第28話 スシバトルクラブ④
前回のあらすじ:
スシバトルのお題はシャコ! 勝負の日まで二日程度!
◆◆◆
松風先輩が去ってからすぐに作戦会議をすることに。まず初めに確認が必要なのは司先生が頭を抱えている理由からだ。聞いて確かめよう。
「先生、どうしてシャコだと駄目なんですか?」
「山本くん、シャコの寿司は食べたことある?」
「無いですね。賀集さんは?」
「うーん、あるにはあるけど……エビみたいなカニみたいな。ツメで食べるから甘いイメージがちょっとあるかも」
ツメ? 穴子とかに塗られてる甘いタレのことだっけ。
「ツメ!?」
鳥路さんが椅子から立ち上がる。何かに気付いたようだけど……俺にはさっぱり分からない。
「一応聞くけど……鳥路さんは寿司屋の娘さんとかでは無いのよね?」
司先生が答えに辿り着いたと思われる鳥路さんに確認する。
「違います。だから、そう、私にはツメがない……!」
俺の家庭にもツメと思われる調味料は常備していないし今回は作るしか無いのか。そうするとどうやって作るかが問題になるな。
俺が何か聞く前に司先生がホワイトボードにツメの作り方を書き始める。
「ツメは魚の煮汁に醤油、砂糖、味醂、日本酒を加えてとろみが出るまで煮詰めたもの。寿司屋だと穴子の煮汁を利用することが多いかしら、頭とか背骨とか全部使って……とにかく一から作るのにシャコ以外の食材で煮汁を作らなきゃいけないわね」
なるほど……準備に時間が掛かるのか。でもそれだけなら事前に仕込んでおけば大丈夫なのでは?
「……松風鮨のツメを相手にしなきゃいけないと言うことですか?」
賀集さんもツメの問題点に気付いたかのように司先生に質問をする。
「松風鮨は創業五十年を超える名店。ツメの作り方は秘蔵だけど、古いツメを注ぎ足して使っている年代物であることは知られているわ」
それだけ年数を重ねたツメだと素人感覚でも深みというか味わいが新しいツメとは違う感じになるのだろうなと想像できる。
「……残り数日で五十年のツメに勝てってことですか?」
「そう言う事ね」
司先生が俺の言葉を肯定する。
気付いてしまった。鳥路さんには寿司屋の後ろ盾がない。つまり古いツメがないのだ。
「もちろん注ぎ足したツメが絶対に正解とは言えないけど……松風鮨のツメはレベルが違う」
「松風鮨の穴子おいしいんだよねぇ……」
司先生と賀集さんは松風鮨の寿司を食べたことがあるのか……松風鮨はお高い寿司屋だろうし山本家にはちょっと厳しいなぁ
「お金貯めて行かなきゃ……それか貯金崩して……」
鳥路さんも食べたことない感じか。寿司屋巡りとスッシーで手持ちは少なそうだ。
「ツメは一番の問題だけど……シャコは捌いたことあるの鳥路さん?」
「ないです」
あれ? これはかなりまずいのでは?
司先生も顔を両手で覆い項垂れる。
「……私が明日教えるわ。というか鳥路さん明日市場に行くわよ」
「お金が……」
鳥路さんの財布は案の定すっかんぴんのようだ。
「とりあえずは私が出すわ。多分、後で回収できるし」
大人の力を感じる。それに司先生はスシバトルだけじゃなく寿司そのものに詳しいんだな……教師なのに。
「司先生、どうしてそんなに詳しいんですか?」
賀集さんが気になっていたことを聞いてくれた。
「……少し目指したことがあるのよ、寿司職人」
衝撃の新事実である。でも司先生が寿司に詳しいことに納得がいく。スシバトルに詳しいことについては疑問が残るけど、寿司界隈だとスシバトルの話は結構有名なのだろう。
「こうなったら寿司同好会らしく行きましょう! 明日は全員で市場に行くわよ!」
学生三人は元気の良い掛け声で先生の提案に同意の意思を示す。
……前途多難なスシバトルになりそうだけど、寿司同好会としては順調な滑り出しになりそうだ。
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




