第18話 フーイズスシオケマスク?①
サブリナさんとの勝負の翌日。普通の高校生活に戻れているはずなのに、スシバトル部の存在が頭の中に残り続けている。
……鳥路さんは窓の外の景色をじっと見ているが、どんな気持ちなのだろう。
鳥路さんが一般的にどれくらいの寿司職人に相当するのかわからないけど、少なくともスシバトル部の部長さんは鳥路さんよりも上だと俺は感じた。光速の握り……あれだけの技術があるのに何故スシバトルなんだ? 普通に寿司職人になれば良いのでは……? 寿司職人がスシバトラーになるのか? いや、でも鳥路さんは寿司職人ではないし……そもそもスシバトラーでもないのか。何もわからん。
「もー! 昨日二人とも黙って帰っちゃうんだもん! 探したんだからねぇ!」
ちょっと怒り気味の賀集さんが俺と鳥路さんに声を掛ける。そうだった。賀集さんは寿司部の事で職員室に行って、その間に俺達は家庭科室に……スシバトル部の存在ですっかり忘れてしまっていた。
……鳥路さんの表情からも若干申し訳なさそう気持ちが出ている。
「ご、ごめん! ちょっと昨日は色々ありすぎて……それで、寿司同好会? は作れそうなの?」
「作る事自体はOKだったんだけど……顧問がねぇ……」
寿司同好会の顧問……その前に何する活動なのかわかってないぞ俺達。
「結局、寿司同好会は何をするの?」
「美味しい寿司の探求とか、歴史とかそういうのを調べたりとか……あとはレシピの再現とかも良いんじゃない?」
意外と真面目な活動だった。賀集さんのノリと勢いかと思ったけど、結構考えられている。鳥路さんもそれを聞いてちょっと乗り気になったのか、顔と体を賀集さんの方に向ける。
……もう俺が入るのは確定している流れで話が進んでいる。断るタイミングはとっくに過ぎているし、流れに身を任せてしまおう。
「顧問の先生かぁ……鳥路さんは転校してきたばっかりで先生のこと詳しくないだろうし、俺と賀集さんで探すしかないか。賀集さんはアテとかある?」
「うーん、それがねぇ。寿司って言ったらどの先生も急に顔色変えて逃げちゃったんだよねぇ」
腕組みをして唸る賀集さん。訝しむ鳥路さん。
……スシバトル部が関係してそうな話だなこれ。少なくとも俺の入学時にはなかったはず。そもそもスシバトルの概念が露出してきたのも最近のことだろうし……何か裏がありそうだ。
「まだ声掛けてない先生は?」
「あとはねぇ」
賀集さんの視線が教室のドアの方に向く。
ドアが開かれると担任の司先生が教室に入り、それと同時にチャイムが鳴った。
「じゃ、また昼休みにね」
俺と鳥路さんが頷くと賀集さんは慌てて自席に戻っていた。
司先生か。確か部活の顧問とかは今の所やってなかったと思うけど……寿司同好会の顧問なんてやってくれるかなぁ。
それよりも教壇に立つ司先生がどこか浮かない顔をしている。
「ええーっと、お知らせというか注意というか共有というか……最近、複数の飲食店から提供物にクレームを入れる我が校の生徒がいるとの連絡が来ています。大きなトラブルに繋がるかも知れませんので遊び感覚でクレームは入れないように……って職員会議で話あったんだけど誰向け? まぁ皆さん気を付けてくださいねー」
鳥路さんのことじゃないの? ……顔背けないでよ。
ん? 待てよ? 鳥路さんが成金寿司でクレーム入れた時は私服だったよな? 制服姿でクレームを入れたことがあるなら話は別だけど……鳥路さん以外にもクレームを入れている人がいるのかも……その辺りは後で本人に確認しよう。
今は一旦スシバトルのことは忘れて学業に集中だな。
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




