撃すると、
「ウッ」
アイは、お腹を押さえてうづくまってしまった。
髪で顔を上げさせてから、顔にパンチをしたら、アイが吹っ飛んだ。
アイは、怯えた目で夏児を見た。
その後、夏児が近づいて、もう1発殴った。
「もう、もう止めてよ。」
ゆっくり、笑みを浮かべて近づいて、腰を下ろした。
「お金。くれるよね。」
目が笑っていない笑みで、優しく言った。
「は、はい」
涙を流して、手が震えながら、お金を渡した。
「痛かったろう? 最初からそうすれば良かったんだ。」
殴った場所を優しく触った。
「この顔じゃ抱く気も失せるから、良くなった抱いてやる。」
夏児は、立ち上がってどこかに行ってしまった。
残されたアイは、涙が止まらなかった。
(悔しい、悔しい。
何で、あんな奴に大事なお金を渡してしまったのか。
何で、三国志の世界まで来て、こんな事をされないといけないのか
何で、何も出来なかったのか。)
複雑な感情が、頭の中を駆け巡った。
そして、アイは思った。
【絶対にアイツを私は許さない。】
アイの目は、復讐を誓う目になった。
宮殿の庭で、二人が戦っていた。
「ま、参りました。」
「もう~終わりか。」
「何となさけない。それでも、男か?」
「も、申し訳ありません。」
1人の兵士が恐縮した態度で謝った。
「姫様がお強いのですよ。」
「フン。これでは稽古にならぬではないか。
つまらなぬ。外に出かけるぞ。」
「いけません。王様のお許しがなければ、外出する事は出来ません。」
「な~に。そちが黙っておけば良い事だぞ。」
ウーリンは、ニヤリと笑った。
「ダメです。今度バレてしまったら、私が罰を受けてしまいます。
どうぞ、お許し下さい。」
「大丈夫、大丈夫。バレないようにするから」
「何がバレないようにすると?」
「お父様。」
ウーリンは、父親の前に駆け寄った。
「お父様。お願いがあるの?」
上目遣いで、ウーリンは父親を見た。
「お父様では無く。王様と言いなさいと何度言ったら解るのだ。」
冀州を治める韓馥が、娘に注意をした。
「他の者が見ている公式の場では、ちゃんとします~。」
甘えるように言った。
「所で、ウーリンも年頃だ。そろそろ。身を固めても良いのではないか?」
「お父様が紹介する相手の方は、私より弱いんだもん。
もっと、強い方はいないの?」
「そなたより強い者は沢山いる。だが、どこの骨かも解らない相手に大事な娘をやる訳にはいかん。」
「だったら、速く相手を探してよ。お父様。」
「探してはいるんだがな~。」
頭をポリポリ掻いた。
「それじゃ~。私が探してくるわ。結婚相手にふさわしい強い相手を。」
ウーリンは目を輝かせて、父親に詰め寄った。
「おい。おい。近づきすぎるぞ。ウーリン。」
「ねぇ。ねぇ。良いでしょう~。」
左右に体を揺らして、ねだった。
「解った。解った。では、探してみなさい。
ただ、強くても私が納得する相手でなかったら、駄目だからな。」
「やった。ありがとう。お父様。」
嬉しさの余り、父親の頬にキスをしたウーリンだった。
「よーし。結婚相手を探すぞーーーー!」
◎名言集
◇武田信玄
「自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ。
この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことは無いはずだ」