14
『――――……っ、』
薄暗い水底で、重い何かに閉ざされかけていた意識が覚醒するのを感じたトウカがまず真っ先にしたのは、自分の背後を確認することだった。
トウカの意識と手足を戒めていた水晶にバキバキと罅が入り、端から砕けていく。身を捩ってそこから抜け出し、トウカは水晶の塊を振り返った。
壊れてゆく封印の奥で、水草のように何かが揺れた。ゆらりと仄暗く灯った二つの双眸が、トウカをまっすぐに射た。
(……まずい)
半ば茫然とした頭で思った刹那、真下から襲ってきた猛烈な衝撃にトウカは吹き飛ばされた。体が浮いたと思った一瞬後、視界に入ったのは青空だ。盛大な水柱を上げて放り出されたトウカは、そのまま地面に叩き付けられた。受け身は取ったものの勢いを殺し切れずに体を打って、思わず数回咳き込む。
「――トウカっ!」
真っ先に反応して振り向いたアージェットが、いつになく青褪めた顔で駆け寄ってきた。ソーマとミュリエラもその後に続いて小走りで駆けてくる。
「トウカ、無事か。魔力は?」
「ああ、大丈夫だ。あまり喰われてはいない」
答えながらぐらつく視界に耐えて身を起こしたトウカは、アージェットの髪が血に濡れていることに気付いて眉根を寄せた。
怪我をしたのか。そう聞く前に、たった今放り出されてきた泉の水が激しく沸き立った。
ごぼごぼと音を立て、生き物のように水が踊る。ばっと視線を向けた彼らの前で、泉の中から姿を現したのは細い人影だった。
「……封印が、解けたのか」
現れた相手を見て、呻いたソーマの顔からは血の気が引いていた。ミュリエラはかたかたと震える体を抑えつけ、それでもいつでも盾を出せるように構えている。
「――あー、あー、あー。
どうも初めまして、アージェット・クルージオ、トウカ、それからえーと、ソーマ・コーンフィードににミュリエラ? 僕をあの胸糞悪い檻から解放してくれたことに、心からの感謝を捧げるヨ」
水面から僅かに隙間を開けて虚空に浮かび上がったその男は、そう言って場違いに陽気な笑顔で笑った。
――正直言って、最悪に近い展開と言っていい。
にこにこと頬の筋肉を緩めるその相手は、見た目だけなら人当たりのいい好青年といった様相をしていた。トウカ以上に整った秀麗な目鼻立ちに、水に濡れた様子もない長い髪は濃い群青。瞳は熟成したブランデーのような深い琥珀の色を湛え、そこに楽しげな笑みを浮かばせる様子は、これから散歩にでも行こうかというような軽い雰囲気を発している。
「――上位、魔族……」
アージェットが呻いた。青年は口の端を吊り上げ、緊張を露に自分を見つめる四人を見渡して言った。
「うん、一応そういうことになってるネ。僕の名前はアウラストル・コル・エザロウード・シルド・エイヴァン。よろしくネ」
まるで生粋の貴族のような仕草で挨拶をしてくるアウラストルに、しかし気圧されるような圧力を感じてアージェットは一歩後ずさる。生まれて初めて目にした上位魔族は、思っていたより禍々しい空気を持ってはいないようだ。だが今は、そのことが何よりも、相手が油断ならない者であることを示していた。――何故なら、禍々しくない上位魔族などというものが絶対に存在し得ないことを、アージェットたちは知っている。
「――お前、」
「アウラストル」
「……アウラストル、お前、さっきオレたちの名を知っていたな。あれはなぜだ?」
子供に言い聞かせるように窘められて、アージェットは言い直した。名前を呼ばせて、アウラストルは満足そうに笑う。
「それはネ、僕がずっと君たちのことを見てたからだヨ」
「どういうことだ」
アウラストルは人差し指を一本立て、指揮者のように振ってみせた。
