第30話 スシバトルクラブ⑥
前回のあらすじ:
シャコをいっぱいお買い上げ。
◆◆◆
結構な量のシャコを購入しエアポンプと海水と氷で生きたまま学校まで運ぶことに。重さに苦労しながら学校まで無事シャコを運び終え、そのままシャコは家庭科室の無駄にでかい冷蔵庫に預けられた。流石にスシバトルで授業をサボることは許されないので、放課後までシャコはお預けだ。
早起きの影響で若干の眠さはあれど、なんだかんだで居眠りせずに放課後を迎えることができた。鳥路さんも賀集さんも眠そうな気配を感じさせない程にいつも通りの感じだったので、二人とも普段から早起きしているのかもなぁと思った。
とにかく、これからシャコの捌き方とどんな寿司を握るかの作戦会議だ。
◇◇◇
教室の掃除を終え家庭科室に集合すると、テーブルの上にシャコが積まれており、鳥路さんと賀集さんはエプロンを身につけ準備万端といった様子。
鳥路さん……それ、ドラゴンシリーズのエプロンだよな? 似合っていると言って良いのか分からないけど、鳥路さんなら選びかねないなという納得感はある。一方の賀集さんはギャルを感じさせないシンプルなデザイン。俺は、まぁこのままで良いや。というか料理するつもりじゃなかったし……俺が二人と合流したのとほぼ同時に司先生も家庭科室に入ってきた。
「よし、揃ってるわね。とりあえず、お湯を沸かしてる間に簡単に説明するわよ」
司先生がホワイトボードに剥き方の手順をイラスト付きで書き始めていく。英語教師なのに、こっちの方が本業に思える手際の良さ。
1.塩茹で。5分程度。茹で過ぎると身が固くなる。
2.頭を付け根から切り落とす。ハサミ推奨。
3.腹を上にして、尾をV字に切る。
4.両脇を切り落とす。
5.腹の皮を頭のあった方から剥く。
6.背の殻を尾の方から剥く。
7.Nice mantis shrimp!
シャコって英語でマンティスシュリンプって言うんだ。タメになるなぁ。テストに出ないだろうけど。
シャコをまとめて5分以上塩茹でし、実物と司先生の絵を見比べながら恐る恐るシャコを剥く俺達。結構大きいのに可食部は随分少ないんだなぁ……エビと同じようなもんか。
俺と賀集さんが二匹目を剥き始めていると、鳥路さんが急に加速しベテランシャコ剥き職人ように手早くシャコを処理していく。
「とりっじ早っ!」
「物覚え良すぎない鳥路さん!?」
何回もやってようやく身に付く自分としては羨ましい才能である。
鳥路さん、難しそうなしらすの握りも見よう見まねで再現できてたもんなぁ……
「鳥路さん、どこかで料理を教わってたりした? そもそもどこで寿司の握り方を学んだの? 北海道では普通ってわけじゃないでしょうし」
司先生は鳥路さんの手際に感心しながら、俺が聞きそびれていたことを聞いてくれた。
「動画で見て覚えました。今日もシャコの捌き方は少しだけ予習してます」
手を止めずにサラッととんでもないことを言い放った鳥路さん。
「ど、動画を見ただけで寿司が握れるもんなの!?」
俺が口にした言葉に対して司先生も賀集さんも首を横に振った。ですよね!
「とりっじはどうしてお寿司を握ろうって思ったの?」
確かに。それは気になる。賀集さんナイス。
「……美味しい寿司を食べるため」
少し動きは止めて考えた鳥路さんだったがすぐに理由を答えてくれた。らしいと言えばらしい理由だ。
「シャコの下処理はこんなところかしら。明日のスシバトルの前にも同じようにやれば大丈夫でしょ。で、鳥路さん、ツメはどうするの? 根木さんのところに借りてくるとかもありだと思うわよ」
そうだ。ツメの話が解決してなかった。穴子とかに塗られている甘辛いタレ。松風鮨の長年熟成されたツメと勝負しなければならないんだ。
「自分で作ります」
鳥路さんは即答した。真っ直ぐ俺達を見るその目に迷いは無さそうだ。
「作ると言っても穴子の骨というか穴子は買ってきてないわよ?」
買っていたら司先生の財布が爆散していただろうけど、これなら買っておけばよかったなぁ……でもどれぐらいの量の穴子が必要なんだ? 俺達は穴子の握りを作るわけじゃないし……やっぱり色々と鳥路さんが不利なのだと再認識した。松風先輩の勝ちに来ているという発言はこういうことか。
「出汁を取る材料はもうあります」
「材料ってシャコしか……あぁ、なるほど」
先生は鳥路さんの考えを理解したのか一人で納得してしまった。
「あ、そっか! だからオスのシャコも買ってきてたんだね!」
賀集さんも気付いたらしい。買ってきたのメスだけじゃなかったんだ。
察しの悪い俺を見て鳥路さんが親指で正解の方を指さしてくれた。
そこにあるのは切り取った頭や可食部が無くなったシャコの殻の山……
「え、もしかして……この剥き終わった殻で出汁を取るの!?」
三人がほぼ同時に頷いた。
ツメの出汁って穴子で取るものって言ってましたよね!?
シャコでもできるの!?
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




