妹ざまぁが本当に正しいのか高座開いた噺〜姉妹合戦〜
芥川龍之介の猿蟹合戦(蟹は猿に仕返しをやりすぎて、童話の猿蟹合戦が終わったあとに兄弟から見放される話)を聞いて思った話。
猿蟹合戦の猿好きな人や「やりすぎじゃない?」と思った人は、一度聞いてみるのおすすめですよ〜。
むかーしむかし、あるところに強欲な妹と慎ましくも優しい姉がいました。
妹は姉のものでも何でも欲しがり、姉は奪われてばかりおりました。
姉が何度言っても妹は聞き入れず、さらに激しくなっていく行動。
姉が心身ともに限界を迎えかけたそんな折、それはそれは美しく、そして強く、高貴な男が現れたのです。
妹はその男を欲しがります。
しかし、男は妹に目もくれず妹に罵詈雑言を吐き、姉のために現れたそうで、姉にこりゃあ聞くのも恥ずかしいくらいの言葉で慰めます。
あいや、失礼。何分、この年では語りもろくにできず……ほほ、話に戻りましょうか。
姉は困惑しつつも、美しい男の手を取り、そこから姉は不思議なことにどんどん愛されていき、高貴なものへとなっていき、かつて不遇だったのもどこへやら、完全に姉と妹の立場は逆転しました。
妹はそれでも諦めず、姉のものとなっている男を欲しがります。
いやー、しかしこれはそんなに悪いことでしょうかねえ。
愛されたいっていうのは赤ん坊でもある原始的な欲求です。
え? そんな欲求は赤ん坊しかない? ほほ、ご冗談を。悋気によって大小問わず揉め事を起こすのは大人も同じ。古今東西ね。
人のものを欲しがるのは良くないでしょうなあ。
しかし、男の態度もまた、姉の醜いところの発露のような気がしてどーも、ねえ。っほほ。
そして、妹は諦めることなく男を欲しがりますが、姉は幸せに包まれ痛痒も感じず、男と逢瀬の時間を楽しみます。
姉は妹を放っておくつもりでした。しかし、都合のいいことに男は妹を拷問の末に惨殺し、最後には首を落とすという痛ましい事件があったのは、この国の歴史に刻まれている通りです。
誰もが言いました。
あれは盗賊の仕業だ。
いや、モンスターの仕業だ。
とうとう悪魔が来たんだ。
もしかしたら、神の天罰かもしれない。
不思議不思議、事態は姉の深層心理を反映したかのように動き、それが男の仕業とも誰も気づきません。姉すらも。
だがしかし、この国の優秀な捜査の結果、まるで神の加護が切れたかのように男の残虐な行動が明るみに出て、男は刑に処されます。
おお、ここで黙ってないのが姉です。
姉は訴えました。
あの子のせいで。
あの子が全部奪うから。
あの子が私をいじめるから。
ですが、男が現れてからというものの、和解の道も考えることなく、口で言う事もせず、あとになって気でも狂ったようにまくし立てる姉は、まさしく男がかつて妹に言ったように「醜い姿」をしておりました。
そして、実は重要な力を宿していた姉は、事態を重く見た役人により投獄され、あーえっと、姉の安全のためでもありますねえ。これ。なにせ、恋人だった男とせめて一緒にしてあげようというこの国の寛大なご意思ですよ。
とにかく、再び姉と男は会うことが叶い、2人は厳重な牢獄の中で、末永く幸せに暮らしましたとさ。
一方、哀れな妹はネクロマンサーに拾われ、デュラハンとして復活し、ネクロマンサーに家事を渋々習いながらもほそぼそと、しかし、幸せな暮らしを送ったそうな。
めでたし、めでたし。
語りは、魔導死霊のシマイーナカ・ワルイでお送りしました。
おあとがよろしいようで。
本当は男が何回か脱走する予定だったのですが、テンポ悪くなるのでカット。
落語はテンポが命。落語が異世界に伝わった結果、うさん臭い語りになった裏設定があったりします。