「こういうことだヨ」
次の瞬間、アウラストルの傍に、一体の魔物が出現した。出来損ないの人形のような姿をした、人型の魔物。息を呑むアージェットたちに、アウラストルはまた指を一振りして魔物を消した。
「どうせだから、分かりやすく最初の方から話してあげようカ。ローレスって地名を覚えてる?」
アージェットに視線を合わせて、アウラストルは聞いてくる。アージェットは頷いた。それはほんの数週間前に彼らが、滅びた故郷の幻とともに生きていた男と、その契約者の魔物に出会った街の名だった。
「あそこにいた魔物――君たちにはリューイシャって名乗ってたのかナ? 実はあれネ、僕が封印される前、僕の部下みたいなことやってた奴だったんだ」
部下が滅されたという割に、アウラストルは平然とした顔でそう告げた。
「あいつは自分の楽しみを探す傍ら、一応僕を解放する方法も模索してくれてたらしくてサ。結局数十年間何も見つからず終いのままとうとう殺されちゃったわけだけど、幸いにして最後の最後で、手段となり得るものを見つけることができた。封印と仲間を天秤にかけて後者を取っちゃうくらい大事にしてる仲間を持ってて、実際に強固な封印を単独で解除できるほどの技能がある奴。それが何かは、もう分かるよネ?」
「……オレとアージェットか」
沈黙するアージェットの隣で、トウカが呻いた。よくできました、というように、アウラストルが満面の笑みを浮かべる。
「そういうこと。僕はあいつが最後の力でよこした伝達を受けて、君たちに目を付けたわけ。さっき見せた魔物はね、僕の力の欠片を具現化させたものなんだよ。幸いここ一年くらいの間に、封印にがたが来はじめてサ。数体の欠片を放ったり、ほんの少しだけ封印や結界に干渉して操ったりするくらいのことはできるようになったんダ。それで君たちを呼んで、完全に封印を解かせようと思ったわけ。本当は『アージェット』だけでも良かったんだけど、魔獣と契約してる上、片腕まで借りてるってイレギュラーがあったから、念のためを考えて一応『トウカ』の方も招いてネ。分かった?」
にこ、と笑うアウラストルに、アージェットとトウカは何とか頷く。
(……ということは、そもそもの原因は『リューイシャ』か。やっぱり元領主の胴体抉り飛ばしてでも、速やかに止めを刺しておくんだった)
たとえそうしたところでいずれは別の神使が連れて来られただろうが、そうなっていれば少なくともアージェットが巻き込まれることはなかっただろう。物騒なことを考えながら、トウカは震える息を無理やり吐き出す。そんな彼らを眺め、アウラストルが小首を傾げた。
「そう、なら良かった。
ところで、他に質問がないなら、時間稼ぎはこの辺にしてそろそろ諦めてくれる? いくら試したって無駄だからサ」
その言葉に、アージェットとトウカの背後で沈黙していたミュリエラと、さっきから密かに羅針盤を操作していたソーマがぎくりと顔を跳ね上げた。
「『扉』を開いて結界の向こうに逃げるつもりなんだろうけど、逃がすつもりはないヨ。またあの神師とかいう奴らにぞろぞろやって来られたりしたら鬱陶しいし――何より僕は、長年封印されていてかなり気が立ってるんダ」
アウラストルから発せられる圧力が一気に跳ね上がった。膨大な威圧感と存在感が、明確な殺意と化して四人を襲う。
「ソーマ様っ、まさか出口が開かないんですか!?」
ミュリエラの顔は蒼白だった。こくりと頷いたソーマはアウラストルから視線を外さず、しかし結界珠を構えて睨み付ける目は動揺を隠し切れずに揺れている。
