七十九話
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強い日差しなのに、さわやかな風が頬を撫でる。
若葉の芽吹く春先の香りがする。
足元は下草の世代交代が始まりだしている。
枯れた草がシナシナとしおれたと思いきや、形を失い泥状に変わる。
よく見ると、粘菌やカビが水中のアメーバーのように活発に活動し土を作り出してゆく。
どこから来たのか小鳥が飛び去り、落とした糞から驚異的なスピードでいろんなものが芽吹き始める。
食事を終えた聖者一行の600人が寛いでいたが、いつの間にか周辺の変化に呆然と立ち尽くしている。
「神様、もう少しこの場を見守っていただけますか?」
サミエルが少し離れて、みんなを見ていた僕に話しかけてくる。
「まだやり残したことがあるのかな?」
「はい、私達と初めてとどまったこの地に、祝福を与えたいと思います」
「ここに残りたいと考える者もいるでしょう」
「その後の生活が少しでも豊かになるようにと思っております」
・・・・優秀な賢者様ですねぇ、いいですねぇ頑張っちゃって下さい。
「うん、急ぐわけではないから構わないけでど、ここだけ特別にしてしまうといろいろ大変だよ?」
「心得ております」
「うん、なら好きにしていいよ」
3時間ほど滞在した窪地はもう荒れ地でもなんでもなく、半径1kmほどの豊かな草原と小さな森が出来始めていた。
・・・・あ、ダンゴ虫がいる。がんばれぇ!
僕は植生の成長と死滅を繰り返す大地に姿を現したダンゴ虫が元気に蠢く姿にここが豊かな土地になるようにと、思わず願ってしまった。
・・・・あぁ、いけない。僕が望むと異様な状態になるんだよな・・・・
・・・そろそろ、移動しないと。
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