第15話 アメリカンシューティングスシ③
前回のあらすじ:
鳥路さんが撃たれて、握っていた寿司が吹き飛んだ。
◆◆◆
一瞬の出来事だった。握っていた鳥路さんの手を狙ってサブリナさんが発砲。被弾した鳥路さんの手からネタとシャリが吹き飛ばされ、ギャラリーの顔面に張り付いた。
「じゅ、銃刀法違反!?」
アメリカなら大丈夫なのかもしれないがここは日本だぞ。いや、人に向けて撃つのは万国共通で駄目だろ!
「安心してくだサーイ! 非殺傷性のソルト弾デース! もちろん合法デース!」
「だからと言って人に向けて撃つのは……」
「一度始まったスシバトルは止めることはできません! それにこれはサボタージュ! 妨害はルールの範囲内! サブリナさんの行為に問題はありません!」
眼鏡の女子、本当にスシバトルに詳しいな……マジで何者なんだよ。
これがルールの範囲内なら、鳥路さんはあの銃撃を避けて寿司を握るしかない。
そして、これが根木さんの寿司がボロボロだった事の答え!
「……銃を構えていては寿司は握れない」
鳥路さんは冷静に状況を判断し、再び寿司を握り始める。
そうか! いくら何でも銃を握りながら寿司は握れない。サブリナさんが寿司を握っている間に握ってしまえば良いのだ。鳥路さんならきっとそれができる!
「ふっ、それはその通りデース!」
サブリナさんはホルスターにリボルバーをしまい、再びマグロのサクを切り始める。鳥路さんはそれを見て、瞬く間にマグロをネタサイズに切り終え、シャリを手に取り握りの体勢に入る。
「イヤッハァーッ!」
「ぐっ!?」
銃声が鳴り、再び鳥路さんの握っていた寿司が吹き飛びギャラリーにこびりつく。
は、早い! 一瞬でホルスターからリボルバーを出して鳥路さんの手を狙って撃ったというのか!?
「鳥路さん! 大丈夫!?」
「……問題ない」
非殺傷性といえど、鳥路さんの手は赤くなっている。相当痛いはずだ。
「サブリナ・フィッシャー。彼女はスシバトラーであり、早撃ち……ファストドロウのデトロイトのチャンピオンです。これぐらいの距離の狙撃なら赤子の手を捻るよりも簡単な事なのでしょう」
眼鏡の女子が解説してくれた。スシバトルなんかやってないでファストドロウとかいう競技の練習した方が良いんじゃないの?
「日本の寿司は隙だらけデース! そんなすっとろい握り方! 撃ってくださいと言っているような物デース!」
そんなことを言いながら、いそいそと寿司を握るサブリナさん。出来上がった寿司はお粗末な出来ではあるが、鳥路さんはいまだに一つも握れていない。こうやって差が生じるということか……!
こんな無茶苦茶なルール……鳥路さんが不利すぎる! 仮にあのリボルバーを鳥路さんが持っていたとしても、サブリナさんのように扱うことは難しいだろう。
つまり、始めから鳥路さんに勝ち目の無いルールだったのだ! こ、これがアメリカのスシバトルだとでも言うのか!?
「……なるほど。嵌められたってことね」
鳥路さんもルールの不平等性に気付く。
「はっ! 今更気付いたところでもう遅いデース! エリ・トリジ! ここがお前のグレイブヤードデース!」
こんなスシバトル……こんな寿司に負けてしまうのか……! 鳥路さん!
「この握り方は使いたくなかったけど……仕方ないわね。そこのゴミのような寿司よりはマシだわ」
鳥路さんはこの不利状況でも冷静に立ち振る舞い。肩を回しながら再び包丁を握る。
「そのゴミのような寿司にお前は負けるのデース!」
「……寿司が、泣いている」
「ハッハッハー! 寿司はフードでクライしまセーン! 日本人は馬鹿デース!」
サブリナさんの挑発に乗らず、目を瞑り深呼吸をする鳥路さん。
何を考えているのだろうか……
だが、鳥路さんはこんなふざけたスシバトルでも勝負を諦めていない!
サブリナさんの早撃ちへの対策はあるのか!? 鳥路さん!?
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




