1,召喚
声が聞こえてくる。
「やった!」「成功したぞ!」「おぉ、勇者様!」「うぅ・・・はは、やったぞ!」「これで、これで我々は救われる!!」
段々と光が収まってゆく。
目を開けると、そこは―――――――――――
輝くようなシャンデリアに、黄金色に輝く壁面。見上げるように高い天井には美しい色彩の絵画。
生涯で一度も見る機会がないような、贅を尽くしたようなホールだった。
どこだ、ここは?
たしか、さっき妙な光に包まれて・・・・
辺りを見回すと、奎やクラスメイトはおろか学校の生徒全員がここにいるようだった。
「え?え?」
「なんだぁ、ここ?」
光につつまれる寸前に話しかけてきた二人が声をあげる。
「まぁ、あれだな。勇者召喚みたいなやつだろ。」
俺の見解を述べてみる。オタクな俺にしてみればこんなポピュラーな光景はないからな。もっとも、自分が巻き込まれるとは思わなかったが・・・・・
「んで、説明かなんかあるでしょ。だからあんま迂闊なことすんなよ、灯、克人。」
「え~何それ?まぁ、わかったけどさ~。」
と、口をとがらせる。
コイツは武藤 灯。見ての通り、ふわっとしているが委員長なんかを任されるくらいには、人望がある。
成績は優秀で人当たりがよく、誰にでも分け隔てなく接する。そしてなんといっても容姿は抜群。身長160cmで、全体的にほっそりとしたかんじだが出るとこは出ている。
そして特筆すべきは老若男女問わず目を惹かれざる得ない漆のような黒髪だろうか。まぁそんなわけで、優しく接されてコロッといってしまう奴は数えきれないのだ。
一方、
「勇者召喚・・・ってマジか!!おい、陽希!こりゃもうたまんねーな!」
このちょっとぬけているような男は近藤 克人。
精悍な顔つきをしているがっしりとした大男だ。印象どおりだが運動に関してはずば抜けている。が、彼にはちょっとした秘密がある。
もったいぶることでもないが、かれは隠れオタなのだ。
それを、おれが偶然知ってしまっていまの友人関係ができたのだが・・・それはまた別の話ということで。
とにかく、これをぬけばコイツも人気者だということだ。
もちろん、奎も人気者というかモッテモテだ。
やっぱまわりがこんなスペック高いと、劣等感やばいわ・・・
しかもまだいるんだよな、これが。
なにやら騒がしくなっているところがある。目を見やると一人の女子生徒が人ごみを割ってこちらへ向かってきた。
「あ、いたいた。お~い、陽ちゃ~ん!!」
うっ・・・
出ました、4人目。
女子生徒が俺の目の前に立つ。
「いやー、みつかってよかった!いきなりこんなんなってちょっと心細かったんだよねー。」
全然心細くなんてなさそうだが。
「そりゃ、よかったね。で?人目があるところではあんま喋んないようにするんじゃなかったの?」
「今は緊急事態だから解除中ー。」
この女子生徒も俺の数少ない友達の一人なんだが、こういった人目があるところでの会話は極力避けている。なぜなら・・・・・
「おい、あいつ誰だよ。」「ほら、あれだよ。和泉たちにくっついてる・・・」「あいつ、優ちゃんとも付き合いあんのかよ。」「つか、生の優ちゃんマジかわいい!」「な、俺この学校でよかったわ~!」
これらな反応から分るとおり有名人、というか今をときめくアイドルなのだ。
あー、また周りの距離広がるなー。
でも、もう関係ないかなー。
なんて考えていると、透き通るような声が耳に入り込んできた。
「ようこそおいでくださいました、勇者様方。」
目を向けると俺たちよりも一段高いところに、ローブを羽織っている疲れ果てた様子の男性数人と―――――
王冠のような金髪を戴いた美しい女性が立っていた。
次回、「ステータス・・・え?」