「この道具は、一時的に結界を無効化して、結界の内外を繋ぐものだ。その操作が、今は完全に阻まれている。あいつが結界に干渉できるというのも、どうやら嘘じゃなさそうだな……」
呻くソーマに、ミュリエラの顔が絶望を浮かべた。代わりにアージェットが吐き捨てる。
「それはつまり……あいつをどうにかしない限り、オレたちは逃げられないってことか」
「そういうことになるな」
顔を強張らせ、それでも右腕を輝かせるアージェットに、トウカも左腕を異形の形に変じさせた。
「ふぅん。やる気なんダ? いいヨ、肩慣らしに付き合ってあげる」
面白そうに言うアウラストルは、その場から一歩も動いていない。それでも、彼がその気になれば指一本動かさずに彼らを全滅させられるのだろうと容易く確信させるほどに、溢れる魔力は圧倒的なものだった。
「そ、ソーマ様……っ、」
「ミュリエラ」
ミュリエラの奥歯がガチガチと鳴っている。震えながら振り向いたミュリエラの声を、ソーマが遮った。
「最後まで俺に付いて来るか来ないか、今すぐ決めろ」
投げかけられたその一言に、上位魔族の発する圧力に怯え切っていたミュリエラが驚いたように目を瞬かせる。一拍置いて彼女はぐ、と唇を噛み、ソーマの顔をまっすぐに見た。
「ソーマ様が行く所なら、どこまででも付いて行くに決まってます。あたしはソーマ様の従者です!」
ふん、と鼻を鳴らしたソーマは、それ以上何も返さなかった。ミュリエラも何も言わなかった。それでも、彼らの準備が整ったことが、アージェットたちにも感じ取れた。
「話は決まった? それじゃあ、始めようか」
泉の中央からふわりと岸に移動したアウラストルの足が、とん、と音を立てて地面に着いたその瞬間――
――――轟っ!!!
閃光と衝撃とともに、形容しがたい破砕音が戦闘の開幕を告げた。
「おっと。危ないなぁ」
アージェットの衝撃波と、トウカの魔力の雷と、ソーマの砲撃。それが、一瞬でミュリエラがアウラストルの周囲に張り巡らせた盾の中で荒れ狂う。
しかし盾が消えたその後に立っていたのは、傷一つないアウラストルの姿だった。防御をしたような気配はなかったのに、アージェットたちの全力攻撃が何の痛痒も与えていない。土埃が晴れ切る前に、一呼吸で間合いを詰めたトウカが打ちかかった。雷を纏った異形の左腕と死角から飛んでくる蹴撃を、アウラストルは両手を使って捌いていく。
その背後から、虚空を裂いて斬撃が飛んだ。寸前で気付いたアウラストルはトウカをガードした腕ごと掌底で吹っ飛ばす。代わりに魔力を刃のように纏わせた腕で、硬化したリボンを手に背後に迫っていたアージェットと斬撃を交わした。
「成程ね、さっきのトウカは囮で、本命は後ろから回り込んだ君の方か。打撃や衝撃波ならともかく、君のそれは当たったらちょっと痛いかもネー」
変わらず楽しげな表情を崩さないアウラストルに比べて、一方のアージェットは余裕がなさそうだった。強化した腕力とリボンの切れ味があるとは言え、それだけで上位魔族相手に押し切れるとは思っていない。
小回りを活かして次々と攻撃を仕掛けているものの、不意打ちの初撃を防がれた時点で可能性は無きに等しいと分かっていた。アージェットは僅かな隙を見つけると、牽制をかけつつ即座に後退していく。
「ん、あれ、もう終わり? 斬り合いって意外と気に入ったな、もうちょっと付き合いなヨ」
そう言ってアージェットを追おうとしたアウラストルを押し留めるように、ソーマの魔力弾が追撃をかける。その間にアージェットはアウラストルの手の届かない位置まで下がり、邪魔をされてむっとしたアウラストルがソーマとアージェット双方目がけて魔力の槍を飛ばした。すぐに反応したミュリエラが張った盾を槍はあっさり破壊するが、続けて出現した二枚目の盾に更に勢いを殺され、次いで三枚目の盾でようやく消滅した。アージェットとトウカが、ソーマたちの所にまで戻ってくる。
