第14話 アメリカンシューティングスシ②
前回のあらすじ:
鳥路さんがスシバトルで作られた無様な寿司を見てキレた。
◆◆◆
鳥路さんの一声で静まり返る家庭科室。盛り上がっていたギャラリーを一瞬で黙らせる鳥路さんの怒りは成金寿司の時の比ではない。
そんな鳥路さんを見ても取り乱さず笑顔で鳥路さんを睨む金髪碧眼の女子……一触即発の雰囲気が二人の間に流れている。
「根木さん! 何があったの!?」
膝をついて項垂れる根木さんの元に駆け寄る。一度彼女が握った寿司を見た身としては今目の前にある寿司がとても彼女が握ったものとは思えなかった。
「くそっ……お前ら、気を付けろ。あいつ、相当な場数を踏んでるスシバトラーだ」
場数を踏むほど行われているのかと驚いてしまったが、それを言うのは許されない空気。海外にもスシバトルがあるのか? いや、もしかしてスシバトルの本場は海外なのでは?
「オーウ! そんな目で見ないでくだサーイ! 私はスシバトルのルールに則って勝利していマース! 文句を言われる筋合いはありまセーン!」
「こんなレベルの低い寿司で喜べるとは……あなたの地元のスシバトルは随分レベルが低いのね」
鳥路さんは金髪の子に敵意を剥き出しだ。鳥路さんの気持ちはわからなくもない。
「私がミシガン最強のスシバトラー、サブリナ・フィッシャーと知っての発言デスか?」
ごめん、知らない。
「知らないわ」
鳥路さんも当然知らない。その反応で騒めくギャラリー。有名人なのは本当らしい。
「はっ! ならば私の名前を敗北と共に焼き付けてあげましょう! スシバトルで勝負よ! エリ・トリジ!」
鳥路さんはここに来てまだ一度も名乗っていない。それなのにサブリナさんが鳥路さんのフルネームを知っていると言うことは……鳥路さん、どんだけ神奈川の寿司屋で暴れてたんだ?
「……寿司は争いの道具じゃない。でも、あなたを黙らせるのならば……握るわ!」
ちらっと根木さんの方を見る鳥路さん。多少は敵討の気持ちもあるのかもしれないが、ヘタクソな寿司を握ってでかい顔をする奴を許せないという気持ちの方が大きそうだ。
「す、スシバトルだ!」
「まさかのサブリナさん二連戦だ!」
「これは凄いことになるぞ!」
当たり前のように盛り上がるギャラリー。なんか人数も増えてきているような気もする。
「ルールはサボタージュクイックショットで良いですネ!?」
「……」
無言でサブリナさんを睨む鳥路さん。俺にはサボタージュクイックショットがどういうルールなのかさっぱりわからないが、鳥路さんはわかっているのだろう。
「……どういうルール?」
わかってなかった。良かった。鳥路さんはどちらかというとこっち側だ。
「妨害ありの早握り勝負デース! 制限時間10分の中でより多くの寿司を握ったモノが勝者デース! 今回はマグロとシャリは共通の品質のものを使いマース! 妨害ありはそのままの意味ですネ! バット! 完成した寿司を破壊することはルールで反則なので注意してくだサーイ! OK!?」
「……OK!」
わかったようなわからないような……そもそも寿司を握るのに妨害とかどうやるんだ? とにかく、早握り勝負ってことでいいのかな。
……これはどう見ても鳥路さん有利だろう。10分もあれば五個以上は握れるんじゃないか鳥路さん。鳥路さんは握りの所作も綺麗だったし何より早かったはずだ。しかも、握られた寿司の形も美しい。
寿司げたに置かれたサブリナさんの寿司は三個、しかも形が汚い。なのに、何であんなに自信満々な表情なんだ? それに、根木さんのボロボロの寿司……油断しないほうが良いのかもしれない。
「それでは、サボタージュクイックショットでのスシバトル……始め!」
前回のスシバトルで解説してくれた眼鏡の女子が開始の合図をする。何者なんだあの子……
「……遅い」
鳥路さんはこの短時間でマグロをネタのサイズに切り終え、シャリを手に取って握りの体勢になっていた。これまでも早かったのに、まだ早くできたのか!
サブリナさんはまだサクを切り始めたばかり! 遅い! これは鳥路さんの勝ちだろ!
「イヤッハァーッ!」
突然、サブリナさんが叫び、それとほぼ同時に家庭科室に破裂音が鳴り響く。
「ぐうっ!?」
鳥路さんの手からネタとシャリが吹き飛び、ギャラリーの顔面に張り付く。
な、何が起きたんだ!?
鳥路さんは右手を押さえながらサブリナさんの手元を睨む。
サブリナさんの右手に握られていたものは包丁ではない。
……拳銃、リボルバーだ。
「と、鳥路でもダメか! あいつの早撃ちは避けれねぇ!」
根木さんが悔しそうに右手で床を殴る。
ぼ、妨害ありって、そういう事なの!?
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こちらの作品はカクヨムからの転載版です。




