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第25話 スシバトルクラブ①

 担任の司先生が顧問になった事で寿司同好会は無事設立。活動初日となる今日は司先生からスシバトルについて教えて貰う予定となっている……ついにスシバトルが何なのかわかる時が来たのだ。

 約束の時間になり、家庭科室に司先生が入ってくる。家庭科室はスシバトル部の活動場所だと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。逆にどこで活動しているのだろうか……


「鳥路さんはまだ来てない?」


 家庭科室にいるのは俺と賀集さん、そして司先生の三人。鳥路さんの姿はない。

 賀集さんが恐る恐る手を挙げる。


「とりっじ、スッシーの限定キーホルダー買ってくるから遅れるって……」


 自由な人だな鳥路さん……スッシーってあの寿司みたいな首長竜だよな? 限定品が出るってことはやっぱ人気あるのかアレ。


「知ってるわ。事前に連絡と相談を受けてるし、私の分も買ってきてくれるって。流石に間に合わなかったわねってだけ」


 律儀な人だった。というか司先生もスッシー好きなの?


「まぁ彼女にスシバトルの説明は不要でしょう。順応できてるみたいだし……」


 確かにそうかも知れないけど、神奈川に来てから巻き込まれてるだけなんだよな、鳥路さん。それなのにどうしてルール名すら不可解なスシバトルに対応できているんだろう……

 司先生は近くのキャスター付きのホワイトボードを引っ張りながら、俺と賀集さんが座っていたテーブルの前に立つ。


「さて、二人はスシバトルをどこまで知ってるのかしら?」


「全然知りません」

「私もー」


 むしろどうして普通にスシバトルが通じる状況なのかの方が気になる。

 司先生は少し呆れ気味にため息をついてからホワイトボードに文字を書き始める。


「……スシバトルの語源は寿司罵倒すしばとう。江戸時代末期に不味い寿司を糾弾する行いをそう呼んでいたそうよ。それが動詞になって寿司罵倒する、寿司罵倒るになったわけね」


 いきなり付いて行けない。聞いたことないぞ! そんな歴史!


「まぁ寿司罵倒という単語は徐々に廃れて歴史から消えたわけなのだけど」


「まるであったかのようにするための設定じゃないですかそれ?」


 説明の途中でツッコミを入れてしまったが司先生は真面目な表情を崩さない。冗談ではないらしい。冗談であってくれ。


「時は現代まで進んで……寿司罵倒は意外にもアメリカの博物館に保管されていた資料から再発見されたわ」


 ああ、それでサブリナさんがスシバトル経験者なんだな。そんなわけないだろ!


「寿司罵倒、スシバトウ、Sushi Battlle……スシバトル。これが今のスシバトルの原型になるわね」


「正気ですか?」


「や、山ちゃん!?」


 先生相手にぶつけてはいけないストレートなツッコミが俺から飛び出し、賀集さんに心配をかけてしまった。ごめん、理性が許さなかったんだ。


「とにかく、そこからアメリカの人達がスシバトルを拡大解釈。そして競技性と武士道と日本文化を悪魔合体させて生まれたものが山本くんが見てきたスシバトルよ」


「すみません、いつの間にか異世界転生したんですか俺」


「山ちゃん、現実を見ようよ」


「やだよこんな現実……」 


 司先生は笑いを堪えている。何わろとんねん。


「ふふ、まぁ、そりゃそういう反応になるわよね。途中からはスシバトル部が主張している捏造された歴史よ、安心して」


「捏造!? ああ、よかった! 先生が真面目な顔で話すから信じそうになりましたよ!」


 よかった! スシバトルの歴史なんてなかったんだ! 


「と、途中から?」


 賀集さんが青ざめながら先生に確認する。

 ……嘘だろ? え? 途中からってことは……え? 


「まぁスシバトルの歴史なんて話半分で覚えておけば良いわ、テストに出ないし。大事なのは今。良い加減本題に入るわね。どうしてこの神奈川でスシバトルが流行しているのか……そして桶ヶ丘高校でスシバトル部が設立され、学外でも幅を利かせているのかについて」


 そ、そっちの方が大事なのはわかりますけど! スシバトルって本当に何なの!?

 実在したの!? 寿司罵倒!?

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◇◇◇

こちらの作品はカクヨムからの転載版です。

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