「信じられない、盾三枚も張ってようやく一撃……!」
額の汗を拭ったミュリエラが呻いた。咄嗟の反応とは言え準備は整えていたお陰で、ほぼ全力を込めて生み出したはずだった。それがいともあっさり粉砕されたミュリエラは、ショックを隠し切れていない。
「おい、本気で勝てるのか、あんな奴?」
手甲を構えながら、ソーマが苛立ったように声を上げた。
「勝つというのが何を指すのかが問題だな。オレは弱い上位魔族相手なら何とか倒す自信があるが、はっきり言ってあいつとガチでやり合える自信はない」
未だ体に残るダメージに顔を顰めながらトウカが言う。
「あんたが右腕戻しても駄目なの?」
先程、一時的に右腕と本来の力を取り戻したトウカの戦闘力を思い出してか、ミュリエラがそう聞いてくる。だが、トウカは首を横に振った。能力の点以上に、その案には問題があった。
「駄目だ、あれはアージェットの体に負担がかかる。さっき一度やった以上、下手に同じことを繰り返せばアージェットが持たない」
告げながらちらりと視線を向けたアージェットも、表情を険しくしていた。こんな短時間で二度も「返還」を行った経験は、彼らにはない。できないことはないだろうが、数分も持たずにアージェットが限界を迎えるのは目に見えていた。
「ねえ、いつまで自分たちばっかりでお喋りしてるのサ?」
つまらなさそうな声が聞こえたと同時に、青白い火花がソーマを打ち据えた。引きつった喉から絶叫を洩らして、ソーマが地面に崩折れる。
「ソーマ様ぁっ!」
ミュリエラが悲鳴を上げて全方位に盾を展開させた。盾の陰に隠れて、アージェットが急いでソーマを診る。幸い何とか意識は保っているようだが、自力で動くことは到底不可能な様子だった。
「ソーマ、しっかりしろ。オレは治療ができない」
「……うるさい、分かってる」
無理やり上半身を起こして、ソーマは結界珠を使って己の怪我の治療に入る。そうしている間にも、アウラストルは攻撃の手を緩めてこなかった。ひっきりなしに響き渡る着弾音や衝撃が、相手の攻撃が一秒も休まずミュリエラの盾を破壊し続けていることを知らせてくる。破壊される端から新たな盾を生み出し続けているミュリエラは、とうに息が上がっていた。
「――アージェット」
爪を噛みながら考え込んでいたトウカが、不意にアージェットに声をかけてきた。迷うように眉間に皺を寄せながら、それでも耳元に顔を寄せ、ひそひそと自分の考えを伝えてくる。
「できるか?」
トウカの問いに、しばらく考えたアージェットは僅かに眉根を寄せ、ややあって聞いた。
「……お前は、大丈夫なんだな?」
その言葉に、トウカは少しだけ頬を緩めた。
「ああ、安心しろ。……もう二度と、お前の前でへまはしない」
――その言葉にアージェットがようやく安堵したことを、察したのはトウカだけだっただろう。
「……そうか。ならそれで」
「ん」
アージェットの了解を得たトウカは、くるりとソーマとミュリエラを振り返った。
「ミュリエラ、タイミングを見計らって盾を消してくれ」
「……分かったわ。ソーマ様以外の命令聞くなんて滅多にないんだからね、失敗するんじゃないわよ!」
「ソーマ、動けるか?」
「俊敏な動きは無理だがな。援護射撃くらいはできる」
全員が準備を整えたことを確認して、ミュリエラは盾の外に意識を集中した。
着弾、着弾、衝撃、着弾――
――ほんの一瞬、攻撃が止んだ。
「――GO!」
