二十一話 長文注意?
惑星アタミ、温泉街から見える広大な砂漠に繭型の巨大宇宙船が静かに着陸した。船の全長は3km・幅1Km、全く重さを感じさせない柔らかな着地だった。振動が着陸を人々に伝えると同時に船から靄のように無数の小型ドローンが飛びたち四方に飛散してゆく。
この惑星で12箇所同時侵攻が開始される。他の惑星の侵攻過程の報告通り周辺の資源調査。主に生態系に関する全てを調査・観察・収集し船へと行き来するドローン。着陸して僅か3時間でテラホーミングが開始された。
繭状の宇宙船が少し膨れ上がり、大気を吸い込む音が轟音となって響くと同時に上空へタンポポの種子のような物が強い排気と共に成層圏まで上空へ吹き上がる。その量は積乱雲が立ち上る様と似ており、強力な上昇気流は雲を作り、雨と共に種子を地上にばら撒いた。
種子は水分がない状態では呼吸すらしない。発芽に必要な環境があるが、この種子は空気中の水分により発芽を始めており、地面に着地するなり上下に向かい急激に成長を開始する。その成長速度は毎秒3cmと異常な速度だ。
繭周辺での大気成分が変異し始めている。空気中に浮遊する放射性物質や有害金属などをフィルターで取り除き、この惑星の生物にとって最適化された気体成分を種とともに大量に吐き出し続けている。
飛来した種子は着地2分で実を付け種落とし枯れるが、次の世代が少し大きくなりながら同じ工程で大地に己の体を敷き詰めてゆく。繭の周辺は緑と黄金色の斑を繰り返し3日で大森林と化してしまった。
驚くべきは、その植生が現地の植物群と同種に置き換わっており。急成長した植物はすでに残っていなかった。
連合軍が繭に進軍し取り囲むまでに起きた変化はこれだけではない。
森林には、この惑星で絶滅したであろうと思われた動植物が再現されており、砂漠の臨界では成長する森と奇妙な綱引きがあり、緑と砂色のパッチワークを作っている。
連合軍のコマンダーは、地図を見ながら目を疑った。
「偵察隊のリーダは誰だ」
「私であります」階級章から軍曹だと分かる。
「ここは砂漠のはずだが、私のMapデータが古すぎるのか?」
「サー、ここは3日前まで砂漠でした」
「わかった、もういい下がれ」
コマンダーは偵察ドローンを放つように諜報を担う部隊へ指示をだした。
それほどせずにコマンダーの周りになぜだか羽虫が集る。
「サー、上申いたします」
「許す、言え」
「この羽虫は敵性と思われます、直ぐ潰れますが何分数が多く処理し切れません」
「確か火炎が有効であると報告があったがどうだ?」
「サー、順次投入しておりますが全て取り除くことは困難です」
「そこまで多いのか・・・・」
陣営の所々に羽虫の集まる靄が柱のように立ち上がっておりその高さは10mを軽く越えており、所々火柱が羽虫を焼く作業が見えるが、その殆どは火炎の風圧で吹き飛ばされているようにも見える。
それほどせずに探査ドローンが帰還した。下士官がドローンを操作し映像を投射させる。
セコイアの生い茂る大森林。樹の幹は大人3人が両手を広げても囲いきれないほどに成長しており、妖精が現れても頷ける神秘的な映像を再生していた。
そして、ドローンは採取物をコマンダーに渡す。
それは解析不能な物質で作られた抽象化された全身像。
頭に渦巻き状の被り物をのせた人型で手にコントローラーのようなものを持っている。手足は一対で足は極端に内股だ。
――――あ・・それ、たぶん僕だ。
「なんだこれは、何かのオブジェのようだが」コマンダーはトングのようなものでオブジェをつまみ眺めている。「あっ」下士官が声を上げる。
映し出される映像に突然アップの眼球が写る。眼球といっても昆虫の複眼である。
「チキチキチチ・キチチチ・チキチチキキピーチキキ」ドローンに話しかけて何かに気が付いたように画面からフェイドアウトし、直ぐに画面に戻り絵に収まるように距離をとる。
『我々は神より与えられし名を持つクアダキ人である。戦闘の意思はない。我が偉大なる神は己の持つものを分かつこと・見守ること・与えることを説いて下された。よって我々はそれを広めようと考えこの星を訪れた。司令官にささやかな贈り物を送らせて頂いた、我が神の像である。我がクアダキ人より遥か高き所におわす実在する神である。その神は常に我々を見守って下さる尊く慈愛にあふれる神である』
――――神 代行ね。
『既に茶会の準備は整っており、貴殿達の来訪をお待ちしている』
コマンダーは先ほどのオブジェを見ながら決意を固めた。オブジェより微かな腐葉土の臭いがした。
――――クアダキ人汚い手で触ったな・・・・コマンダーさん?それうんち臭だと思うから手洗ったほうが良いよって、聞こえないか。
作者かなり壊れてきたので、しばらくリアル世界に戻ります;;
まじめに仕事する;;




