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第8話 スーパーエクスプレススシトレイン①

 鳥路さんが転校してきてから数日……初日からスシバトルが始まってしまいどうなることかと思っていたけど、結局その一戦以外で鳥路さんにスシバトルを挑む生徒は一人も出てこなかった。根木さんに勝った事は俺が思う以上に影響が大きいようだ。

 根木さんも約束を守って鳥路さんに実家の寿司屋の寿司を奢ったそうで、その翌日の鳥路さんは心無しか上機嫌だったように見えた。あと、根木さんは隣のクラスの子で、口調とか服装がアレなだけで授業は真面目に受けてるらしい。


 そんなわけで、鳥路さんも桶ヶ丘高校にすっかり馴染んだ…… 


「……」


 ……ということはなく、お昼休みに一人で弁当を食べ進める鳥路さんが目に映る。


 口数が少なく表情の変化も乏しいこと、並々ならぬ寿司への情熱がクラスにバレてしまったこと、放課後速攻帰ること、若干柄の悪い根木さんと仲良くなってしまったことなど、色々と良くない状況が重なってしまい、取り扱いにくい上に遠い世界の人みたいな感じで変に孤立してしまったのだ。いじめられているとかではないのは救いである。

 俺は普段男子グループに混ざって弁当を食べているので女子を誘いにくいというか、申し訳ないというか……ただ、クラスの女子達は何かと縁があってしかも隣の席にいるお前がなんとかしろよという目線を浴びせてくる、それも日に日に強くなってきている。本人は気にしてなさそうだけど、流石に何とかした方が良いと言うのは俺でもわかる。

 男子の俺で申し訳ないが、声をかけてみようか……


「鳥路さん一人? 一緒に食べない?」


 俺が声を掛ける前にクラスの女子の一人が声を掛けてしまった。不甲斐ない男子で申し訳ない。

 鳥路さんに声を掛けたのは……賀集かしゅう七津なつさん。ギャルっぽい子だけど、悪い印象はない。雑に紹介すると誰にでも優しいタイプのギャルである。

 一見鳥路さんとも仲良くできそうな賀集さんなのだが、クラスの女子達が賀集さんと鳥路さんの接近に気付いてアワアワとしている。その理由は俺も知っている。


「いいけど、えっと……賀集さん」


 鳥路さんは断らない。むしろほんのちょっとだけど嬉しそうだ。やっぱ寂しかったんだな。


「名前覚えてくれてたんだありがとぉ。あ、前の人の席借りちゃうね」

 

 机をくっ付けてお弁当を広げ始める二人。


「鳥路さんお寿司好きなんだよね、私も好きなんだぁ」


「おすすめの寿司屋は?」


 ああ! 駄目だ鳥路さん! その質問は! 多分鳥路さんの望む答えは返ってこない!


「ねこまた寿司!」


「ねこまた寿司!?」


 鳥路さんがこの学校に来てから俺の知る限り最大の声量で聞き返す。


 本格派思想っぽい鳥路さんが驚くのも無理はない。

 ……ねこまた寿司とは回転寿司の全国チェーン店のことだから。しかもファミリー層向け。


 賀集さんはねこまた寿司の愛好家として校内では結構有名なのである。


 ……休日に一人で寿司屋に行くような子が回転寿司に満足できるはずもなく、この二人の組み合わせの危険性は誰しもが危惧していた。


 寿司が好きという共通の趣味の話。しかし、その好きと言うベクトルは異なる方向を示している。のどかな昼休みの教室に戦慄が走る。

 

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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