ミュリエラが盾を解除すると同時に、アージェットとトウカが飛び出した。真紅の帯と化したアージェットの右腕がトウカの元に戻り、瞳と頭髪が色を変える。トウカは右腕を輝かせて猛烈な衝撃波を撃ち放った。これまでとは桁違いの威力。全力を込めた衝撃波は避ける素振りも見せないアウラストルに直撃し、盛大な土煙を舞い上がらせる。
「目眩ましのつもり?」
やはりけろりとした顔を崩さないアウラストルは笑って、即座に顕現させた雷で辺り一帯を舐め尽くした。煙と雷を突っ切って飛び出してきたトウカの左腕を、魔力を纏わせた腕で受ける。
「君も懲りないネ。二番煎じは通じないヨっ!」
アウラストルは衝撃波を伴った一閃でトウカを弾こうとするが、トウカは退かない。瞳に金色の光を灯し、アウラストルを抑え込んでくる。ちっ、と小さく舌打ちして、アウラストルはアージェットの気配を探り――そして、間近に迫っていると思った気配が自分から離れていることに気付いて眉根を寄せる。
ぶつかり合う衝撃で生じた強風に煽られるように、アウラストルとトウカを取り巻く土煙が晴れた。
そこで見えた光景に、アウラストルは初めて目を見開いた。
真白の少年はアウラストルを迂回し、泉を回り込んで疾走していた。その向こうには、未だ生きている大きな水晶型の結界珠が淡い光を放っていた。
「させるカっ!」
アージェットの狙いを悟ったアウラストルが、トウカに腹に全力で魔力の嵐を叩き込んだ。紫電を纏ったそれは放電の音を上げ、力任せにトウカを弾く。
泉の向こうで結界珠に辿り着いたアージェットに照準を合わせ、衝撃波を放とうとしたアウラストルを、ソーマの魔力弾が阻んだ。最初の頃とは格段に力の落ちているそれをアウラストルは鬱陶しそうに払いのけ、構わず衝撃波を放つ。振り向きもしないアージェットに直撃するかと思われたそれは、一挙に何重にも展開された魔力の盾に防がれた。
アージェットの指で結界珠の指輪が輝いた。水晶型の結界珠が呼応し、再び強い光を灯した。
「いい加減にしなヨ!」
叫んで一瞬でアージェットに接近したアウラストルが、魔力の刃を振り下ろした。その手を、二人の間に割り込んだトウカが受け止めた。一時たりと集中を途切れさせることのなかったアージェットの制御に従い、結界珠が一際強い輝きを放った。
「醒めろ、結界珠! 現の夢は彼方の果てに!」
六つの結界珠が光の柱を上げた。泉の水が沸き上がり、透明な蔓が意志を持っているかのように伸び上がって、アウラストルを捉えた。
「―――――っっ!!!」
悲鳴のような声を上げるアウラストルに一切の抵抗を許すことなく、蔓は群青色の髪の魔族を泉へと引きずり込んでいった。ごぽごぽごぽ、としばらく立ち上っていた水泡が消えてゆき、やがて水面が静寂を取り戻す。
「……やった……か……?」
ゆっくりと泉に近づいて、二人は水面を覗き込み――
――ざんっ!
アウラストルを捉えたものと同じ蔦が、水を切り裂いてアージェットたちに襲いかかってきた。
『!』
動揺に揺れた二人の背中を、後ろから伸びた手が引っ張った。アージェットとトウカの間を縫うようにして放たれた魔力弾が、透明な蔓を打ち砕いた。
「ソーマ……」
「ミュリエラ……」
振り向いたアージェットたちの前で、二人の背中を掴んでいたミュリエラと、その後ろで手甲を構えていたソーマが、同時にニヤリと笑ってみせた。
「感謝しろよ」
「崇め奉るといいわ」
同時に言い放たれた台詞に、トウカはようやく肩の力を抜いて嘆息し、アージェットは耐え切れなくなったように、微かな微かな苦笑を零した。
彼らに対して初めて見せる、彼らに向けた笑みだった。