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重なり・・・


そうして二人と別れると、さっきまで堪えていたものが溢れてしまいそうになった。

でも、谷には気づいてほしくないから、堪えないと・・・

『お嬢様?』

ずっと黙っているあたしを心配したのか。

谷は覗き込むようにして見てきた。

『何よ・・・』

『いえ、ご機嫌が悪いのではないかと思いまして』

『そんなこと・・・』

『もしかして、先ほどのお友達とあまり仲がうまくいっていないのでは?』

谷は心配そうに聞いてきた。

悩みの種が自分とは知らずに、本当に鈍感にもほどがある。

谷に悪意を感じそうになるほどだ。

『そうじゃない・・・どうして谷はそうなの?』

『えっ』

あたしはそこで足を止めた。

『お嬢様?』

『どうして谷は何も気づいてくれないの?もう無理だよ』

黙って。

閉じてよあたしの口。

『それは、どういうことですか?』

谷は焦ったように聞いてきた。

涙はまだ堪えられる。

『あたしは・・・谷に、他の女の子に笑顔を向けてほしくない。好意も向けられてほしくない。

谷はずっとあたしの執事で、小さい時から一緒で、だからあたしが谷のことを一番よくわかってる』

谷は黙って聞いてくれている。あたしの口はまだ閉じそうにない。

『あたしのことをよくわかってくれているのも谷なの。あたしが辛い時、誰よりも傍にいてくれた。

だから、これからもずっと・・・』

『お嬢様』

黙っていた谷が、いつもよりも真剣な調子で言った。

『私にどうしてほしいのですか?』

『えっ』

そこであたしの口は閉じられた。

それと同時に、思考も止められた。

『私のために涙を流しておられるのですか?』

『えっ』

自分の視界が歪んでいることに気づいた。

あたしは泣きながら谷に話していたのだろうか?

涙だけは堪えるつもりだったのに・・・

『お嬢様。いえ、凪』

『凪の気持ちは私と同じですよ。そのことは重々承知しておりました。すみません』

谷はそういうと、あたしを包み込んだ。

どういうこと?

谷の言葉も、今の状況も、今の頭では何も理解できなかった。

『凪、辛い思いをさせてすみませんでした。しかし、この想いを伝えていいのか。ずっと悩んでおりました。

私はただの執事です。凪とは交わってはいけない身分にあります。なので、今まで必死に気持ちを押し殺していました。

しかし、凪も私も近くにいすぎたようですね。私も限界です』

背中に回っていた腕が離れると、谷はあたしの目を見た。

気づくと視界が谷でいっぱいになっていった。

まるでこれからの行為をわかっていたように、あたしは自然と目を閉じていた。

その出来事は時間にしては一瞬だったに違いない。

でも、あたしにしては谷に会った今までの長い年月よりも長く感じられた。

まるで、この日のために過ごしてきたように・・・



『凪・・・』

『何?』

『いえ、何でもありません』

再び歩き出した時に、谷は立ち止まった。

何でもないと言った谷の言葉が凄く気になった。

悲しそうに遠くを見つめている谷に、何か声をかけようかと思ったが、さっきまでとは違い、

言葉が何も出なかった。

重なり合ったと思った想いは、まだきっとすれ違っている。

本当にあたし達は想いを交えて良かったのだろうか。

帰り道の間あたしはずっと考えていた。




家に帰ると、あたしは黙って部屋に入った。

伝えないと決めていた気持ちが交わって、喜ぶべきなのに・・・

どうしてあたしはこんなにも複雑な想いを抱えているのだろうか。

谷のあんな表情を見たからかもしれない。

谷も今までずっと辛い思いをしていたのだろうか。

それでも、ずっとその想いを隠してあたしに優しくしてくれたのだろうか。

あたしが困った時、何も言わずに助けてくれたのは、そういうことだったのだろうか。

ベッドにうつぶせになっていると、何やら話し声が聞こえてきた。

あれ、この声ってもしかしてお父様?

お父様が帰られるのは明日のはずなのに・・・

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